コロナ禍から次代のラジオスターが誕生!?『ニューヨークのニューラジオ』で今、起こっていること

2020.8.16

文=村上謙三久 編集=森田真規


2019年には『M-1グランプリ』の決勝にも進出し、実力派として知られるお笑いコンビ「ニューヨーク」。彼らがYouTubeで配信しているラジオ番組『ニューヨークのニューラジオ』が、新型コロナウイルスで緊急事態宣言が発令されていた今春、話題になっていた。

よしもとの劇場での全公演が中止になった3月2日から約3週間、「ラジオに毎日芸人を招いてトークする」という試みをやり通したのだ。そこにはミキや霜降り明星せいやなどの「第七世代」から事務所の異なるスピードワゴン小沢まで、幅広い世代のゲストが登場した。

今も毎週日曜日に生配信されている『ニューヨークのニューラジオ』は、「芸人が売れていく様をラジオでリスナーに追体験させる」。そんな夢物語を今、形にしようとしている――。


『ニューヨークのニューラジオ』はおもしろい。放送されているのはYouTubeだけれども

コロナ禍で揺れた今年の春、最もラジオという媒体を駆使して自分たちを発信したお笑い芸人はニューヨークではないだろうか?

もちろん、但し書きはつく。彼らのラジオ番組が放送されているのはYouTube。音声だけでなく、映像を含めての配信だ。「そんなのラジオじゃないよ」と拒否反応を感じる人はいるかもしれない。さまざまな意見はあるだろうが、ただひとつ確かなのは「YouTubeだろうとなんだろうと媒体なんて関係なく、彼らのラジオはおもしろい」ということだ。

ニューヨークのニューラジオ #68 2020.8.9

ニューヨークは次代のラジオスターして期待される存在だった。テレビのAD出身で、当時は「ラジオだけが生き甲斐だった」というほどの“ラジオが好きな”屋敷裕政。反対に学生時代を通じてリスナー経験がほとんどない“ラジオを知らない”嶋佐和也。ふたりのバランスは絶妙だ。学校のクラスを牛耳っていた1軍でも、隅で身を潜めていた2軍でもない“1.5軍感”というスタンスもリスナーの琴線に触れるニュアンスだった。

嶋佐和也(しまさ・かずや)1986年生まれ、山梨県出身。NSC東京校15期生

2015年にTBSラジオのネタ番組『マイナビ Laughter Night』の初代グランドチャンピオンに輝き、その特典として、2時間の生特番『ニューヨークの「この時間、アンテナ調整してるんだったらやらせてください」』が実現。翌年にはニッポン放送で『ニューヨークのオールナイトニッポン0(ZERO)』がスタートする。

屋敷裕政(やしき・ひろまさ)1986年生まれ、三重県出身。NSC東京校15期生

番組が始まるタイミングでインタビューした際、屋敷は「僕ら、この1年で売れるしかないんですよ。だから、歴史の目撃者になってもらいます。今から売れていく様を。だから、聴いておいたほうがいいですよ」と前向きに未来を見据えていた。そんな彼らの記事に私は「ラジオ界の超新星」とタイトルをつけた。

しかし、この番組は1年間で終了してしまう。そもそも放送局側が期待するような「若手芸人が深夜ラジオを始めて、1年目に賞レースで優勝してブレイク。売れていく様をラジオでリスナーに追体験させる」という形が現実になった試しは一度もない。それを簡単に実現させてくれるほど芸人の世界は甘くないのだ。

そのあと、ロンドンブーツ1号2号やグラビアアイドルたちと共に、MBSラジオの『アッパレやってまーす!』を担当したが、これも1年で終了。「次にブレイクするのはニューヨーク」と期待されつづけてきたが、芸人としてもラジオパーソナリティとしても、明確な爪あとを残せないまま時ばかりが過ぎていく。

劇場公演が中止になり「毎日芸人を招いてトーク」を約3週間継続した『特別編』


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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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