「降りたら人生が終わる!」と叫ぶ痴漢加害者。では、被害者は?(僕のマリ)
「降りたら人生が終わる! 降りたら人生が終わる!」
絶叫する男性が、電車から引きずり下ろされる動画を観た。この男性は2021年4月に痴漢の容疑で、数人がかりでホームに運び出されていた。必死な形相を浮かべ、大きな声で同じ言葉を繰り返す男性に、周囲の乗客は何事かと釘づけになっている。
事の顛末を知ってか、彼が運び出された瞬間には「死ね!」と叫ぶ乗客もいた。ネット上ではさまざまな推測がなされていたが、男性の必死さから「ウケる」「痴漢くらいで人生終わらない」という笑いに転じたコメントも目立った。
当たり前だが笑い事ではない。動画の男性は冤罪かもしれないが、「痴漢」という犯罪が絶えない現状について想いを馳せてしまった。
痴漢の被害者が“我慢”しなければならない現状
私は「痴漢体質」なのかと思うくらい、子供のころから痴漢に遭ってきた。
初めて痴漢に遭ったのは小学6年生のときで、夕方ピアノのレッスンから帰っている途中にうしろから走ってきた男に尻を触られた。ほんの一瞬のことだった。一瞬過ぎて、自分でも何が起こっているのかわからないほどだった。
しかし、振り返るとニヤニヤ笑っている男がいる。その瞬間、私は怒りで男の下っ腹を殴った。右手に確かな手応えを感じたのも束の間、男は走って逃げ出した。
私も「待て!」と叫びながら走り、500メートルくらいは追いかけた。若い男だったので逃げ切ってしまい、私はそのまま通っていた小学校の職員室に飛び込んで被害を報告した。周囲が腫れ物に触るような対応だったことをよく覚えている。
年配の女性教諭に「危ないから反撃なんてしちゃ駄目よ」と諭されたとき、悔しくて初めて泣きそうになった。
中学、高校、大学と、電車に乗れば痴漢や盗撮に遭い、道を歩けば不審者から声をかけられる日々。バス停で知らないおじさんに太ももを触られたこともあった。
反撃したこともあるし、ただ黙り込んでやり過ごしたことも多かった。きっと黙り込んで過ごす人のほうが多いだろう。終電で痴漢に遭ったときは、早く帰りたい一心で声を上げなかった。私はそのことをたまに思い出しては憂鬱になる。
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