年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、22歳・タレントの奥森皐月。今回は、6月8日・15日に放送された新番組『※女性は見ないでください』に抱いた違和感を綴る。
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新バラエティ番組『※女性は見ないでください』の謎予告
6月8日・15日の2週にわたってテレビ東京で放送された、バラエティ番組『※女性は見ないでください』が話題になっている。
放送前からそのインパクトの強い番組タイトルが一部で注目を集めていたが、内容は一切明かされず、謎に包まれていた。
番組公式サイトも、出演者の欄に霜降り明星せいやさんの名前がある以外には何も説明がなく、その情報量の少なさがかえって番組への期待値を高めていたように思う。
テレビ東京といえば、近年モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)番組を数多く制作している放送局だ。
『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』『このテープもってないですか?』『TXQ FICTION』シリーズなど、新作が放送されるたびにSNSは盛り上がっている。派生したイベントも軒並み大盛況だ。
モキュメンタリーは、令和のホラーブームと考察文化にぴったりハマるコンテンツで、流行っているのも頷ける。
放送の4日前には、この番組を「謎番組」として取り扱ったXのポストに対し、テレビ東京公式アカウントが「回答は控えさせていただきます」とだけ引用リポストしていた。
ここまで内容を明かさないとなると、何か仕掛けがあるのではないかと勘繰ってしまう。現に私自身もまた新たなモキュメンタリー作品が始まるのかと思い込んでいた。
信頼と実績のテレ東、そして霜降り明星せいやさんという人選が、やけに「それっぽい」と思えたのだ。放送前のSNSの動きからも変な期待を寄せてしまった。
不満を言って終わり? 男性3人の“発言のライン引き”の難しさ
しかし、いざ8日放送の#1を観ると、それまでの予想は見当違いであったことがわかった。
霜降り明星のせいやさん、ニューヨークの嶋佐和也さん、見取り図の盛山晋太郎さんの3人と、20代のタレント・インフルエンサーの女性3人が合コン形式で雑談をするという内容。
ただし、男性側のテーブルにだけボタンが設置されており、これを押すと男性側と女性側の席の間に壁が降りてくるという仕組みがある。
雑談中に女性の発言で気になることがあるとボタンを押し、男性だけの空間で思いの丈をしゃべるという形式の番組だった。
『笑神様は突然に…』や『相席食堂』のような、VTRを観ながら止めるスタイルを、リアルタイムでやっているようなイメージといえばわかりやすいだろうか。再開するときはまたボタンを押して、気になったらまた止めて、を繰り返していく。
声に出せない本音を吐き出すという面では『有吉クイズ』の「メモドライブ」の企画と近いようにも思えるが、あれはたったひとりで「メモ」というかたちでぼやくのが醍醐味なので、この番組とは異なる。
「メモドライブ」はそれぞれの性格が見えてくるのでとてもおもしろい。個人的には、今放送されているバラエティの中で最も好きな企画だ。
さて、この『※女性は見ないでください』だが、「女性が男性にダメ出しをする番組が増えているので、反旗を翻す」「男性のデトックストークバラエティ」というのがコンセプトのようだ。
確かに女性向けバラエティは近年かなり増えていて、TVerのランキングでも上位に食い込んでいる。そこに対抗する番組というのはおもしろいコンセプトだと思うが、発言のライン引きは相当難しいと思う。
#1の内容でいえば「若い女性が自分を“おばさん”と言う自虐への返しが難しい」「女性はそれほど仲よくなくても“友達”と言う」などの内容はあるあるとしておもしろい話題だったと思う。
このような内容をもっと深掘りして、「どうリアクションすれば正解か?」「どこからが“友達”か?」などの議論が始まればおもしろそうなのだが、番組としてはあくまでも「飲み会中にそれを中断して不満を言う」という形式なので、不満を言うところで終わってしまう。
トークのおもしろい芸人さんが集まっているからこそ、この3人の会話の盛り上がりをもっと見たかったと思ってしまった。
「“言いすぎ”っていうボケ」は、お笑いを知らない人には理解できない
また、この放送回の「女性はマンガを読めない」「男のほうが賢い」などの発言が切り抜かれて、SNS上では炎上していた。
その週の『霜降り明星のオールナイトニッポン』にて、せいやさんは「完全に“言いすぎ”っていうボケ」「番組観たら、ただのお笑いというか、ふざけてるだけだとわかる」と話していた。
この発言を正面から捉えると、芸人さんたちはこの番組のフォーマットに乗っかって「お笑い」をしていたわけだ。
