峯田和伸、人生を都合よく表現できる“SNS社会”に問う。「世界と個人の距離が変わってきた」

2021.7.10


ミュージシャンに、現実なんていらないんですよね

峯田和伸

──峯田さんは台本を読まれて、どんどん納得をしていってるかたちでしょうか。

そうですね。納得というか、自分にもそういった思い当たる節はありまして……で、その答え合わせをしていってる感じですかね。

──思い当たる節?

たとえばですけど、今、SNSとかも普及してきて誰でも世界に発信できる。「おはよう」ってだけでも発信する人もいるし、「私がこの世界の中心なんだ」という感覚ってあるじゃないですか。私を見てほしいとか、「いいね」が欲しいとか、自分が生きてるっていうことを世界に発信したい。

それはとてもいいことで、自分以外の人ともつながれるっていうね。いいことではある一方で、SNSがなかった20年前とかに比べて、世界と自分の距離がだいぶ変わってきたと思うんですよね。昔は、世界に見向きされなくてもそれはそれとして生きていけて、自分が見る世界が世界だし、外の世界がどうっていうわけではなくて。

なんだろな。自分が中心っていうか、自分の人生っていうものを、都合よく「はい、武勇伝」とか「私がすごい」みたいなのが多くて、本当にそうなのかな?と思います。出来事を都合よく自分の解釈で考え過ぎなんじゃないのかな、っていう疑問がちょっとあるんですよね。

ただの出来事の羅列でしかないけど、そこに感情こじつけて、で、いいものにしようっていう気持ちの表れだと思うんですけど。でも「自分が主人公で、ちょっとしか関わんなかったあの人は、私の物語の中でいうと脇役ね」みたいな、その目線がちょっと、う~ん。そういうところに三浦さんは「どうなんだろうね」というのがあるんじゃないですかね。

峯田和伸
峯田和伸

──「人生に<ドラマ>を求める現代人へ問う、三浦大輔の衝撃作」というキャッチコピーが、しっくりきました。確かに、SNSが普及する前より、現代人のほうが人生にドラマを求めているのかなと。

僕もそう思います。こじつけが過ぎるっていうところが多い気がする。僕自身もそうですけど、前に比べて、考えるっていうことをしなくなったので。

たとえば、これってどういうことなんだろう?と思ったらすぐスマホ見て検索して、それに書いてあるものをとりあえず頭に入れる。本当はそれがすべてじゃないってことはわかってるんです。でも、それがすべてだと思って受け取るんですね。とりあえず今は前に進もうって。でも、Wikipediaに書いてあることがすべてじゃなくて。それがすべてだと思いがちなのが、僕よりも若い人たちなのかなとも思うんですね。

今世の中で話題になっているコンプライアンスとか、いろんな問題ってあるじゃないですか。20年前だったら通用したけど、今は通用しないとか。それは、全部が全部とは言わないですけど、どっかしらそういう思考停止から来てる幻想ではあると思うんですね。「これはこうだから、絶対あなたが悪い」という考え方になるのが怖いなって。

峯田和伸

──そうですね。「物語」の視点でお話しすると、芸能人の方にはWikipediaなどの情報サイトも多々ありますし、本人の発信も含めた情報過多な世の中で、一般人より芸能人のほうが物語があるように感じてしまうこともあります。

僕個人的には、一般の方よりすごい人生を歩んできたなとか、すごいストーリーがあったなという実感はないです。でも、自分から言う人もいると思います。ミュージシャンでも、有名人でも、「俺すごいことあったんだよね」と言う人は。でも、本当にそうかな?と思います(笑)。

──先ほどもおっしゃっていた、「それだけがすべてじゃない」ということでしょうか?

あったとしても、言わなくていいと思います。否定するわけじゃなくて。「俺こんなことあってさ~」といっぱい言ったほうが自分の活動にプラスに働くのであれば、言ってもいいと思うんですよ。でも、僕の場合はあんまりプラスになると思えないので、自分からは言わないです。僕が、昨日タピオカ飲んで、そのあとラーメン食べに行って……って、それを毎日言ったところで、ミュージシャンの神秘性みたいなものがなくなりそうで。

たとえば、僕が好きなミュージシャンとかって、何食ってようが知りたくないんですよね。僕の勝手なイメージでヒーローとして作られてるんで、「えぇ! あの人辛いもの苦手だったんだ」とか、そういうことを知ったらたぶん僕は幻滅するし。この人はこういう曲を作るし、こういう恋愛をしてきたんだろうなって、勝手に想像するのが楽しいじゃないですか。その歌が本人の体験談だったとしても、嘘だとしても、勝手に、この人はこういう体験をしてんだろうなって楽しむのがおもしろい。だから、現実なんていらないんですよね。

峯田和伸
峯田和伸

──ミュージシャンの方もそうですが、芸能人とファンの距離感が近くなっているように感じます。SNSでコメントができて、そのコメントを見てもらえるかもしれないなんて、昔では難しいことだったと思います。自分の思っていることや言葉を、ファンレターではなく、スマホひとつですぐに伝えられて、運がよければ返信してもらえることもあって。神格化という部分がだいぶ変わってきたなと。

そうでしょうねぇ。神格化する必要がなくなったんでしょうね。距離で言うと、憧れているあの人が、意外と私たちと変わんないじゃん!と思える喜びってあるじゃないですか。それで収まればいいんですよ。でも、それが「この人、私たちと同じはずなのにこんなことしちゃダメでしょ」ってどんどん発展するのが怖いんです。近いがゆえの、排他的発想になるのがイヤなんです。

峯田和伸

些細なことを、発信するか、しないかってだけ


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佐々木 笑

(ささき・えみ)1996年生まれ。宝島社ムック局編集部のち、フリーランスの編集者・ライター。笑と書いてエミ読みます。本名通りお笑い大好き人間に育ちました。『フワちゃん完全攻略本』『#麒麟川島のタグ大喜利』『KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!』(すべて宝島社)など。アイコンは川島さんに描いていただ..

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