矢部浩之が語る、相方との30年(1)あのとき感じた「ナインティナインを守る」という本能

矢部浩之インタビュー【総力特集】ナインティナインの30年

今からちょうど30年前、矢部浩之はまだ誰も知らないサッカー少年だった。高校卒業後の1990年、サッカー部の先輩だった岡村隆史を誘ってお笑い芸人を目指し、わずか4年後には『ぐるぐるナインティナイン』と『ナインティナインのオールナイトニッポン』が始まった。30年が経った今もなお、誰もが知る「やべっち」として活躍しつづけている。

その隣には、常に相方がいた……わけではなかった。

相方が休養すれば、ひとりで冠番組を守った。自分が卒業した番組を、相方はひとりでつづけた。しかし相方の失敗には、すぐに駆けつけて行いを正した。

矢部浩之が、自身の30年間とこれからのナインティナインを考える。


『ぐるナイ』しかなかったので、とても大事な番組なんです

矢部浩之(やべ・ひろゆき)1971年10月23日生まれ、大阪府出身

――結成30周年記念として、『ぐるナイ』(9月10日放送)で15年ぶりにコントをした手応えはいかがでしたか。

矢部 コント、やりましたねぇ。うーん、なんやろ……でもまあ、昔やってた『ナイナイライブ』のためにガチで作ったコントなんですけど、やっぱり自分らの番組の中で企画としてやるので、ホントのガチ感はなかったですね。タモリさんも客席で観てはるし、やっぱり“企画”って感じで。

――タモリさんが観ているというのはどんな感覚でしたか?

矢部 コント中は一切タモリさん見られなかったですね(笑)。でもスベったとしてもタモリさんがいて、コントのあとにトークがあるから成立しますよね。「スベってたねー」って言われても救われますから。

――どれくらい準備されたんですか?

矢部 合わせたのは2日くらいかな。昔のVTR観て、そのままだと長過ぎるからテレビ尺に短くして。短くしたといっても14分くらいでしたね。ライブのときはだいぶ遊びを入れてたんですけど、そういう余分なものは全部なくしてキモの部分だけ残した感じ。

最初はやりたいコントがそれぞれ違ってたんです。それでスタッフが「僕はこれが一番おもしろいです」っていう助け舟をくれて、僕もやりたいと思ってた『結婚相談所』をやることになりました。

――『ぐるナイ』は約26年つづいています。矢部さんにとってどんな存在になっていますか?

矢部 コンビの番組が今、地上波では『ぐるナイ』だけなんでね……。『めちゃイケ』をやってたときはうまくバランス取れてると思ってたんですけど、今は『ぐるナイ』が“母体”じゃないですかね。ラジオも卒業してましたから。『ぐるナイ』しかなかったので、とても大事な番組ですよね。よくつづいてるなって思います。

たぶん、「ゴチ(になります)」を発明してなかったら『ぐるナイ』はないと思うんです。だから『ぐるナイ』というより「ゴチ」という番組って認識が、おじいちゃんおばあちゃんにとってはあるんじゃないですかね。本当は『ぐるナイ』の中の1コーナーなんですけど。

クビになっても出ないといけない、複雑な状況

9月10日放送の『ぐるナイ』で15年ぶりにコントを披露したナインティナイン
9月10日放送の『ぐるナイ』で15年ぶりにコントを披露したナインティナイン(日本テレビ提供)

――「ゴチ」を始める当初、企画内容を聞いてどう思いましたか?

矢部 当時は、ただの1コーナーっていう認識で。国分太一と出川(哲朗)さんがいて、第1回目のゲストが野口五郎さんで15〜20分くらいのコーナー。それで寿司食べて、僕負けたんです。1万5千円くらい自腹で、オンエアでも残ってるらしいんですけど「もう1回やろ!」って言ったんですって。それでプロデューサーが、あれだけ本気になるならって、2回3回とつづいたって聞きました。

数年前に僕がクビになってるときのロケで、プロデューサーが「同じことしてるのによくつづいてるなあ」って話してましたよ。

――こんな看板企画になるとは思っていなかったですか?

矢部 まさかですね。当時、体張ったり何かしら身体的にも精神的にもキツいロケがほぼ毎回だったんですけど、「ゴチ」は食べられるし、勝ったらタダやし。なんだったら“いいほう”の企画でしたね(笑)。

――芸人さん的にはグルメ企画に抵抗のある方もいらっしゃると思いますが。

矢部 でもそんなに意識してなかったです。若さなのか勢いなのか……。当時は応援団の変なヅラとか被ってたのがよかったのかも。食レポというより、食べる番が来たら、まわりからイジられるみたいなノリでやってましたね。

――「ゴチ」の場合「クビ」があるので、レギュラーにもかかわらずほとんど出られないという状況もあり得ますよね。

9月10日放送『ぐるナイ』での矢部浩之
9月10日放送『ぐるナイ』での矢部浩之(日本テレビ提供)

矢部 僕、一番クビになってますからね(笑)。あれって実は複雑なんです。ほかのメンバーはクビになったらほんまに出られなくなるけど、僕らふたりだけクビになってもロケ行ったり何かしら出てるんで。「ナイナイはいいじゃないですか!」みたいな(笑)。

でも、一番クビになってるからわかるんですけど、戻ってきたらちょっと空気変わってるんですよ。慣れるまで時間かかる。あとツッコミの立場としてはクビになったというキャラを引っ提げないとダメなんで、バランスが取りにくい。だから「ゴチ」はいつからか、僕はツッコミじゃないんだなと思うようになりました。歴史自体がキャラクターになっていくのかなって。

――「ゴチ」ではバラエティ慣れしていない俳優さんなどもレギュラーになっています。

矢部 みんなめちゃめちゃがんばってくれるんですよね。昔はドラマとかちょこちょこ出させてもらいましたけど、そういうときの自分の精神状態を考えたら、「まぁそうか」と思います。やっぱり違う畑ってがんばるんですよ。迷惑かけたくないなって。でもこっちとしては「普通でいてて大丈夫すよ」なんです。普通にしてもらってると、なんか出てくるからそれを拾うというか、そういう意識でいます。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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