たったひとつのツイートから生まれた、一冊の本と大学サークルの話【ニッポン放送・石井玄×「大阪大学ラジオの会」山浦暁斗】

2021.12.25
石井玄と山浦暁斗

文=村上謙三久 撮影=鈴木 渉 編集=森田真規


『オードリーのオールナイトニッポン』『三四郎のオールナイトニッポン』『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(以上、ニッポン放送)『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(TBSラジオ)など、数々の人気ラジオ番組でディレクターを務め、オールナイトニッポン(以下:ANN)のチーフディレクターを担当していた石井玄。そんな彼が2020年3月に投稿したひとつのツイートが、当時大きな話題を呼んだ。

このツイートをきっかけに生まれたのが、石井氏の初の著書となった『アフタートーク』(KADOKAWA)であり、学生サークル「大阪大学ラジオの会」である。石井氏と「大阪大学ラジオの会」前代表で同サークルの発起人である山浦暁斗氏の対談前編となる本稿では、石井氏本人が語るツイートの裏側、そのツイートに感化されサークルを立ち上げることに至った話など、“ラジオの現在”をめぐる幅広いテーマについて話された。


「諦めないぞ」という決意表明のツイート

──山浦さんが石井さんのツイートに影響されて、大阪大学で「大阪大学ラジオの会」というサークルを立ち上げたと。その話を知った石井さんから「ぜび、話してみたい」と連絡をいただいて、今回の対談が実現しました。

石井 「話してみたい」というか、「好感度を上げたい」と思って(笑)。

──そもそも、きっかけになった2020年3月のツイートはどんな思いがあって書いたんでしょうか?

石井 いろんなところで言っているんですけど、僕が入ったころから今もそうなんですが、ラジオ業界は基本的に下向きなんです。これはディレクターに限らずなんですが、いい時代を過ごしてきた人たちがベテランとしてたくさんいらっしゃって、業界がどんどん下向きになっているのを知っているから、基本的には「もうラジオは終わりなんだよ」という考えの人がいるんですよね。

ただ、僕らの世代……特に僕がそうなんですけど、ラジオ第1志望で入ってきているから、最初はそういう人たちの話を聞いて、ずっと嫌な気持ちになっていたんです。もちろんそうじゃない宗岡(芳樹、当時のANNプロデューサー)さんのような先輩もいたので、そういう人たちについていこうという気持ちでいました。でも、なかなかその状況を変えられなくて。

──憤りを抱えていたと。

石井 制作費が下がっていって、ラジオの仕事は縮小していくから、映像やイベントなどをもっとやっていたほうがいいと言われていたんです。でも、僕はラジオ自体がやりたくて、ラジオを盛り上げるために業界に入ってきたから、それにものすごく反発していたんですね。

もうだいぶ前のことなので記憶は定かじゃないですけど、このツイートの前後に何か言われて……ムカついたことがあったんでしょう(笑)。でも、「自分は諦めない」という決意表明でツイートをした記憶があります。思いの外、バズったんでびっくりしましたけど。

石井玄
石井玄(いしい・ひかる)1986年生まれ、埼玉県出身。ラジオ番組企画制作会社・ミックスゾーンにて『オールナイトニッポン』のチーフディレクターを経験。2020年からはニッポン放送エンターテインメント開発部のプロデューサーへ

──番組関連ではないのに、3200リツイート、2万4000いいね(2021年12月25日時点)がつくなんて、ラジオスタッフのツイートとしては異例だと思います。

石井 当時、『オリコンニュース』さんにそのツイートに関して「どういう気持ちなんですか?」と取材を受けて(「ラジオファンを熱くさせた『ANN』統括Dのツイートの真意 発端は“ラジオ業界”への怒り」)、そこでも同じようなことを言ったと思うんですけど、内部から変えないとよくならないという気持ちを発信していこうと決めた、決意のツイートでした。

──こんな事情は当然、リスナーとしてはわからないことでしたけど、山浦さんはこのツイートをどんなふうに受け止めたんですか?

山浦 そこまでの事情はもちろん知らなかったんですけど、「ラジオは終わっている」と言われたってことは、僕も「終わっている」と言われたようなものだなと感じて。これはなんとかして終わらせたくないと思って、いろいろ考え始めました。

──その気持ちがサークルを立ち上げるまでに至ったと。

山浦 そうです。僕ひとりで発信しても誰も相手してくれないだろうから、何をしたらいいかなって考えたときに、大学の名前を使えばある程度は相手してくれるだろうし、大学の中の人には届くかなと思ったので、サークルを作りました。

山浦暁斗
山浦暁斗(やまうら・あきと)「大阪大学ラジオの会」前代表。大阪大学在学中。2020年、石井玄氏のツイートに感化され学生サークル「大阪大学ラジオの会」を立ち上げる

石井 今、メンバーは何人ぐらいいるの?

山浦 今は20人弱ぐらいですね。

石井 すごい! いろんな大学の人がいるの?

山浦 今は大阪大学の中だけです。もともとの始まりは「好きなラジオを終わらせたくない」という気持ちで。SNSでシェアして、「こういう番組があるから聴いてください」と拡散するかたちでした。

石井 作るほうじゃなくて、最初はラジオファンのサークルなんだ。

山浦 で、のちのちメンバーから話してみたいという声が出てきたので、自分たちでもラジオをやるようになった感じです。

──サークルのメンバーでは、将来的にラジオでしゃべりたい、ラジオを作りたいと考えている人が多いんですか?

山浦 けっこういろんな層がいて、ラジオ業界に行きたい人もいれば、いろんなエンタメが好きで、そのひとつがラジオという人もいるので、一概にみんながみんなラジオ局を目指すという感じではないかなって思います。

──今後、サークルとしての目標はありますか?

山浦 正直、思いつきで作ってしまったんですが、将来的にはこの会がオススメしているラジオは間違いないなって思ってもらえて、そのラジオを聴く人が増えてくれれば……。それで目標達成って感じですね。

石井 おもしろいなあ。僕は業界内部に向けてあのときつぶやいたんですけど、山浦君のように外部の人がすごい反応してくれたんです。それには驚きと喜びがありました。山浦君のインタビュー(「リスナーインタビュー【57】男性/20代前半/大学生の場合」、ブログ『『ラジオの時間』ですよ』)を読んだときにも思いましたけど、こんな人がいるんだって。業界内で孤立するような発言をしてるだけなのに(笑)。

『アフタートーク』を読んで抱いた想い

この記事を気に入った方はサポートをお願いします。次回の記事作成に活用いたします。

この記事の画像(全15枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

村上謙三久_プロフィール

Written by

村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太