岡村隆史が語る、相方との30年(1)「誰かと競い合うのは40歳でやめたんです」

岡村隆史インタビュー【総力特集】ナインティナインの30年

高校を卒業して大学への進学を考えていた、ある日。岡村隆史はサッカー部の後輩だった矢部浩之に誘われ、まったく選択肢になかった「お笑い芸人」の道を歩むことになる。

それからちょうど30年。無我夢中で駆け抜けて、体を壊しても復活し、「土曜8時のヒーロー」としてお茶の間に愛された。時が経ち多くの人気番組は終わったが、つづく番組もある。いつしか相方と会うことは少なくなったが、それでもナインティナインはつづく。

岡村隆史が、走りつづけた30年間を振り返り、これからのナイナイを考える。

※取材は結婚発表前の2020年9月下旬に行いました。


賞レースに命を懸ける芸人のようにはできない

岡村隆史(おかむら・たかし)1970年7月3日生まれ、大阪府出身

――先日『ぐるナイ』で15年ぶりにコントを披露しましたが、手応えはいかがでしたか?

岡村 正直、全然やりたくなかったんですけど(笑)、なんでかわからないですけど、スタッフさんってみんなネタやらせたがるんですね。『めちゃイケ』のときはテツandトモのパクリネタで逃げましたけど。

もうネタで勝負してないのでね……『キングオブコント』とか『M-1』とかが盛り上がってるなかで、みっともないことやりたくないなあっていうのが本音やったんです。でも、どうしてもやってほしいって言われたので……。

お客さんが入ってるわけでもないし、観てるのはスタッフさんばっかりやったんで、忘年会でネタやらされてるみたいな空気になってしまったんですけど(笑)。タモリさんに観ていただいて、「俺は好きだよ」って言ってもらって、あれですべて成立させていただいたなっていう感じでしたね。

――岡村さんがやりたいネタは別にあったそうですね。

岡村 僕がやりたかったのは、8回目の『ナイナイライブ』でやった20分以上あるコント。弁護士なんですけど、盗撮容疑で捕まったおっさんがのらりくらり逃げようとして息子と会話するっていうネタ。ちょっとあれはテレビじゃ無理やなって。

2〜3日前から久々に、変な緊張がありましたね。なんでこんなことせなあかんのやろ、ほかにおもろい人おるで、って思っちゃいました。

9月10日放送『ぐるナイ』での岡村隆史(日本テレビ提供)
9月10日放送『ぐるナイ』より(日本テレビ提供)

――準備はどれくらいされたんですか?

岡村 結局2日くらいですかね。当日ちょっと合わせて、もういけるかなって。基本、ふたりとも稽古キライなんで(笑)。昔、1回目の『ナイナイライブ』のときに稽古し過ぎて本番では飽きてしまって、楽しくやれなくなってしまったんです。全部ガチっと固めて一言一句やってしまうと、自分らが飽きてしまう。もうなんとなくいけるよなってなったら、あとはフワッとさせておく。

これは別にテクニックとかじゃなくて、自分らが普通にちょっと笑ってまいそうな感じとか、ほんまにイラッとするような感じの部分を残しとくほうがいいタイプなんです。みっちりやらないでお互いに「大丈夫やんな?」「おう」って感じで。

――やり終えたときは充実感みたいなものはありましたか?

岡村 「終わった終わった! ちゃんと終わったで! あとはタモさんとしゃべろう!」っていう(笑)。今、みんな賞レースに命懸けてやってんねんなあと思うと、大変やなってほんま思いますよね。僕らは正直、ウケようがスベろうが自分らでフォローすればいいんですけど、やっぱり審査員の方々がいてお客さんがいてネットの人たちがいてとなったら、そら大変なことですよ。

屈辱だった「ボケるなら手を挙げろ」

9月10日放送『ぐるナイ』での岡村隆史(日本テレビ提供)
9月10日放送『ぐるナイ』での岡村隆史(日本テレビ提供)

――『ぐるナイ』は26年つづいていますが、岡村さんにとってどんな存在ですか?

岡村 『めちゃイケ』は“「笑い」を教えてもらう学校”みたいな部分があったんですけど、『ぐるナイ』は“「テレビ」というものを教わる場”でしたね。『天然素材』からやらしてもらって、みんなまだあっちこっちでボケてギャーギャー言うてるなかで、総合演出の方に「カメラが向いてないところでボケたってしょうがないんだよ!」って怒られたり(笑)。

すごい屈辱的なことも言われましたよ。「ボケるんだったらカメラ向けるから手挙げろ!」って。最初は「ゴチ(になります)」も、ただごはん食べてるだけやと思ってたんですけど、「値段を当てる」っていうのはやっぱりテレビ的やったし、テレビってこういうことなんですよっていうのを『天然素材』から始まって、『ぐるナイ』で教えてもらった気がしますね。

ハンディ(カメラ)1個でいろいろやるのも『ぐるナイ』のほうが早かったですからね。ハンディさんとのやりとりとか、どうやったらおもろなるかって教えてもらったのは『ぐるナイ』のほうが先。『めちゃイケ』で、うしろ下がったり前出たりするのも、実は『ぐるナイ』で学んだこと。そこからよりスキルアップさせてくれたのが『めちゃイケ』でしたね。

もしも「お笑いの教科書」があるなら、そこに載りたくて


この記事の画像(全11枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

てれびのスキマ

Written by

てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

⾃⾝の思想をカタチにする「FLATLAND」

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

「BiSH」元メンバー、現「CENT」

アーティスト

セントチヒロ・チッチ

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)

最新ニュースから現代のアイドル事情を紐解く

振付師

竹中夏海

平成カルチャーを語り尽くす「来世もウチら平成で」

演劇モデル

長井 短

子を持つ男親に聞く「赤裸々告白」連載

ライター・コラムニスト

稲田豊史

頭の中に(現実にはいない)妹がいる

お笑い芸人「めぞん」「板橋ハウス」

吉野おいなり君(めぞん)

怠惰なキャラクターでTikTokで大人気

「JamsCollection」メンバー

小此木流花(るーるる)

知らない街を散歩しながら考える

WACK所属「ExWHYZ」メンバー

mikina

『テニスの王子様』ほかミュージカル等で大活躍

俳優

東 啓介

『ラブライブ!』『戦姫絶唱シンフォギア』ほか多数出演

声優

南條愛乃

“アレルギー数値”平均の約100倍!

お笑い芸人

ちびシャトル

イギリスから来た黒船天使

グラビアアイドル/コスプレイヤー

ジェマ・ルイーズ

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。