「矢部くんの気持ちを理解してなかった」『ナイナイANN』作家・小西マサテルが振り返る26年



「岡村くんがいない焦燥感があった」

『ナインティナインのオールナイトニッポン』放送の様子
『ナインティナインのオールナイトニッポン』放送の様子

岡村くんの当時の“体調不良”のことを「パッカーン」とか「ブーム」と表現するのは、どっちが発明したのかはわからないですけど、そうやって笑いにしていったのは矢部くん。岡村くんが復帰して2週目くらいの早い段階で、ちょっとピントがズレたことを言ったときに「あんた、まだ治ってないんちゃいますか?」ってツッコんだんですよ。爆笑だったんですけど、あれは勇気がいるツッコミですよ。矢部くんじゃないとできない。

休養中は矢部くんがひとりで番組をやってましたが、それはそれでひとつのかたちになっていておもしろかったと思います。当時、サッカー日本代表の監督だったザッケローニをもじった、「フザッケローニ」っていう矢部くんならではのコーナーができたり。

でもみんなどこかで、岡村くんがいつ戻ってこられるのか、それとも戻ってこられないのかみたいな焦燥感はあったと思います。これは想像なんですけど、矢部くんは腹を括ってたと思います。自分がお笑いの世界に誘ったから責任を取るって。あの試練で、ふたりとも急速に大人になった気がしますね。

「矢部くんの気持ちをまったく理解してなかった」

そしたらほどなくして矢部くんが結婚して、私生活では“究極のコンビ格差”が生まれた。よりおもしろい関係になったなあと思った矢先、矢部くんが番組を卒業するとなって、当時の僕は正直、「なんで?」という気持ちしかなかったんです。最後にスタッフから寄せ書きを贈ったんですけど、心に引っかかりがあったので、「なんで今ひとりで船を降りるのか疑問です。ただ卒業が決まった以上は今後の活躍を陰ながら見守りつづけます」と書いてしまったんです。

今思うと、まったく彼の気持ちをわかってなかった。矢部くんの心情を慮れば、ダブルパーソナリティのひとりがものすごい覚悟を持って辞めると言った以上、全員で一度船を降りるという選択肢もあったはずなんです。矢部くんは「僕辞めるんで、岡村さんも辞めてください」なんて口が裂けても言わない人間ですけど、少なくとも岡村くんとスタッフを交えて検討すべきだったんじゃないかなと思います。

矢部くんはしゃべるときは徹底的にしゃべりますけど、本当の根っこのところが「ここまで言うたんですから、あとは気づいてくださいよ」って、皆まで言わないタイプ。相当悩んで辞めるという決断をしたと思うんですよ。慰留はしましたけど、そうではなくて「わかった。じゃあ、みんなで一度辞めよう」という考え方も、あってよかったはずなんです。

インタビュー後編

小西マサテル(こにし・まさてる)
香川県高松市出身。明治大学英米文学科卒。漫才コンビ「チャチャ」として『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ)『冗談画報』(フジテレビ)などに出演。『ラ・ママ新人コント大会』のレギュラー出演をきっかけに渡辺正行に師事し、放送作家に転身。

現在、『ナインティナインのオールナイトニッポン』『徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー』『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン[email protected]:COM』『高嶋ひでたけ・森田耕次のキニナル・サタデー』『鶴光の噂のゴールデンリクエスト』『明石家さんま オールニッポン お願い!リクエスト』(いずれもニッポン放送)などの構成を担当。『ナンチャンお気楽ライブ』など、舞台の構成・演出も手がける。

自身がプロデュースするイベント『落語記念日』では、レギュラーの橘家圓十郎、まんぼうと共に古典落語を披露。著書に『キン肉マン2世 SP 伝説超人全滅!』(集英社)など。


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    【総力特集】ナインティナインの30年

    ナインティナインが結成されたのは1990年。
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    数々の節目と困難を乗り越え、芸歴30年を迎えた「今」から新たなステージを目指す彼らは、どんな笑いを届けてくれるのか? どんなワクワクを見せてくれるのか?

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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