8位〜10位は、「バカそのもの」「貴重な来日公演」「24歳の切実さ」
8位 演劇ユニット巨乳の彼女を創る『まつげが伸びきっちゃった』(ARAKAWA dust bunny/2020年3月13日〜16日)
演劇ユニット巨乳の彼女を創る(「劇乳創」と略すそうです)は、「おもしろいことをして、あわよくば彼女を創りたい」という思いの高校生3人によって結成(そのあとメンバーふたりは彼女ができて脱退)。
昨年、初めて観た『チンチンの冒険~144時間500kmサイクリング(愛は恥丘を救う)』は公演期間中、主宰者が地球を救うため(?)宝塚から東京まで自転車でツーリングしている実況映像を流し、パンツ一丁の出演者たちが「負けないで」を歌ったりしながら応援する、バカバカしいというよりバカそのものといった感じの演目でしたが、構成や仕かけが意外なほどしっかりしていて、感心させられました。
そして今年3月に観た『まつげが伸びきっちゃった』は、いろんな公演がどんどん中止になっていく真っ只中に上演。会場のArakawa dust bunnyは工場のような建物の屋上にある、ほとんど野外といっていい場所で、強風が吹きすさぶなか最初から最後までパンツ一丁の5人の男たちがひたすら下ネタとギャグを繰り出す清々しい作品。ただただひたすら感動しました。あとコロナじゃなくて普通に風邪引く(やるほうも観るほうも)と思いました。でも風邪引いても悔いはないと思えた、そんな「劇乳創」。
次回公演は「主催に彼女ができなければやる予定です」とHPに書いてありますが、ツイッターによると、主宰の葛生大雅さんについに彼女ができてしまったそうです(巨乳かどうかは不明)。
9位 フランソワ・シェニョー&ニノ・レネ『不確かなロマンス─もう一人のオーランド─』(彩の国さいたま芸術劇場大ホール/2020年12月19日)
今年は来日が予定されていた海外のアーティストの公演がほぼすべて中止になりましたが、唯一観ることができたのが、フランソワ・シェニョー&ニノ・レネ『不確かなロマンス─もう一人のオーランド─』。
フランソワさんはもともと技巧派の凄腕ダンサーでしたが、カストラートの歌唱法をマスター。今回の公演でも竹馬のような先の細い高下駄に乗ったり身体をうしろに反らせたりしながら、超高音の歌を披露します。
スペイン音楽400年の歴史を旅しながら、ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』の主人公のように複数の時代を生きる人物を演じ、性別を超えた「アンドロジニー(両性具有)」の形象を探る……といった高尚なテーマをどこまで自分が理解できたかは心もとないですが、これだけ踊れて動けて歌えて、しかもお美しい。そんな人がこんなご時世に来日までしてくれて、本当にありがとうございました!としか言いようがありません。
10位 竹内蓮企画ロチュス第0回公演『モノクロチュス』(RAFT/2020年9月3日〜6日)
最後に取り上げるのは、僕はまだ劇団公演を観たことがない「劇団スポーツ」に俳優として所属する竹内蓮さんのひとり芝居『モノクロチュス』。
彼は今年の2月、3月、5月、8月に出演するはずだった4本の舞台が立てつづけに中止となったので、生まれて初めて台本を書き、自分で公演を打つことにしたそうです。
「今年は本当にろくな夏じゃなかった」ので、「自分が一番キラキラしてた夏の思い出についてお話しさせてください」と言って、「中学3年の夏、転校生の女の子に告白したら3カ月だけ付き合えた」というエピソードを紹介します。でも、「付き合えた」と言っても、何か劇的なことがあったわけではなく、「あ、今のは少し盛りました」と自分ツッコミを入れつつ、当時聴いていた音楽などを流しながら思春期の淡い思い出を淡々と振り返る50分。
特におもしろい展開やオチはありません。後半、「自分は今24歳。田舎に帰るとなんのドラマ出てるの?と聞かれる。役者としてもっともっと売れたい!」とか言いながら、舞台狭しとやたら暴れ回ったりもするので、観ている間中「この人、ケガしないか」とハラハラしました。
思えば僕もソロライブなどを始めたのがちょうど24歳からで、「とにかく何かしなきゃ」という思いに突き動かされた竹内さんの切実さを観て、当時の自分のことも思い出しながら家に帰りました。
翌朝。チケットのメール予約をした自分のアドレスに公演の制作さんから、「昨日の本番中に足を負傷して、終演後、歩行が困難になり、救急車を呼んだところ、車内で検温したら38度を記録。そのあと数回にわたって検温しましたが、熱は下がりませんでした。深夜なのでPCR検査はできず、発熱の原因は不明ですが、本日以降の全公演を中止します」というメールが届きました(その夜「PCR検査は陰性でした」というメールも)。結局、僕が観た初日のみで公演は終了してしまいましたが、貴重な一夜に立ち会えました。
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宮崎吐夢さん出演中の舞台『ピーター&ザ・スターキャッチャー』
作:リック・エリス
原作:デイヴ・バリー、リドリー・ピアスン
音楽:ウェイン・バーカー
翻訳:小宮山智津子
演出:ノゾエ征爾
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キャスト:入野自由、豊原江理佳、宮崎吐夢、櫻井章喜、竹若元博、玉置孝匡、新川將人、KENTARO、鈴木将一朗、内田健司、新名基浩、岡田 正
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演奏:田中 馨、野村卓史
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<公演情報>
日時:2021年1月9日(土)、10日(日)14:00
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
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日時:2021年1月13日(水)18:00
会場:サンポートホール高松 大ホール
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日時:2021年1月17日(日)13:00
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
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日時:2021年1月24日(日)13:00
会場:北九州芸術劇場 中ホール
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日時:2021年1月30日(土)、31日(日)14:00
会場:水戸芸術館 ACM劇場関連リンク
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