なぜ芸能人の政治発言は批判される?『バリバラ』三拍子の風刺漫才から考える、3つの成功例

2020.5.7

(1)ライブで自由に語るウーマン村本

まず考えられるのは、ライブシーンだ。テレビはCMなどによる広告収入で成り立っているが、ライブはお金を払ってでも観たい客がいればそれだけで成立する。そんな戦い方をしているひとりが、アメリカでスタンダップ・コメディの武者修行をするほか、全国を行脚し、年間200回の独演会をこなしているウーマンラッシュアワーの村本大輔だ。

2019年11月26日に渋谷区のカフェバーで開催された『ウーマンラッシュアワー村本の独演会〜内側から怒りを吐き出すが如く美しく〜』では、約40人の観客に向かって約1時間半、文字どおりノンストップで話しつづけた。『THE MANZAI 2013』で優勝し、島田紳助から激賞されたことをきっかけに一時期はテレビに出ずっぱりだった過去を考えると、ライブにばかり出演するのは“都落ち”というイメージもあるだろう。しかし、声を枯らしながら生き生きとしゃべる様子は、むしろテレビでの活動が窮屈だったのでは、と感じさせるほどだった。

村本は現在、Zoomで少人数限定の独演会を行なっており、多くの公演が完売している

自身が所属する吉本興業の闇営業や、南青山に建設予定の児童相談所が近隣住民から反対された出来事、桜を見る会の名簿問題……。さまざまな社会風刺を入れ込んだネタを披露したのち、ライブの終了予定時刻を過ぎたあとも、数日後に収録が予定されていた『THE MANZAI 2019』の漫才を“ひとり”で披露するというファンサービスを見せた。「うちの漫才はひとりでできてしまうんです」と笑いを取りつつ、「でも、相方にはいてもらわないと困るんです」と本音をのぞかせ、ネタというものの繊細さを感じられたのが印象的だった。

(2)YouTubeを開設したオリラジ中田

次に考えられる戦い方は、インターネットを活用したパフォーマンス。ラジオで事務所の先輩・松本人志に言及して騒動になるなど、何かと発言が注目を集めていたオリエンタルラジオの中田敦彦は、「教育系YouTuber」として活動をしている。

一部内容に誤りがあり、「教育」と冠するのは間違っているとも指摘されたが、「創価学会」「リクルート事件」「自民党の派閥争い」など、政治や社会、歴史について語り、興味を持たない人にまで聞かせてしまうパフォーマンスは、れっきとした社会性を帯びたコメディの系譜として語っても問題ないだろう。

(だからこそ、一部誤りがあるのは非常にもったいない。Netflixの『ハサン・ミンハジ:愛国者として物申す』のように、資料に引用元を注記するだけで、クオリティと社会的意義がぐっと上がるはずだ)

(3)地上波でステルス的風刺漫才を見せた三拍子

最後に挙げるのは、従来の主戦場であったマスコミで、いわばステルス的に社会性を帯びさせる方法だ。

まさにその好例と言えるのが、4月23日にEテレで放送された『バリバラ桜を見る会 ~バリアフリーと多様性の宴(うたげ)~第一部』で披露された、三拍子の「早押しクイズ」漫才だった。

2014年の『THE MANZAI』決勝でも披露された、いわばコンビの鉄板ネタのひとつ。ボケの高倉陵がクイズを出題し、久保孝真が問題の途中でおよそ見当外れに感じる答えを出すものの、高倉が問題を捻じ曲げて無理やり正解にさせてしまう、というシステムのネタである。

『バリバラ』ではこのシステムをベースに、政治ネタを盛り込んだ内容で披露された

そんな、いわゆる“おもしろい漫才”が、この番組で披露されることによって、まったく別の意味が付与されたのだった。それは、首相が指示したことを正当化するために、法律すらも歪められ、公文書も偽造されてしまう、現政権への風刺だ。

三拍子の「都合よく書き換えられる」漫才を振り返る


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