俳優・宮崎吐夢が選ぶ<2020年に劇場で観られてよかった演劇ベスト10>

2020.12.29

3位〜7位は、「評価の分かれる気鋭の劇作家」「サロン軽演劇」「鈴木杏ひとり芝居」「小沢道成ふたり芝居」

3位 iaku『The last night recipe』(座・高円寺1/2020年10月28日〜11月1日)
4位 劇団俳優座『雉はじめて鳴く』(俳優座劇場/2020年1月10日〜19日)

ここ数年、「今、おすすめの演劇は?」「一番好きな劇作家は誰ですか?」と質問されるたびに、「iaku」「横山拓也さん」と答えてきました。もはや私の頭の中の演劇界は横山さんを中心に回っているかのような、そのくらいの気持ちでいるのですが、驚いたことに現実の演劇界での評価はまだまだのようです。昨年末、ある尊敬する演劇ジャーナリストの方をお迎えして演劇のトークイベントをしたのですが、そのときも一番意見が分かれたのはiakuに対する評価でした。

そんなiakuの横山拓也さんの新作が今年は2本上演。

『The last night recipe』は、 2021年3月に感染症のワクチンを接種した日の晩に亡くなった女性ライターが、死の1年前から綴った献立ブログをめぐる物語。

『雉はじめて鳴く』は、サッカー部顧問と不倫をする女教師と彼女に家庭内の悩みを相談しながら恋心を抱く男子高校生、そこに彼のことが好きな同級生や新任のスクールカウンセラーが絡み……というふうに便宜上、簡単なあらすじ紹介を書いてみようと思ったのですが、話はシンプルで非常にわかりやすいのに「どういう作品で、何について書かれた物語なのか」を説明するのが非常に難しいことに気づきました。

どちらの作品も「毒親からネグレクトを受けた若い男性を年上女性が救おうとする話」なのだけれども、そういうまとめ方で括れるお芝居ではないのです。私のあまりにも拙い感想ではとてもiakuの横山さんのお芝居の魅力を伝えることができないので、ご興味を持たれた方はぜひ一度ご覧ください。来年の春は『逢いにいくの、雨だけど』の再演。そして秋には新作公演があるそうです。

5位 城山羊の会『石橋けいの「あたしに触らないで!」』(小劇場B1/2020年12月17日〜27日)

「嫉妬と浮気」。毎回、ちょっと呆れてしまうほど同じテーマの艶笑譚を手を変え品を変え、異なるテイストで上演しつづけてきた城山羊の会の2年ぶりの新作。

ここ最近はエッジが効き過ぎて、若干ついていけない作品もあったりしたのですが、今回の『石橋けいの「あたしに触らないで!」』は、コロナ禍の日本の上流階級の倦怠感を描いたサロン軽演劇とでもいうべき、僕の大好きな唯一無二の城山羊の会っぽさあふれる作品でした。

出演者は、ほぼ手練れの常連組でしたが、今回初出演の岡部ひろきさん(20歳)の存在感と佇まいが素晴らしかったです。彼は岡部たかしさんのご子息。諸事情によりずっと離れて暮らしていましたが、父親の出ている城山羊の会は必ず観に来ていて、「いつか城山羊の会に出たい」と一念発起して昨年、上京。その夢がたった1年で叶ってしまいました。今後彼は何を目標に生きていくのでしょう。

ちなみに昔、岡部たかしさんから「息子とたまに会うと、僕が寂しそうにしてるからか、キスをしてくれる」と聞いて、驚いたことがあります。実の父と息子が口と口でキスをする。まだまだ今の日本ではなかなか理解されづらい進んだ風習です。さすがの山内さんも「それはヘン。おかしいです」と顔をしかめていました。でもいつか、おふたりがそんなやりとりをする演劇も城山羊で観てみたいものです。

6位 『殺意 ストリップショウ』(シアタートラム/2020年7月11日〜26日)

鈴木杏さんのひとり芝居『殺意 ストリップショウ』は、緊急事態宣言のあと最初に劇場で観た演劇でした。

戦争直後のナイトクラブ。ショウダンサーが自分の身の上を語りながら、戦死した恋人の兄(戦争中は国家主義者に転向し戦争を賛美した左翼インテリ)に最初は敬意を、しかしいつしか殺意を抱くようになった経緯と呪詛の言葉を吐きつづける怒涛の2時間。

これを観た半年前に鈴木杏さんと舞台で共演していたのですが、バッキバキに割れた腹筋も露わにする精悍な杏さんに以前とはかなり違った印象を受け、また、このような骨太の芝居を軽やかに淡々と演じられていたことにも驚きました。

7位 小沢道成 ふたり芝居『みんなの宅配便2020 -distance ver.-』(本多劇場/2020年8月10日)

6月から本多劇場で始まった配信公演『DISTANCE』シリーズの第2弾。8月に観客を入れての日替わり公演『DISTANCE-TOUR-』で上演されたうちの1本が『みんなの宅配便2020-distance ver.-』です。

いつも自宅に来てくれる宅配便のお兄さん(小沢道成)に恋愛感情を持ち、ストーキング行為に走ってしまう中年女性(峯村リエ)のお話。小沢道成さんは、純粋ゆえに墜ちていく(落ちぶれていく)女性を美しく描くのが本当にうまい。

そしてなんといっても峯村リエさん。「こんなはずじゃなかった。どうしてこんなことになっちゃったんだろう」と自問しながら、30年前のその部屋に住み始めたころの希望に満ちた彼女に戻っていくシーンでは神々しささえ漂わせる名演を見せてくれました。

8位〜10位は、「バカそのもの」「貴重な来日公演」「24歳の切実さ」


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