「世間を挑発する」ニューヨーク、「尖ったまま老若男女に届く」金属バット、「センターマイクを鷲掴みにする」コウテイ…今年のM-1は敗者復活戦から見逃せない

2020.12.19


金属バット、コウテイは敗者復活戦にすべてを賭けるしか決勝に勝ち上がる術はない

一方の金属バッドは淡々と飄々と漫才をする。まったく慌てず自分たちのテンポで進めていく様は威風堂々としており、もはや貫禄すらある。近年、関西のお笑い好きの間で噂が噂を呼び、すでに2年前にM-1準決勝へ駒を進めた。東京のネタ番組や劇場に呼ばれることも多くなった。

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賞レースの4分間の漫才は、普段長尺でできる劇場での漫才とは違い、スピード感や内容の詰め込みなど工夫しないといけないことがあるが、金属バットの漫才はそんな前提を自然に、静かにねじ伏せている。その尖りを保ったまま、1年に1度M-1で漫才を観る多くの老若男女にも伝わる円熟味も増してきた。

特に今年は、予選から観ていても素晴らしいネタがそろっていたし、今までのネタでも決勝の放送に通用するネタはあったので、満を持しての決勝進出だと信じ込んでいた。

あくまで自分は単なる取材者であり、イチお笑いファンの主観に過ぎないが、どこか結果に納得がいかない。しかし当たり前だが、審査員の方々の審査がすべてであり、絶対的な正義であることは理解している。

だからこそ、金属バット、コウテイは敗者復活戦にすべてを賭けるしか、決勝に勝ち上がる術はない。どちらかしか勝ち上がれない茨の道だが、こちらの溜飲が下がるよい結果を待ち望んでいる。

12月2日、大阪「COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール」で、東京の準決勝会場と時差なしの生中継を鑑賞することができた。

帰りの電車で、私と同じ準決勝生中継鑑賞帰りであるお笑い好き大学生カップルが興奮冷めやらない感じで、準決勝について話しているところに偶然居合わせた。隣に座っていたから、話の内容が筒抜けだった。

彼らは開口一番、「あのネタってコンプライアンス大丈夫なのかな⁉」と盛り上がっていた。「あのネタがおもしろかった‼」の前に「コンプライアンス」という言葉が出てきたことに驚いた。私が居合わせる前にネタのおもしろさについての話題がすでに終わっていたとしても、コンプライアンスの問題を一般のお笑いファンが「熱く」語ることが今という時代なのか。

人を傷つけない優しい笑いが流行っているのはわかっている。ただ、必要以上に人を傷つけることさえしなければ、元来笑いは、何も遵守せず、従順や適合という規制をぶっ飛ばしても赦されるはずだ。

12月20日の敗者復活戦、そして決勝戦は、とことん馬鹿で悪い漫才で大笑いして、気持ちよく2020年を終えられることを願う。

■『M-1グランプリ2020』敗者復活戦は12月20日14:55〜、決勝戦は当日18:34~生放送


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