WONK長塚健斗×バーテンダー山川俊太が語る、飲食と音楽を介したクロスカルチャーの可能性

2020.1.29

文=渡辺裕也 撮影=高橋マナミ


「食事は毎日とるのに、料理に興味がない人が多すぎる」
そう話すのはWONKのボーカリスト、長塚健斗。彼は料理人としての顔も持ち、飲食と音楽どちらの魅力も伝えるべく活動をしている。
そんな長塚と「食」について語るのは、西麻布で会員制バー「Cocktailante OBORO」を営むバーテンダー・山川俊太。食と音楽に共通することと、これからのクリエイションとカルチャーの可能性について語った。

※本記事は、2019年8月23日に発売された『クイック・ジャパン』vol.145掲載の記事を転載したものです。

アプローチは違えど、見ている方向は同じかもしれない

WONKのボーカリストを担う傍ら、料理人としての顔をもち、「食」にまつわるイベントのプロデュースなども手がけている長塚健斗。そんな彼が同年代のクリエイターとしていまもっとも刺激を受けているのが、西麻布で会員制バー「Cocktailante OBORO」を営むバーテンダー・山川俊太。昨年は日本代表としてカクテル・コンペティションの世界大会にも出場している彼と長塚が、飲食と音楽を介したクロスカルチャーの可能性について語り合った。

――カウンター業務の魅力と厳しさをよく知る長塚さんに、山川さんのお仕事はどう映っているのでしょう。

長塚健斗(以下、長塚) すばらしいのひと言ですね。こんなにお酒に対して前向きに実験を重ねているバーテンダーはほかにいないと思う。なにより玄人にも素人にもしっかり響くんですよ。曲作りでいうならば音作りは玄人も認める次元にあるけどメロディはしっかりキャッチーでわかりやすいっていうようなバランス感覚に近いのかもしれない。

山川俊太(以下、山川) たしかに僕がやってることは音作りと似てるのかもしれない。僕は料理とお酒以外から影響を受けることが多いんです。それこそ音楽やアートに触れたときの、心が動く感じをいつも表現してるので。

─―長塚さんは料理を提供するとき、どんなことを意識されてますか?

長塚 時代性かな。スタイルとしてのそれもありますが、そのときに取り組むべきことをアイディアに取り入れるようにはしてます。たとえるなら地産地消、フードロスなどを意識してもらえるようなイベントを作ったり。

山川 僕の店に来てくれる人たちは健斗くんみたいな人が多いんですよ。つまり、自分の個性をビジネスに変えて表現している人たち。彼らにはなにか伝えたいことがあって、それを自分の分野でいいものとしてしっかり表現したいと考えてる。そのアプローチが違うだけで、見てる方向は同じというか。

素直に生きたものが勝つ時代へ

─―山川さんの目指す、いいものとは?

山川 美味しいものを飲んだときやいい音楽を聴いたときって、時間が止まったような感じになるじゃないですか。あの瞬間を作ることですね。これはどんなクリエイターにも言えることなんじゃないかな。やっぱり自己満足ではなく、誰かになにかを伝えたいという思いがそこにないとね。

長塚 日本の飲食従事者の人口が減ってるという話があるじゃないですか。それ、どうにかならないかなと思ってるんです。もっと若者に刺さるような施策をやっていくべきだなって。僕としては、というかEPISTROPHとしても料理に目が向かない人たちを音楽側から引き入れたり、そういう領域横断的なコラボを組んでいきたくて。最近有名店のシェフたちもそれに近い動きをしてますよね。

山川 僕も同じことを考えてました。いろんなクリエイターを集めてカルチャーをミックスさせたいなと。これからの時代はそういう動きがトレンドになってくるよね。

長塚 これからはもっと個人にフォーカスされてる時代になってくるし、素直に生きたもの勝ちだと思う。だからこそ、クロスカルチャーできる料理人がもっと生まれてほしいんですよね。

山川 まずは家庭科の授業を強化したらいいんじゃないかな(笑)。それもいわゆる家庭科っぽい授業じゃなくて、一人暮らしできっちり自炊できるような教育をしたら、健斗くんが考えてるような世界はきっと実現すると思う。

長塚 どこから本当の消費期限か匂いで判断できるくらいまでの教育ってことですね(笑)。まぁとにかく日本ってなによりも食がすばらしい国なのに、料理に興味がない人が多すぎるんですよね。毎日必ず食事はするのに。 もっと料理を通して自由な表現をしている若者がいてもいいなぁとは思います。料理人にかっこいい人、ホント多いんですよ。

─―もっと若者が憧れていい仕事だと。

長塚 まさに。380円の牛丼を食べて「うまっ!」と思ったり、月々980円で自由に音楽が聴けたり、こんなに安い値段で人の心を動かせるものってなかなかないんですよね。その飲食と音楽の両方に足を突っ込んでいられることが僕は幸せだし、僕みたいな立場の人間だからこそ伝えられる両方の世界の魅力をいろんな人に伝えていきたいなと思ってます。


長塚健斗(ながつか・けんと)
WONKのボーカル担当。料理人としてのキャリアも長く、フレンチビストロの料理長を務めたことも。インタビュー中も、音楽か料理のどちらかを専業にする意識はまったくなかったと語っていた。

山川俊太(やまかわ・しゅんた)
バーテンダー。20歳で日本バーテンダー協会所属のバーに入り、「2018 JAPAN OLMECA ALTOS cocktail competition」優勝など多数のカクテルコンテストに入賞。現在は西麻布「Cocktailante OBORO」にてオーナーバーテンダーを務める。


この記事が掲載されているカテゴリ

この記事の画像(全1枚)


渡辺裕也

ARTICLE LIST

渡辺裕也さんの関連記事一覧

渡辺裕也さんの
新着・人気記事をお知らせします。