なぜ芸能人の政治発言は批判される?『バリバラ』三拍子の風刺漫才から考える、3つの成功例

2020.5.7

都合よく「書き換えられる」が意味すること

この番組は、首相が中止した「桜を見る会」を、『バリバラ』が勝手に開催しよう、というパロディ企画。反社会的勢力が首相から招待されていたとの疑いがある参加者名簿をシュレッダーにかけたり、安倍晋三や麻生太郎のものまねが披露されるなど、随所に風刺が盛り込まれた内容だ。

三拍子のネタは、早押しクイズで回答者の言ったとおりに問題が捻じ曲げられ、「すり寄って」きてしまう、というもの。どんな内容だったのか、ネタを振り返ってみよう。

高倉が「今からクイズを出そうと思います。優勝した方には、今日の三拍子のギャラを差し上げます」とボケて、久保が「困るよ!」とツッコむと、「大丈夫、絶対にお前に正解させるから」と、システムの説明をしつつ、漫才がスタートする。

高倉:問題。今年1月……。
久保:(ボタンを押す音)ピンポン!「桜」。
高倉:正解。在日コリアンに対するヘイトに抗議の声を上げた俳優といえば水原希子さんですが、水原希子さんが出演した大河ドラマのタイトルといえば、やえの…なに? 「桜」、正解!
久保:強引だな! そうかもしれないけど、俺が出した答えに、問題がすり寄ってくるパターンじゃん。

漫才のシステムが見る側に伝わったあとは、無理やり寄せる答えのズラし方をさらに変えていく。

高倉:問題。去年、日本中を熱狂……。
久保:ピンポン!「犬」。
高倉:正解。去年、日本中を熱狂させたラグビーワールドカップの日本代表チームは、今の日本社会の多様性を象徴していると言われますが、チームのスローガンといえば、なにチーム? 「犬」。正解!
久保:ONE TEAM(ワンチーム)ね! 鳴き声じゃないんだよ! まあ確かに、いろんな国の人が集まって代表としてやったわけだからね。

高倉:問題。去年の参議院選で…
久保:ピンポン!「パンケーキ」。
高倉:正解。去年の参議院選で、舩後靖彦さん、木村英子さんと重度の障害のある方が当選しましたが、「参議院」、5文字変えるとなに? 「パンケーキ」、正解!
久保:全文字変えちゃってるよ! 「参議院」の跡形もねーんだよ、これは。

「全文字変えちゃってる」「元の言葉の跡形もない」。このツッコミは、さまざまな事象が隠蔽され、公文書が書き換えられ、その結果自殺者が出てもしらんぷり……といった現状を踏まえると、実に痛快な風刺になっていると感じられないだろうか。

“おもしろい漫才”として時事ネタを楽しませる

『バリバラ』
『バリバラ』公式サイトより

『THE MANZAI』決勝に出るほどのクオリティを誇る三拍子の漫才と、秀逸な社会性が両立され、風刺コメディの文脈において極めてレベルの高い漫才となった。ネットではこの番組に批判が殺到しているなか、三拍子の漫才に対する批判はなく「おもしろかった」などの素朴な感想が散見される。ただ“おもしろい漫才”を楽しんだ人たちに対して、社会性を意識させる機会となったのだ。

対象的にSNSで大きな批判を浴びたのは、風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」元メンバーの松崎菊也と石倉チョッキが披露した安倍晋三と麻生太郎のものまね(一応、あくまで「バリバラ国」の「滑稽中継」という設定ではあるが)だった。

コントでありながら、対象者を批判する姿勢が全面に出過ぎたことが一因かもしれない。もちろん、それだけで批判が殺到するのは、民主主義社会として未成熟であると言わざるを得ないが。

では、センシティブな話題はどのように扱うべきなのか。その答えのひとつが4月30日に放送された『~第二部』での三拍子の漫才だった。

「募ったけど募集はしていない」漫才と『生活笑百科』からのヒント


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