たったひとつのツイートから生まれた、一冊の本と大学サークルの話【ニッポン放送・石井玄×「大阪大学ラジオの会」山浦暁斗】

2021.12.25

『アフタートーク』を読んで抱いた想い

──石井さんの著書『アフタートーク』も石井さんのこのツイートから生まれているんですよね?

石井 僕のツイートがバズっているのをたまたま見た編集の方が「ラジオに変な人がいる」と思ったらしいんです。過去のツイートを追ってみたところ、たまに熱いことをつぶやいているから、「この人に文章を書かせたらいいんじゃないか」と考えたことが発端だったらしくて。

『アフタートーク』
『アフタートーク』石井玄/KADOKAWA/2021年9月15日

──あのツイートからサークルを作った山浦さんの話を聞いて、率直にどう思いました?

石井 うれしいです。あのときは上の世代と仕事をすると温度差がすごかったんですけど、下の世代には僕と近いタイプの人が増えてきていて、学生にも想いが届いている。それはすごくうれしかったです。「やった、仲間が増えた」みたいな(笑)。

当時はこんなに一生懸命やっているのに、誰も一緒になってやってくれないという孤独を感じながら仕事をしていた時期でしたから。もちろん近いところには、仲間がいたんですけど、それが広がらないもどかしさが表れたツイートでしたね。もう2年近く前なんで、客観的になっちゃうんですけど(笑)。

──このツイート以外にも、山浦さんは石井さんから受けた影響は大きいですか?

山浦 そう思います。自分が好きな番組を挙げていったら、石井さんがディレクターの番組ばかりだったんで。

──今日、山浦さんが持ってきた『アフタートーク』にたくさん付箋がついていることからも影響の強さがよくわかります。

山浦 『アフタートーク』は共感だらけというか。

石井 付箋が多過ぎて怖いです(笑)。

山浦氏が持参した『アフタートーク』
山浦氏が持参した『アフタートーク』

──最初に読んだときはどう思いました?

山浦 勝手に石井さんと自分を重ねていたんですけど、本の中にあったように、石井さんは努力をされて、仕事をされているじゃないですか。でも、自分はラジオが好きなはずなのに、ここまで努力しているかと言われると……。だから、なんで自分は努力してないんだって。

石井 いや、だってまだ学生だから(笑)。おもしろいなあ。でも、その気持もわかる。

山浦 共感しつつも、本当にラジオが好きなんだったら、もっと自分も動けよって自分自身に問いかけたりもしました。ただ、ダメ人間なんで、読んだあとは熱くなるけど、それがつづかず、定期的に読まないとなって。

学生のうちにやるべきこと

──山浦さんもラジオ業界志望として、就職活動をされているそうですが、石井さんから見て、この業界で働いていくために必要なことはなんだと思いますか?

石井 後輩からの相談として才能の話をよくされるんですけど、本にも書いているんですが、僕は「才能がなくてもできる」って言っちゃっているんです。逆に言うと、「センスがないからできないんです」を僕の理論って許さないんですね(笑)。「じゃあ、できるまでやればいいじゃん」って発想だから、結局、ラジオが好きな子がいいよねってことになっていて。

ニッポン放送にもそういう人たちが増えてきているので、そういうのは大事だと思います。そういう子が入ってくると一生懸命なんですよね。執着みたいなものもあるので諦めないし。そこが必要な能力で、センスはなくても大丈夫だと思います。もちろん、あったほうが楽なので、あるに越したことはないですけど、やってみないとセンスなんてわからないです。

山浦 学生のうちにやったほうがいいことってありますか?

石井 よく聞かれるんですけど、「ラジオ以外のエンタメをちゃんと観たり、聴いたりしておいたほうがいい」と思います。ラジオしか聴かない人がたまにいるんですけど、それだと働き始めてから話題についていけないんですよ。「このドラマも観てないの?」「このマンガも読んでないの?」ってなるので。それはラジオだけじゃなく、エンタメ業界に入るならみんなそうですよね。テレビだろうと、映画だろうと、出版だろうと。

山浦 ほかのエンタメにアンテナを張るということが僕は全然できてなくて、その話を今日は聞きたいと思っていました。今、聞けてよかったです。

石井 『アフタートーク』にも書いたんですけど、僕には大学にほとんど行かない時期があって、その期間、DVDとかを借りてきていっぱい観ていたんです。もともとテレビがめちゃめちゃ好きで、子供のころ、用事がない日曜日は朝5時半ぐらいから起きて、スケジュールを立てて、夜寝るまでずっとテレビを観ていました。

朝の戦隊ものからアニメにつながって『笑っていいとも!増刊号』(フジテレビ)、『スーパージョッキー』(日本テレビ)みたいにスケジュールが全部決まっていたんです(笑)。平日も家に帰ってきて、夕方から再放送のドラマを観て、『ハッチポッチステーション』や『おじゃる丸』や『忍たま乱太郎』を観て、18時からは『天才てれびくん』(以上、Eテレ)を観るか、テレビ東京を観るかを迷ってた。それで、夜はどれをメインで観るか、新聞のラテ欄をずっと見てました。リモコンを手放さなかったです。

──友達と遊んでいるヒマなんてないですね(笑)。

石井 そういうことをある時期にやっておかないとあとで大変かもしれないですね。みんな観てますから。佐久間(宣行)さんがいい例ですけど、結局インプットがないとアウトプットもないと思います。そこは学生のうちにやれるんだったら、やっちゃったほうがあとで楽です。大人になると、時間取れなくなるんで。まわりを見ても、みんなよくそんな時間があるなっていうぐらいインプットしています。僕はディレクターを辞めてから、そういう生活をしなくなりましたけど。

アニメや映画をラジオでマネする

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