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東にニューヨークがいるなら、西には金属バット、コウテイがいる
初年度のM-1で何が興奮したかと言えば、当時無名だった「麒麟」が決勝進出コンビに選ばれたということだった。
のちに「麒麟枠」という言葉も生まれたが、要は実力さえあれば知名度など関係なく、ダークホースが真っ当な評価を受けられる。そこから、「笑い飯」、「千鳥」といったコンビも決勝常連コンビになっていったのは周知の事実だ。
M-1は、メインストリームの場で「ワーキャー」という黄色い声援が上がるメジャー的立ち位置コンビに、ずっとアンダーグラウンドで活動してきたカウンター的立ち位置のコンビが一矢を報いる大チャンスの場となっていった。
最近ではネタ番組も増えたし、ネットでも多くのネタを観ることができるが、決勝当日だけをテレビで観る人にとっては、まだまだ無名に近いコンビも多いだろう。
こちらが予想できない観たこともないような漫才が観たい。世間に合わせるのではなく、自分たちに世間が追いつくという気概を持った漫才師が観たい。流行や旬に流されず、常に世間に中指を突き立てている不敵な漫才師が観たい。そういう漫才師を発掘しつづけてきたのがM-1だと信じている。
今年も決勝進出を果たした「ニューヨーク」は目の付けどころが悪いし、冷めている。どこか世間を挑発している不穏さがある。昨年に引きつづき、ニューヨークが決勝進出コンビに選ばれたのはうれしかった。夢を感じた。その道にさまざまなコンビがつづいていってほしい。
東にニューヨークがいるなら、西には「金属バット」や「コウテイ」がいる。彼らをずっと予選から追いかけていたが、両者共に我が道を行き、半端ない荒くれ者感がある。だが結果は、準決勝敗退。決勝当日の敗者復活戦で最後の枠に入る可能性が残された。
コウテイは、近年、関西の若手賞レース決勝進出常連コンビになったが、その独特な奇天烈爆発的な漫才を、審査員である大物漫才師に認められない時期がつづいた。
それでも真っ向からぶつかる若さならではの向こう見ずさは、ほかにはない凄みがあった。そして今夏の『ABCお笑い新人グランプリ』では、昨年に引きつづき今年もM-1決勝進出を決めた「オズワルド」などを破り優勝を果たした。現在は関西だけでなく、東京でも露出を増やしている。
昨年のミルクボーイの優勝を見てコウテイのふたりは、まずは目の前の関西の賞から確実に獲っていくことを視野に入れた。確実に関西の賞を獲ったことで、M-1でも予選から異様な自信がみなぎっていた。
予選で彼らが登場すると、客席には「待ってました!」という雰囲気が漂っていた。九条ジョーがセンターマイクをロックバンドのボーカルのように鷲掴みにし、前倒しにしながら「なんでやねん!」と叫ぶときの痛快さといったら。
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