『THE SECOND 2026』勝敗の決め手は“持久力”? 優勝・トットが見せた「地肩の強さ」

文=奥森皐月 編集=高橋千里


年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、22歳・タレントの奥森皐月。今回は、5月16日(土)に決勝戦が放送された『THE SECOND 2026』を振り返る。

4年連続グランプリファイナル出場の金属バットは“優勝”に匹敵する

5月16日(土)にフジテレビ系にて『アサヒ ゴールド presents THE SECOND~漫才トーナメント〜2026』が放送された。

結成16年以上の芸人さんにスポットライトを当てたこの大会は、今年で4回目の開催。回を重ねるごとに大会のカラーが確立されて、よりおもしろくなっているように感じる。今回も非常に見応えのある戦いが繰り広げられた。

今大会のファイナリストは、金属バット、ヤング、タモンズ、黒帯、シャンプーハット、リニア、ザ・パンチ、トットの8組。

昨年に引き続きファイナリストになったのは、4年連続でグランプリファイナルに進出している金属バットのみ。タモンズとザ・パンチは2年ぶり2回目で、それ以外のメンバーが初のグランプリファイナル進出だった。

大会がまだ4度しか開催されていないことも理由にあるとは思うが、『THE SECOND』は毎年ファイナリストの顔ぶれが大きく変わるのがおもしろい。

「常連組」のような概念はないが、唯一金属バットだけが初回から“レギュラー”のごとく毎回グランプリファイナルに出演している。この戦歴は優勝に匹敵するレベル、もしくはそれ以上にすごいことだと感じる。

毎年予選には、名だたるベテランの芸人さんや師匠クラスの漫才師が出場している。その予選トーナメントで2回勝ち抜かないと、グランプリファイナルには進めない。

今回の大会は、2度グランプリファイナルを経験している囲碁将棋やマシンガンズをはじめ、はりけ〜んず、ななまがり、モンスターエンジン、吉田たち、ハンジロウなどのファイナリスト経験者が予選で敗退するという予想外の展開が巻き起こった。

また、結成15年を迎え『M-1』を卒業したばかりの、カナメストーン、ちょんまげラーメン、シマッシュレコードがベスト32まで残ったものの、惜しくもファイナル進出とはならなかった。

なお、予選となるノックアウトステージのトーナメントでは、カナメストーンvs黒帯という対決があった。昨年の『M-1グランプリ2025』ではラストイヤーで敗者復活戦に出場していた2組だ。

『M-1』ではカナメストーンが敗者復活戦を勝ち上がり決勝に駒を進めたが、『THE SECOND』では1点差で黒帯に軍配が上がった。接戦で勝利した黒帯は勢いそのままに、セルライトスパとの戦いにも勝利し、見事初年度でファイナリストとなった。

『THE SECOND』は「お笑いを広げる大会」

『THE SECOND』は、テレビ視聴者の「お笑い」を広げる役割を担う大会だと感じる。

お笑い賞レースの中で最も注目度が高いのは、やはり『M-1グランプリ』だ。『M-1』ファイナリストという肩書でテレビに出演する芸人さんは多い。

一方で、良くも悪くも影響力が大きい大会だ。いくら順調に予選を勝ち進んでも、決勝で結果を残せないと、視聴者から「おもしろくない」というレッテルを貼られてしまうことがある。

また、『M-1』ファイナリスト=おもしろい、『M-1』ファイナリストではない=おもしろくない、という価値観でお笑いを観ている人も少なからずいると感じる。

しかしながら、当然「お笑い」というのは『M-1グランプリ』だけではない。コントやピン芸もある。そして、『M-1』以外の場所の漫才もある。

吉本の劇場、浅草の演芸場、東京のライブシーンなど、日々さまざまな場所で漫才は披露されており、漫才そのものは常に進化している。

『THE SECOND』は、『M-1グランプリ』が担えない範囲の「お笑い」「漫才」にスポットライトを当てた大会なのだと、今回強く感じた。

大阪の異端芸人・ヤングが見せた「本当におもしろい漫才」

今大会のファイナリストで最も“ダークホース”的な立ち位置だったのは、初戦で金属バットと対戦したヤングだろう。

大阪を中心に個人事務所で活動をしていて、自らインディーズお笑いの拠点となるライブ会場を運営しているという、異端の芸人さん。『M-1グランプリ』には2018年以降出場しておらず、ライブシーンで着々と漫才を続けていた。

たしかに実力があっておもしろい漫才師なのだが、『THE SECOND』という大会がなければ、全国区のテレビでお目にかかれる可能性は低かっただろう。

初っ端から金属バットvsヤングという攻めた2組で始まったのは、なんとも『THE SECOND』らしい。当人たちも「視聴率が心配」とコメントしていたが、知名度や話題性に頼りきらず「本当におもしろい漫才」を見せつけるようなスタンスは最高だと感じた。

対照的なシャンプーハットとリニア。SNSは大盛り上がり!

