年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、22歳・タレントの奥森皐月。今回は、7月20日に決勝戦が放送された『ダブルインパクト2026』を振り返る。
目次
2896組がエントリー! 漫才とコントの二刀流日本一を決める大会
漫才とコントの二刀流日本一を決めるお笑い賞レース『アサヒビール スマドリ ダブルインパクト2026 漫才&コント二刀流No.1決定戦』が7月20日に放送された。
『ダブルインパクト』は、お笑い賞レースが乱立している状況下で、昨年新たに始まった大会だ。1回限りではなく今年も無事に開催され、1回戦・2回戦・準々決勝・準決勝と予選が行われてきた。
出場資格はプロアマ問わず、ふたり以上でおもしろい「漫才」と「コント」を披露できること。ユニットでの出場や併願エントリーも可能で、今年は2896組がエントリーしたそうだ。
『M-1グランプリ』のエントリー数が近年1万組を越えるようになり麻痺していたが、「漫才とコントがどちらも披露できるグループ」が3000組近くいる事実は、本当にすごいと思う。
1回戦は漫才とコントどちらかのみの披露のため、もしかすると片方にだけ自信があって、もう一方は初めて挑戦するような人もいるのかもしれない。
でも、それにしてもだ。「お笑いは流行っていない」といわれるわりには、やっている人が多い。1回戦に出場していた全組の漫才とコントを1本ずつ観たらどうなってしまうのだろう。
上位5組に入れなければ、もう1本が披露できないルールに変更
『ダブルインパクト』の予選は、準々決勝までは多様な芸人さんが勝ち残る印象だ。若手ライブシーンで活躍する組や芸歴の浅い芸人さんもかなりの数が進出する。
しかしながら、準決勝になると一気に実力派ぞろいの顔ぶれになる。『M-1』や『キングオブコント』をはじめとした全国賞レースのファイナリストが勢ぞろい。芸歴制限のない大会のため、芸歴を重ねているコンビやグループの割合が増え、「ガチの大会」という空気が漂う。
今大会では、昨年ファイナリストで『キングオブコント』チャンピオンのかもめんたるや、『M-1』と『キングオブコント』のダブルファイナリストである男性ブランコをはじめ、カベポスター、コットン、見取り図などが並んでいた。このメンバーですら決勝に進めないことからも、大会のレベルの高さがうかがえる。
熾烈な戦いを制し決勝に進んだのは、蛙亭、今夜も星が綺麗、滝音、ダンビラムーチョ、TCクラクション、ドンデコルテ、ななまがり、ビスケットブラザーズの8組。
この決勝戦なのだが、昨年の第1回大会から、何点かルールが変更された。
まずは、ファイナリストの数が昨年の7組から8組に増加。そして「1stインパクト」と「2ndインパクト」の2ステージ制から、「1stステージ」と「FINALステージ」の2ステージ制になった。
昨年はファイナリスト全組が漫才とコントをどちらも披露したが、今回の大会は1stステージでの点数上位5組だけが2本目のネタを披露できるシステムだった。つまり、上位5組に入れなければ、もう1本の漫才またはコントはできない。
ファイナリスト全組がネタを2本披露する賞レースは少ないので、その点が『ダブルインパクト』の特色であり魅力だと感じていたが、第2回大会にしてそのシステムはなくなってしまった。
ただ、「FINALステージに残れるかどうか」とドキドキする展開や、お笑い賞レース名物の“暫定ボックス”や“敗者コメント”は、このルールにすることで生まれる。来年以降、またどのようにルールが変わるのかは注目しておきたいポイントだ。
審査員はアンガールズの田中卓志さん、フットボールアワーの後藤輝基さん、中川家の剛さん、千原ジュニアさんの4名が昨年に引き続き務めた。
昨年はもうひとりナイツの塙宣之さんがいたが、今回は新たに昨年チャンピオンであるニッポンの社長の辻クラシックさんが審査員に。辻さんは先月「辻クラシック」に改名したばかり。終始「クラシック……?)と名前が気になってしまった。
ファイナリスト8組中6組が吉本所属! 「非吉本勢」もカッコいい
今大会ファイナリストで注目されていたのはやはりドンデコルテだ。昨年の『M-1』では準優勝。さらに今年の『R-1グランプリ』でも渡辺銀次さんはあと一歩のところで優勝を逃した。「二刀流で悲願の金へ」というキャッチコピーから、優勝を期待されているのが感じられた。
また、『キングオブコント2022』王者であるビスケットブラザーズも注目株であった。コントのイメージの方が強いかもしれないが、『ytv漫才新人賞』で優勝した経験もある、まさに二刀流。この大会にかなり適したコンビだ。最近は原田泰雅さんによる「J」というキャラクターにも勢いがあり、優勝候補だと思っていた。
ファイナリスト8組中6組が吉本興業所属の中で、TCクラクションと今夜も星が綺麗は、いわゆる「非吉本勢」として頭角を現した。2組ともライブシーンでは圧倒的な実力があることが知られているが、しっかりと決勝に勝ち上がっているのはカッコいい。
今大会の最年長が1983年生まれのTCクラクションの坂本 No.1さんと今夜も星が綺麗の三福エンターテイメントさんのふたりなのも素敵だ。2組とも結成年こそ浅いが、芸歴は『THE SECOND』側である。
【1stステージ】トップバッターの滝音が高得点! 注目の蛙亭・ななまがりは?