しかしながら、SNSやネット記事では発言のみが切り取られてしまうため、案の定炎上は避けられなかった。
また、せいやさんは「番組を観れば“お笑い”だとわかる」と発言していたが、私はこれには賛成できないと感じた。
お笑いというのは、お笑いを知らないと理解できないものだと常々感じている。たとえば、ブサイクを売りにしている芸人さんがいたとして、その人がまわりからブサイクいじりをされまくっている様子を、まったくお笑いに触れていない人が見たら「ひどい」と思うだろう。
ツッコミだって、お笑いが好きな人から見たら爽快だけれど、お笑いになじみがない人からしたら「失礼だ」と捉えられかねない行動だと思う。
お笑いをやっている人はお笑いのことを理解しすぎているからこそ、お笑いを知らない人がどれだけ「わからない」かがわからない傾向にある。“言いすぎ”というボケも、お笑いを知らない人からすると過激な発言でしかない。
だからこそ、これに関しては編集の段階でカットするべきだったのではないかと感じてしまった。
しかし、その一方で、この炎上でTVerの再生数が回ったり、番組ハッシュタグでのポストが増えたのだとすると、この炎上は番組にとって必要不可欠だったのかもしれない。なんだか、胸が痛い。
2週観て感じた「声の大きさ」の重要性
#1の発言があまりにも大胆だったことから、SNS上では再び「モキュメンタリー説」が浮上した。1週目で散々な発言をしたところからしっぺ返しを食らうのではないか、女性側にも仕掛けがあるのではないか、など考察する視聴者もいたようだ。
ただ、個人的には、番組の最後にコウメ太夫さんが出てくるという変な演出が「完全に深夜のバラエティだ」と感じたので、このときにはモキュメンタリーをあきらめていた。
視聴者の注目度も上がってどうなることかと#2を観たところ、メンバーが若干変わって、#1よりも炎上しそうな要素が若干減った、ほぼ同じ内容だった。
#2には、女性陣になぜか3時のヒロインのゆめっちさんがいたのだが、特にそれが何かに影響するなどはなかった。
また、男性陣はせいやさんと嶋佐さんに、ぱーてぃーちゃんのすがちゃん最高No.1さんと、OWVの本田康祐さんが加わった。
このコンセプトの番組にボーイズグループ所属の方が出演する勇気。しかも、きちんと芸人さんと肩を並べてトークしていて驚いた。そして、かなりあけすけに話していて、大丈夫なのだろうかと勝手に心配になってしまった。
#2で話されていた「女性」は、いわゆる「港区女子」みたいな人を指している話が多かったと思う。だからこそ、炎上は#1よりは避けられそうだと感じた。
2週通して観て感じたのは、せいやさんの表現力の豊かさゆえに「ガチ感」が出てしまっているのではないかということだ。
キレている表情や、強い口調などは、せいやさんのことをあまり見たことのない人からしたら、「本当にそういう人」に見えてしまうような気がした。
それを思うと、テレビ朝日で放送されている『見取り図じゃん』内の企画「大きい声では言えないけど、小さい声なら言える会」は画期的だ。
大きい声だと炎上してしまうレベルのことを、みんなでフォローしながらこそこそ言っているからこそ、炎上せずに済んでいるように思う。小さい声で笑ったり焦っている姿は、おもしろい。おもしろさが勝っている。
まさか、ふたつの番組から「声の大きさ」の重要性に気づくとは思いもしなかった。
ふたつの違和感「テロップの文字化け」「放送日の注意書き」
結局、『※女性は見ないでください』はモキュメンタリーではなかったが、ふたつ違和感が残っている箇所がある。
それは、番組中にテロップが文字化けするシーンと「※この番組は2026年6月8日(15日)に放送されたものです」という表示がどちらも2週ともあったこと。
モキュメンタリーの匂わせとして1週目にあるのはわかるのだが、2週目もあったのが不可解だ。文字化けのシーンは演出として片づけられても、注意書きに関してはよくわからない。
出演者に不祥事があったり、収録時と放送時で情報が変わっていたりすると出るテロップだが、この番組に関しては特にそのような点はなさそうだ。
U-NEXTでの配信も同じテロップが出ており、ますます謎が深まった。第3回への伏線と予想できなくもないが、今のところ手がかりはない。
「過激にしないと観てもらえない」悲しい現実
『※女性は見ないでください』というタイトルは、注目を集めるにはかなりいいタイトルだったのではないだろうか。昨今ドラマのタイトルがどんどん過激になっており、バラエティにもその波がついにやってきたかと感じた。
同時に「過激にしていかないと観てもらえない時代が来ている」という現実にも直面する。バラエティやお笑いの番組が減るのは悲しいが、「炎上スレスレ」みたいなコンセプトの番組が増えるのも、それはそれで悲しい。
配信やサブスクなど、それぞれの特性に合った番組ができるのはいいことだ。だからこそテレビで観るお笑いは、もう少し気兼ねなく笑えるものだといいと思ってしまう。
ゆるい深夜バラエティを観る夢は、もう叶わないだろうか。





