「世間を挑発する」ニューヨーク、「尖ったまま老若男女に届く」金属バット、「センターマイクを鷲掴みにする」コウテイ…今年のM-1は敗者復活戦から見逃せない

2020.12.19
1220M1

文=鈴木淳史 編集=森山裕之


『M-1グランプリ2020』決勝が2020年12月20日に生放送される。それに先立ち、12月2日の準決勝では26組のコンビが戦い、その日の夜には9組の決勝進出コンビが発表された。筆者は、第1期『M-1』と呼ばれる2001年~2010年の大会まで予選現場に向かい、2002年からは敗者復活、決勝も東京の現場で、『週刊ザテレビジョン』記者として取材をしてきた。

2015年からの第2期『M-1』は予選を観に行くことも敗者復活戦や決勝を観に行くこともなくなり、決勝前のラジオ事前番組で少し話をさせてもらうくらいの関わりになった。今年、M-1公式YouTubeチャンネルで企画を担当することになり、10年ぶりに予選現場に向かい、関西在住のために観に行けない東京の予選もすべて映像で観ることができた。

錦鯉、おいでやすこが――漫才師を「辞める」きっかけを与えるはずだったM-1が「辞められない」きっかけとなった

10年ぶりに本格的に現場取材をし再確認したのは、その年のM-1に照準を合わせて仕上がっているコンビが明らかに存在すること。

2019年の優勝コンビである「ミルクボーイ」が仕上がっているという噂も昨年の秋くらいには関西のメディア関係者の間で聞こえてきていた。

思い返せば、第1回優勝コンビの「中川家」の漫才が仕上がっていて先輩漫才師が驚いたという話や、第5回優勝コンビの「ブラックマヨネーズ」は仕上がり具合だけでなく、大会にかける圧倒的な気迫を予選から感じたことなど、それぞれの優勝コンビにはそれぞれの仕上がり状況についての話が誰彼ともなく囁かれてきた。

1回戦、2回戦、今年は行われなかったが3回戦、準々決勝、準決勝と足繁く通っていれば、誰でも感じることができることかもしれない。

特に昨年からは準決勝を現場会場だけではなく、全国の映画館でも2時間の時差ありとはいえ、その模様が観られるようになった環境も大きい。今年はこの御時世ならではの配信も加わり、多くの人が準決勝をほぼリアルタイムで観ることができた。

準決勝という予選1回を観るだけでも、その年の各コンビの仕上がり具合はわかるし、YouTubeでは2回戦全コンビの映像も観られる。そう考えると、M-1はかなり開かれた大会になったと言える。

もともとM-1は、島田紳助が「漫才師を辞めるきっかけを与える」ということを目標に企画された。第1期の出場資格は結成10年以内であり、第2期では結成15年以内に出場資格が延長されている。この5年は本当に大きい。この5年に救われた漫才師も多い。

そして実際は、「辞める」きっかけを与えるはずだったM-1が、それぞれの芸人にとっては、「辞められない」きっかけとなってしまった。なんとしてでも決勝に行きたい、決勝にさえ行けば人生が変わる。優勝して1000万円を手にして人生を変えたいと、出演する全漫才師が思った。

今年の決勝進出者の中では、「錦鯉」がその典型と言える。結成は8年だが、それぞれの芸歴が26年と21年というコンビだ。

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ピン芸人にとっての人生を変えるきっかけである『R-1グランプリ』への出場失格を失った「おいでやすこが」も、それぞれの芸歴は20年と19年。共にもともとはコンビを組んでいただけに、実はM-1への想いは強い。

【おいでやすこがラジオ】ユニット初の快挙を成し遂げた二人がM-1の反響を語る※準決勝前に収録

M-1がつづく以上辞められない、諦め切れない、芸人を生みつづけている。

東にニューヨークがいるなら、西には金属バット、コウテイがいる


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