東京で生活していると、大阪で活躍している芸人さんを見る機会がなかなかない。今回のファイナリストだと、シャンプーハットのネタを観ることができたのがうれしかった。

8組の中で最も芸歴が長く、調べたら私が生まれる10年前にコンビを結成していた。抜群の安定感と寄席らしい空気を感じる漫才でおもしろい。「速水もこみち」という、絶妙に今出ない固有名詞が多用されていたのも笑ってしまった。

一方で、シャンプーハットと対戦したリニアは、東京のライブシーンで活動する対照的なコンビ。ずっとおもしろい印象の芸人さんだが、『M-1』の最高戦績は準々決勝で、一度解散も経験している。

さらには「『M-1』ラストイヤーがダメだったら解散する」という話もあったのだが、『THE SECOND』に出場するべくコンビを続けたそうだ。

一昨年と昨年はベスト16まで残り、今年はついにグランプリファイナルに進出。個人的には「ようやくリニアの漫才が全国に広がる」ととても楽しみにしていた。

まず披露した「検索」についての話題から繰り広げられるネタは、今大会の中でも2番目に高い293点を記録した。初見でも酒井(啓太)さんとしょうへいさんのキャラクターを理解できる、とてつもなくおもしろい漫才であった。

このネタで酒井さんがエゴサーチをしまくっているという内容があり、その結果、Xはこのネタに対するリアクションで盛り上がった。酒井さんを褒める内容の投稿が、『THE SECOND』効果で爆増。

さすがに、テレビの反響は全部エゴサーチしきれないだろうと思いきや、のちに酒井さんは「全て見ています」と投稿していた。SNSを沸かせたという点でも、このネタは「あっぱれ」だ。

結成18年目、大阪吉本漫才コンビ・トットの実力

これまでの優勝者から「大阪吉本の漫才師が強い」という傾向を感じていたが、やはり今回もそうだった。

2024年に『M-1』ラストイヤーを迎えたトットは、さっそく昨年の『THE SECOND』でベスト16に入り、今年はグランプリファイナルに進出。

そして、ファイナリスト経験者のザ・パンチを破り、勢いに乗ったリニアとの接戦も3点差で勝利し、あれよあれよと決勝戦まで駒を進めた。

複数のお笑いの賞を受賞してきた実力に加え、その“ビジュ”のよさから人気もある、関西の優秀な漫才師という印象があったが、意外にも『M-1グランプリ』では一度も準決勝まで進んでいなかったらしい。

トットのファンの人たちは、結成18年目にしてようやくつかんだこのチャンスが楽しみで仕方なかったことであろう。

1本目の電子マネーを題材としたネタも、2本目の禁煙がテーマのネタも、6分があっという間に感じる、いいネタだった。

日々、劇場で研鑽を積んできたことが感じられる漫才を観られるのは『THE SECOND』ならでは。3本目のネタがどうなるのか、ワクワクさせられた。

【決勝戦】金属バットvsトット。大切なのは「持久力」?

トーナメントを勝ち上がり、決勝戦に進んだのは金属バットトットの2組。外見からネタの方向性まで大きく異なる2組だが、この勝負は見応えがあった。

トットのネタはそれまでの2本ともまた違う、ネタ中の役と現実を行き来するインパクトの強い漫才であった。

対して金属バットはどんなネタをぶつけてくるのか。すでに視聴者は6分の漫才を13本観ており、生放送は4時間ほど続いているなかで、最も注目が集まる瞬間であった。

それを利用して、逆手に取って、金属バットは意表を突いてきた。はたまたそのような狙いはまったくなかったのかもしれない。本当のことは一切わからないが、「真剣に聞いて損した」と言いたくなるような、めちゃくちゃで金属バットらしい漫才が最後に披露された。

よく考えると、土曜日のゴールデンタイムに放送されるお笑い賞レース番組が、金属バットで始まって金属バットで終わるなんてどうかしている。

その前の対戦では「祝日」をテーマにしたネタで、過去大会も含めたグランプリファイナル最高点の296点を叩き出していた。

しかし決勝では打って変わって、今回のグランプリファイナル最低点の264点を記録。一か八か、を地で行くスタンスに多くの人が心を奪われてしまったのではないだろうか。

一方で、いい意味で安定して高得点を記録していたトットは決勝で281点を獲得。点数的には金属バットが自滅したようにも見える展開だが、高いパフォーマンスを維持し、3本のネタを披露した地肩の強さで見事優勝を果たした。

『THE SECOND』において大切なのは「持久力」なのではないかと毎年感じる。瞬間的なおもしろさもありながら、安定しておもしろい漫才を披露し続ける。

この能力は『THE SECOND』に求められるものであり、芸歴を重ねた芸人さんにしか発揮できないものなのだろう。

『THE SECOND』に“夢の出口”をふさいでもらおう

かつての『M-1グランプリ』は、才能がない芸人さんに夢を見せず、あきらめさせるための大会だったという。

『THE SECOND』はそれとは真逆の大会だ。いつまでも、何歳でも何年目でも夢を持てるための大会。

「上が詰まっている」だとか「高齢化が進んでいる」だとか「若手がおじさんばかり」だとか、お笑い界にも問題があるのはわかる。

それでも、日の目を見る機会が偶然なかっただけのおもしろい芸人さんが解散したり引退したりするのは悲しい。それを食い止める役割を『THE SECOND』は果たしていて、だからこそいつまでも続いてほしい賞レースだと感じる。

『M-1』が夢の入口なら、『THE SECOND』に出口をふさいでおいてもらおう。

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奥森皐月

(おくもり・さつき)女優・タレント。2004年生まれ、東京都出身。3歳で芸能界入り。『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」、『りぼん』(集英社)の「りぼんガール」としても活動していた。現在は『にほんごであそぼ』(Eテレ)にレギュラー出演中。多彩な趣味の中でも特にお笑いを偏愛し、毎月150本のネタ..