失言騒動、そして『ナインティナインのオールナイトニッポン』の復活
この一年で芸人ラジオ界に最も激震が走ったのは、緊急事態宣言下の4月に起きた『岡村隆史のオールナイトニッポン』における失言騒動だろう。そもそもコロナ問題の禍中にいるリスナーを励まそうとしたのが発端。発言自体の問題性は明らかであるとしても、岡村隆史というパーソナリティを信頼しているリスナーにとっては心苦しく、言葉にできない思いばかりが募る時期だった。
ただ、そこから矢部浩之の公開説教、そして、『ナインティナインのオールナイトニッポン』復活につながったのは、ラジオらしい反作用だと思う。ラジオは誰かを傷つけて終わるのではなく、最後にはちゃんと誰かを救うものだからだ。
そして半年後、岡村隆史の結婚が電撃発表された。失言騒動が結婚に至るひとつのキッカケになったことも明らかに。あの2時間はとにかく多幸感あふれる放送だった。「おもしろいことはなにも言ってない」と照れる岡村、音声だけでも笑顔なのがわかる矢部、リスナーに代わってグイグイと質問するゲストのaiko、裏番組から祝福するおぎやはぎ……。番組からはスタッフの気持ちもヒシヒシと伝わってきた。
この放送を聴いて、改めて人生について考えた岡村と同じ中年リスナーも少なくない。極端な話、未婚率の増加や少子化の解消にだって、わずかながら影響を与えることになるはず。お偉い学者先生の小難しい講釈よりも、この2時間のほうが誰かを救い、世の中をハッピーにしたのは間違いない。
また、騒動時に『爆笑問題カーボーイ』で、すべての視点から優しく人々の思いをすくい上げた太田光のフリートークは、今年を振り返る上で欠かせない放送になったこともつけ加えておきたい。
霜降り明星、ピンチをチャンスに変えた圧倒的な熱量
ネガティブな話題から生まれた大きな出来事といえば、6月の『霜降り明星のオールナイトニッポン0』も思い浮かぶ。せいやの“Zoom騒動”(これもコロナ禍ゆえに起きた出来事)を受けて、注目を集めた直後の放送。霜降り明星は騒動に一切触れず、芸人ラジオ界でも屈指の“イカれた”コーナー「ポケットいっぱいの秘密」をぶっ通しでやり切った。
普段は番組を聴いていない興味本位のネット記者や野次馬たちを完全に置き去りにし、リスナーたちの拍手喝采を浴びたあの2時間は、今後の深夜ラジオ史に残るであろう、まさしく“神回”だった。腹がよじれるほど笑い、興奮し、感動さえ覚えた。ほかにも、せいやが体調不良で欠席した際に、粗品が1000通のネタ紹介に挑戦するなど、この番組はピンチをチャンスに変える場面が多々あった。テレビに留まらず、ラジオでも霜降り明星が確かな熱を生み、その圧倒的な魅力を見せつけた一年だった。
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