たったひとつのツイートから生まれた、一冊の本と大学サークルの話【ニッポン放送・石井玄×「大阪大学ラジオの会」山浦暁斗】

2021.12.25


アニメや映画をラジオでマネする

山浦 僕もラジオの会を立ち上げたとき、ラジオを吸収しないといけないと思って、最初の緊急事態宣言のときは週50~60番組くらい聴いていました。ただ、義務に感じてしまい、楽しくなくなってきちゃって……つづけられなかったんです。

石井 ラジオって実はそんなにパターンなくて、同じようなの多いからね(笑)。飽きちゃうと思う。大学に行かずにコンテンツ漬けになっているときはだんだんおかしくなってきて、映画を観ながらゲームをやって、同時にラジオを聴いて……なんてことをやっていました。全部やってやろうみたいな時期があって。ほとんど意味ないんですけど(笑)。

TBSラジオの『JUNK 交流戦スペシャル』で、片桐仁さんが映画監督の本広克行さんやトータス松本(ウルフルズ)さんたちと一緒にやったときがあったんです。その中で、本広監督がまさに僕が本で書いたように、レンタルビデオ屋でバイトをやって、邦画や洋画をたくさん観ていたと話されていて、「同じことをやろう!」とそれをマネしたんですよね。それが今の糧になっているんじゃないかと思うんですけど。

──難しいですね。ラジオを好きでいつづけるため、作りつづけるために、ほかのものに触れないといけないというのは。

山浦 どうしても、めちゃくちゃ内弁慶になっちゃうんですよね。

石井 ラジオをマネしてラジオ番組を作るとパクリになっちゃう。でも、聴いてなければ、自分で考えたことにできるから、結果的に、同じものであっても似て非なるものになるじゃないですか。映画やマンガから着想を得てアイデアを自分なりに考えれば、別にパクリにならないですから。オマージュだと言い切れるし、音だけのメディアなので違うものに聞こえます。そこはすごく意識した時期がありましたね。アニメや映画を観て、BGMが入るタイミングを研究したり。

アニメ『ハチミツとクローバー』(フジテレビ)のエンディング曲のカットインするタイミングが、どの回も絶妙なんです。マーベルの映画も凄くカッコいい。そういうものを観て、似たようなものにしたいと考えていました。それはアルコ&ピースの番組をやっていた経験が大きいですね。福田(卓也、放送作家)さんが、「あの映画をラジオでやろうよ」って言ったりするので、映画を観てないと話にならなかったです。

山浦 ほんと勉強になります。

山浦暁斗

ラジオリスナーの裾野を広げるには

──山浦さんから見て、サークルのメンバー以外の大学生はラジオをあまり聴いていない状況なんでしょうか?

山浦 そうですね。聴いたことがあったとしても、動画サイトにアップされている公式ではないものが多いです。正直、radikoで聴いている人はあまりいないのかなって。

──ラジオ自体の魅力を伝えても、大学生には打っても響かないような感覚ですか?

山浦 はい。なので、直接ラジオの魅力を伝えるのではなく、YOASOBIが好きな友達がいるとしたら、「YOASOBIがラジオをやっているよ」と紹介したほうが最初は聴きやすいかなって思います。

石井 何からラジオを聴き始めたのかって学生に話を聞くと、ちょっと前だとAKB48だし、今だとYOASOBIや乃木坂46、SixTONESだし、そこから入るのが普通なんですよね。僕も田中麗奈さんが好きでラジオを聴き始めたので、そういう入り方のほうが手っ取り早いんです。

で、その中の何人かがほかのラジオを聴いてハマるという仕組みになっているから。声優やアイドルの番組が多いのは、それ目当てが聴いてくれる人がいるからだから、それは正しいと思います。いきなり『三四郎のオールナイトニッポン 0(ZERO)』を薦めても聴かないから(笑)。「なかやまきんに君SP」なんてかなり深めのリスナーを対象にした作り方をしているんで。

山浦 それはそうですね(笑)。

石井 ANNは入口になるような番組を特に意識して作っていると思います。

山浦 それこそANNX(クロス)だと、有料になってしまいますが、配信アプリの「smash.」でアーカイブの映像が観られますよね。「ぺこぱのラジオを最初から聴くにはどうしたらいい?」と聞かれたときには、お金がかかるけど聴けるよって言える。そういう意味では、最近のアーカイブが残るようになってきている流れはいいなと思います。

石井 ANNでもポッドキャストとして配信している番組もあるしね。

山浦 個人的には、今からラジオに入る人向けに無料で2~3回分ぐらい聴けるようになっていたらいいなって。あとは、たとえば『三四郎ANN』のファンクラブ(2021年3月に番組の公式ファンクラブ「バチボコプレミアムリスナー」を発足)みたいに課金でもいいと思います。本当に好きな人なら入ってアーカイブを聴きたいでしょうから。それの両立っていうか、そういうかたちがあったらいいなって思います。

石井 アーカイブについてはトライをしているんですけど、作業量が膨大になるので、「人が必要だよね」「お金がないよね」っていう同じループになってしまうんです。ひとつは音楽著作権が課題で、しっかり権利者にお金を支払えるような仕組みを作らないと。あとは今言ったように人の問題ですね。1番組を4~5人で作っていますから、それでアーカイブもやるなら、完全に別のスタッフが必要になるので、そこにも人件費がかかります。なかなか進まないのはそういう理由です。

僕も何回かトライをしては、「ああ、無理だな」って結論に至ってきましたけど、三四郎のオールナイトニッポン公式ファンクラブ「バチボコプレミアムリスナー」で完全なアーカイブではないですが、なんとか形にしています。


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  • 『アフタートーク』

    『アフタートーク』

    著者:石井玄
    定価:1,650円(税込)
    発売日:2021年9月15日
    発行元:KADOKAWA
    判型:四六判
    ページ数:304

    ラジオへの情熱と志を綴った、10年間の集大成=アフタートーク。仕事や人生への示唆に富む一冊。「ラジオにまつわる仕事論」「ラジオに救われて業界を目指すまで」「ラジオを共に作ってきたパーソナリティ・放送作家・リスナーとのエピソード」の3パートで構成。番組を語るコラム、放送作家の福田卓也、寺坂直毅、ラジオディレクター宗岡芳樹らとの対談、テレビプロデューサー・佐久間宣行の解説「元会社員パーソナリティが語るラジオマン石井玄」などを収録。

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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)、『いつものラジオ リスナーに聞いた16の..

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