悲しいときに悲しいと言える環境を
──お話を聞いていて感じるのは、aikoさんはいつまでも子供のようなピュアな感性を持ち続けている方なんだなっていうことで。その生き方は多くの人の憧れになり得るものだと思うんですよね。
私はどうでもいいことすらも楽しむためにはどうしたらいいかなって考えながら、極力すべてのことを冗談のように過ごしていきたいんですよね。いつもふらふらしてるんやけど、でも音楽だけはちゃんと向き合うっていう、そういう人生のかたちが私はおもしろいなって思っているんやと思います。もちろんその中でダメ出しをしたい部分はめちゃくちゃたくさんありますけどね(笑)。
──日々を楽しく、冗談のように過ごすことって、実はすごく難しいことでもあるような気がするんですよね。わかってはいても、いろんなことに悩み、落ち込んでしまう人も多いと思うので。
私も落ち込むことはめっちゃありますよ。基本、常にうしろ向きやから、そこも治したいところではあるんですよね。私、家にいるときに“ひとり情熱大陸”みたいなことをめっちゃやったりすることがあって(笑)。
──カメラが密着してるテイで、そのときの状況をナレーションしてみたり(笑)。
そうそう。「aikoは今、ピリついた状況のようだ」みたいな。で、そういうピリついていたり、しっとりしたようなモードのときにあえて曲を書いてみたりすることもあるんですよ。もしかすると、そういうチャンネルは人よりも多いかもしれないです。
──と言うことは、たとえネガティブな感情であっても、それをムリに前向きにするのではなく、曲を生み出すパワーに変えているところもある?
どうなんやろう? 私の場合、死ぬほど落ち込むことってほぼ音楽のことが理由なんですよ。で、音楽で落ち込んだら、いい曲を作って楽しく歌うことでしか絶対に癒えないんです。誰かから「大丈夫だよ」って励ましてもらったとしても、自分がちゃんとしてなければ絶対に抜け出すことはできない。
だからこそ、常にいい状態で曲を作れる体調にしておくために、日々を楽しく過ごすようにしているところもあるんだと思いますね。
──なるほど。いい曲、いい歌のためという絶対的な目的があるからこそ、日常的なネガティブな感情についてはすべてポジティブに変換できるところがあるのかもしれないですね。
そうですね。あとは人と話すことも大事やなって最近すごく思う。悲しいことがあったら、それをちゃんと悲しい気持ちとして伝えられる人がいるのはすごくありがたいことやと思うんですよ。今のスタッフさんたちは、私のいろんな気持ちに同じように向き合ってくれる方たちばかりなので、ほんまにいい環境なんですよね。
だからこそ、22年目にしてよりタガが外れてやりたいことがいっぱい出てきたし、いろんなことをより前向きに捉えられるようになっているんやと思います。
※『クイック・ジャパン』vol.154では、aikoによる1万字以上のロングインタビューを掲載。ここでは公開できなかった「コロナ禍との向き合い方」「理想の自分」「将来のビジョン」などをじっくり語っています。