いよいよ始まった1stステージでは、トップバッターの滝音が、安定感がありながらも滝音らしさ全開の漫才を披露し、500点満点中475点という高得点を獲得。結果的にそのまま1位通過した。
この1本目が素晴らしかったからこそ、大会全体の盛り上がりが増していたように感じられた。
個人的には1stステージ5番目で登場した蛙亭の「放送部」のコントが一番好きだった。蛙亭のおふたりにしかできない、設定・キャラクター・展開。それまでを上回る高得点が出ると思ったが、辻さんや剛さんが96点だったのに対し、後藤さんは89点。想像より点が伸びなかった。
唯一の2年連続決勝進出となったななまがりは、1stステージで惜しくも6位に。そのため2本目の披露がなくなり、残念であった。
しかし、コメントを求められると初瀬さんが「言い切る男」になり、森下さんが「パラレルワールドの橋本環奈」になる無敵さ。このような一瞬一瞬の積み重ねで、ななまがりをどんどん好きになる。
ずっと変なのに、ストイックにネタを作り続けて、さまざまな賞レースに出場しているのもおもしろい。いつまでも変わらずにいてほしいと思ってしまう。
【FINALステージ】最高得点のドンデコルテに、合計点で差をつけた滝音
FINALステージでは、ドンデコルテが『M-1』準優勝の実力を見せつけるように、今大会最高得点である482点を獲得した。蛙亭もビスケットブラザーズもダンビラムーチョも、それぞれのコンビらしいネタで高得点を出したものの、ドンデコルテには及ばず。
最後の最後に、トップバッターで会場を沸かして以来ずっと出ていなかった滝音が「取り調べ」のコントを披露した。漫才とはボケ・ツッコミの役割が異なるものの、滝音の漫才の空気感も感じられるネタで、1本目の漫才より1点高い476点を獲得。
最高点という意味ではドンデコルテが上回ったが、漫才・コントの合計点では滝音が8点差をつけ見事に優勝した。
滝音のおもしろさはお笑いが好きな人にはよく知られているが、賞レースの場で「優勝」を飾るのは今回が初だそう。これを機に、より多くの人に滝音のおもしろさが広まるかと思うと、とても楽しみだ。
そして、またしても準優勝となったドンデコルテ。もはや、全賞レースで「準優勝」という偉業を成し遂げそうな勢いだ。準優勝だって本当に凄まじい結果だけど、いつか優勝する姿も見てみたい。
すゑひろがりずの「賢飲」が印象に残った
今回のダブルインパクトで、妙に記憶に残ったフレーズがある。それは「賢飲(けんいん)」だ。
冠スポンサーである「アサヒビール スマドリ」のいわゆる「インフォマ」と呼ばれる広告映像が、テレビ放送でもTVerでも流れる。広告内ですゑひろがりずがスマドリ(スマートドリンキング)のことを「賢飲」と呼んでいて、これがなぜかすごくおもしろかった。
TVerでダブルインパクトを最初から最後まで観ると、この映像が5〜10回ほど流れるのだが、何度見ても飽きないおもしろさがある。『インフォマ-1GP 2026』があればすゑひろがりずが優勝だ。
また、決勝大会放送後にTVerで配信されていた「アサヒビール スマドリ ダブルインパクト2026 大打ち上げ会 sponsored by アサヒビール」もおもしろかった。
MCのガクテンソクのおふたりが醸し出す空気感が絶妙で、ほどよいゆるさもありながら、しっかりと大会を振り返っていて見応えがあった。
途中、ダンビラムーチョの応援でやってきたテレビ山梨からブドウが差し入れされたり、三福エンターテイメントさんのご実家で作られているかつお節が出てきたりして、それをファイナリストたちが普通に食べていたのがよかった。
かつお節に関しては、白米に乗せて醤油をかけて食べていた。決勝大会を終えたあとに白米を食べている映像はやけにおもしろい。
配信の最後は、言い切る男が今回のファイナリストが来年も「出場するか」「出場しないか」を言い切る時間も発生。
これまでさまざまな賞レースの事後配信を見てきたが、今回のダブルインパクトの配信は見応えがあり、満足感が得られた。本編とは違う魅力が詰まっていた。
音響・照明トラブル、審査員の点数の理由など、改善点も
今大会はどのネタもおもしろかった分、音響トラブルや照明トラブルと見られるものが目立ってしまった気がする。
また、審査員がなぜその点数をつけたのかが不明瞭だと感じることも何度かあった。生放送でお笑いの賞レースをするというのは本当に大変なことだと思うが、これらがもう少し改善されると、より視聴者が観やすい大会になりそうだ。
日本テレビ系列では『THE W』が開催されなくなってしまったので、今後は『ダブルインパクト』が続いていくのだろうか。優勝した滝音が飛躍し、大会そのものの価値がさらに高まっていくことを願いたい。
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