かが屋コントの“設計思想”の片鱗「これはやらない、ってものがはっきりある」加賀翔インタビュー

2021.10.6


方言によって獲得したかが屋の両A面

かが屋
かが屋

——もうひとつ、「スマートなコント師」という評もありますよね。たしかにそれはすごくわかる一方で、また別の魅力を感じるのが方言で演じるコントなんです。スマートなイメージとは真逆の、いい意味での土臭さがあるというか。

加賀 真逆だと思います。そもそも僕ら全然スマートじゃないですから(笑)。岡山と広島のすごい田舎者ですし、賀屋さんなんて電車でつり革持ってたら夏場はずっと脇毛出てますからね!  僕はすごい荒くれのお父さんのいる家で育ってるんでヤンキー気質もありますし、本当はめちゃめちゃイモいんです。ひとつもスマートじゃないのになんかいい感じに思ってもらえてて、得してるというかありがたいですねぇ。

——その両面性がすごく興味深いです。特に『くら寿司』のネタがすごく好きで、あれは絶対方言でしか表現できないんだろうなと。

加賀 ありがとうございます、僕らのなかで一番いいコントだと自分で思ってます。

——そうなんですね。方言のネタは最初からその前提でつくるんですか?

加賀 ネタを考えながら「試しに方言でやってみようか」と言葉を変えてみてできていく場合と、最初から「これは絶対方言だな!」ってネタもたまにあります。『くら寿司』は最初からそうでした。

——『年金』は方言バージョンと標準語バージョンがありますね。

加賀 『年金』のネタに関しては、標準語でやると怒ってるところが本当に怒りすぎてるように聞こえる瞬間があったんです。岡山弁・広島弁はわりといかついんで、方言にしてもどうなんだろう? と思ったんですけど、やってみたらちょっと間抜けさ、かわいげが出てきてギャップも生まれました。それで観てもらいやすくなったところはあると思います。

——方言のほうが感情を乗せやすいものですか?

加賀 僕は正直、方言のほうがやりやすいですね。『くら寿司』のネタの演技は父親のコピーなんですよ。しゃべり方とかを全部真似してやっていて。僕も本当のしゃべり方はああいう感じなんです。だからすごい気持ちが乗っかっちゃって、最初にやったときは自分で泣いちゃいましたもんね、ちゃんと(笑)。

——そう考えると、ふたりの出身地が近くてよかったですよね(笑)。

加賀 ほんっとにラッキーでした。岡山と広島でもちょっと差はあって、そこですらそう感じるってことは、片方が関西弁だったら『くら寿司』は絶対できてなかったと思います。これは本当にラッキーですよね。

——最後に、今年は『キングオブコント』準決勝まで駒を進めています(取材時点)。決勝にいけた場合、2019年以来になりますね。

加賀 そこまでいったらもう、あとは周りの人たち次第なのかなって考えてます。僕らが決勝行かせてもらったときはどぶろっくさんの次の出番で、もうなんの緊張もなかったんですよ。「絶対優勝だぁ!」ってなってたので(笑)。そういう運も絡んでくるんで、自分たちの考えてきたこと、作ってきたものを笑ってもらえて、喜んでもらえたらって、それだけですね。

『芸人雑誌 volume4』では、相方である賀屋壮也のインタビューも掲載。表紙は空気階段、かが屋、蛙亭の3パターンで発売され、サスペンダーズ、ガクヅケ、怪奇!YesどんぐりRPGなど注目のお笑い芸人が多数登場している。


この記事の画像(全6枚)



  • 芸人雑誌volume4_かが屋

    『芸人雑誌 volume4(クイック・ジャパン別冊)』

    定価:1,320円(税込)
    発売:2021年9月25日より順次発売
    ページ数:79ページ

    関連リンク


この記事が掲載されているカテゴリ

ライター_斎藤岬

Written by

斎藤 岬

(さいとう・みさき)編集者・ライター。1986年神奈川県生まれ。編集担当書籍に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」(サイゾー)など。「芸人芸人芸人」「月刊芸..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。