なぜ芸能人の政治発言は批判される?『バリバラ』三拍子の風刺漫才から考える、3つの成功例

2020.5.7
なぜ芸能人の政治発言は批判される?『バリバラ』三拍子の風刺漫才から考える、3つの成功例

文=森 ユースケ 編集=田島太陽


Eテレで放送された『バリバラ桜を見る会 ~バリアフリーと多様性の宴(うたげ)~』。公共放送たるNHKが、安倍総理や麻生大臣を揶揄する番組を制作するのはいかがなものかとして、一部のネットユーザーにより炎上騒ぎとなった。

しかし同番組で披露されたお笑い芸人・三拍子の漫才は、「笑える」のはもちろんのこと、風刺としても楽しめる漫才となっていた。

「タレントやミュージシャンが政治を語ることが忌み嫌われる」文化がある日本で、お笑い芸人が自身の政治的スタンスを表明するには、それを「笑い」として表現するには、どんな方法があるのだろうか?


『笑点』すら炎上する時代

政治について話すことがタブー視される昨今の日本ですけども――とは、くりぃむしちゅー上田晋也が、自身の番組(『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)2019年6月8日放送)で語った言葉だ。

日本では、タレントが“政治的発言”をすると、大きな批判を浴びることが多い。

2017年に『THE MANZAI』(フジテレビ)でウーマンラッシュアワーが原発をネタにした漫才を披露するとSNSでは賛否両論が巻き起こり、2018年にモデルのローラがインスタグラムで沖縄の米軍基地移設計画への反対署名に言及した際には大きな批判を受け、投稿はのちに削除された。

個人の意見を述べただけでも、曲解され、批判を浴びる。それどころか、いわばパフォーマンスにおける社会性が批判されたことも。

『笑点』(日本テレビ)の2018年5月27日放送回では、「うるさくて耳を塞いでいる人が言ったひとこと」という大喜利での以下のやりとりが、政権を揶揄しているとしてネット上で批判が相次いだのだ。

口火を切ったのは、三遊亭円楽だった。声色を安倍首相に似せながらこのように答えた。
「安倍晋三です」
「どうしたの?」
「トランプ氏から国民の声は聞かなくていいと言われました」
 続いて、手を上げたのは林家たい平。彼もまたモノマネを交えながら回答した。
「麻生太郎です」
「どうしたの?」
「やかましいぃ〜」
 政権批判ネタ三部作のトリを飾ったのは林家木久扇。彼はこのように答えた。
「うるせーなー」
「どうしたの?」
「沖縄から米軍基地がなくなるのはいつなんだろうねぇ」

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同例の炎上はアメリカでは「まずない」

なぜ、芸能人の政治的発言は批判されてしまうのか。2019年『上田晋也のサタデージャーナル』にて、これらの事例を踏まえた「芸能人の”政治的発言”はタブー?」という回が放送された。TBSが運営するnoteに書き起こしが掲載されている。

政治的発言をめぐる炎上騒動から見える日本の問題点とは? (上田晋也のサタデージャーナル 2019年6月8日放送)

芸能人の”政治的発言”はタブー?(上田晋也のサタデージャーナルより)|ニュースが少しスキになるノート from TBS|note
TBS公式noteより

ハーバード大学卒で政治社会に造詣が深い、パックンマックンのパトリック・ハーランが「アメリカでは俳優が政治的発言をして炎上することはあるか?」という質問に、こう答えている。

まずないですよ、基本。例えば、左にはマッド・デイモン、アンジェリーナ・ジョリー。右にはシルベスター・スタローンとか、シュワルツェネッガーとか。(中略)両方、十分仕事できてるんですよ。潤ってはいる。言ってることを、反対されることを、お互いにひるまないで言い合って、議論はできる。

同上ページより

そのほかにも、政治的発言を控えていた歌手のテイラー・スウィフトが、2018年に投票を呼びかけ、選挙登録が急増したことなどに触れ、その行為で逆に仕事が増えたと解説。

劇作家の鴻上尚史は、政治について語ること自体が問題なのではなく、現政権を批判する行為が炎上しており、「政治的発言」という言葉に別の意味が付加されていることを指摘。

要は首相と一緒に飯食ってるのは誰も炎上してないわけですよ。(中略)政治的発言がまずいんじゃなくて、政権に対する批判に対して、すごく炎上するようになってるのは、すっごくヤバイと思いますね。

同上ページより

この理由について、ハーランは「SNSの普及によって、可視化されやすくなったこと」「普段から議論をしない民族性で、反対意見を言われることに慣れてないためびっくりしてしまう」などの見解を示しているが、さらに下記の2点も挙げられるだろう。

ひとつは、テレビをはじめとしたマスコミは、広告費によって製作が担保されているため、批判を受ける言動を好まないこと。

そして、もうひとつは、“中立”という概念への盲目的な信仰だ。


「政権擁護or批判」に回収されない議論も

日本では、「偏っている」という言葉が、批判の文脈で使われることが非常に多い。しかし、本来の意味で使うのなら、すべての人間は当然のことながら「偏っている」。人の数だけ意見がある。

ところが、報道の中心である新聞をはじめマスメディアでは、媒体としての主張があるにもかかわらず、アリバイ作りのように逆の意見も少しだけ載せて、両論併記した中立な意見ですよ、という体裁を取りがちなように思える。

わかりやすいと人気な池上彰の解説も中立を装った主張であることが多く、こうした「政治的中立」という架空の概念に毒された人々が、自分と反対の意見を持つ人々に対して「偏っている」という攻撃をしているに過ぎない、という見方もあるだろう。

同番組では、メディアを含む社会運動の研究をする立命館大学准教授の富永京子が、二項対立に飲み込まれない主張の方法を紹介。『サンデージャポン』(TBS)で爆笑問題の太田光がローラに対して、「ファッション業界に身を置くモデルとして、革製品は使わないといった素材に関する話など、自身に関する文脈で政治性を表すのは自然だ」と語ったことを紹介。「政権擁護/政権批判のどちらにつくか」という対立に回収されない議論の重要性を説いた。

世界を見渡せば、コメディや音楽、芝居などは、カウンターカルチャーとして力をつけてきたという歴史を持つ。日本のような環境下で、カルチャーと政治的な振る舞いを結びつけるにはどんな方法があるだろうか。活躍するお笑い芸人による、3つの手法を紹介する。

ウーマン村本、オリラジ中田……タレントが政治を語る3つの例

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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

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