ナインティナイン「実力不足のアイドル芸人」から「土曜8時のヒーロー」へ

ナインティナインの30年


“東京”という見えない敵と戦った

「東京お笑い死闘篇・前編 お疲れ様でした」

2017年11月4日――1996年10月19日から約21年つづいた『めちゃ×2イケてるッ!』の終了が正式に発表された。その際に今田耕司から岡村隆史に届いたLINEの文面である。

それまでのナインティナインの芸能人生は、まさに「東京お笑い死闘篇」と呼ぶに相応しいものだ。

ナインティナインは、“特殊なルート”でブレイクした。ネタが高く評価されたわけでも、大阪の番組で実績を積み人気を得て上京したわけでもない。“最終学歴”はNSC中退。授業料を滞納し、事実上退学をさせられたふたりは、それでも心斎橋筋2丁目劇場に拾われる。

それから間もなく、ダンスとお笑いを融合したユニット「吉本印天然素材」のメンバーに抜擢。「天素」は、すぐに東京進出を果たし、アイドル的人気を博していく。

芸もないのに大阪から出てきた、ポッと出のアイドル芸人――。

事実はどうあれ、東京のお笑いファンの間には、そうした強固な先入観がこびりついてしまった。だから、ナインティナインは、“東京”という漠然とした見えない敵と戦うことになってしまったのだ。

岡村が“裏の努力”を見せ、矢部がツッコむ

彼らはただ、テレビのお笑いが大好きな少年だった。

高校時代の岡村と矢部
高校時代の岡村と矢部

だからこそ、「ポッと出のアイドル芸人」という自分たちの境遇は、誰よりも自分たちが許せなかったのだろう。“反抗期”になり「少年ナイフ」と化し、まわりも自分も傷つけた。

1996年ごろの岡村隆史
1996年ごろの岡村隆史

それでも岡村隆史の小さくてコミカルな風貌は、テレビに愛された。その傍らで「吉本のディカプリオ」と呼ばれた矢部浩之が常にニヤニヤと笑っている。ふたりのバランスは、あまりにもポップでわかりやすかった。

1996年の矢部浩之
1996年の矢部浩之

そうしたなかでナインティナインは『めちゃイケ』に辿り着いた。「土曜8時のヒーロー」の系譜に連なることになったのだ。

コント55号、ザ・ドリフターズ、ビートたけし、明石家さんま、ウッチャンナンチャン……。それはテレビの歴史に燦然と輝く天才たちが立ってきた場所だ。もちろん岡村隆史も、小さな身体に抜群の運動神経という天賦の才を持った芸人だ。けれど、彼らは決して「天才」ではなかった。

そこで彼らが選んだのは、常軌を逸するほどストイックに努力する姿を見せることだった。“裏の努力”を見せるのは、それまでの芸人観からはあり得ないもの。

だが、岡村がストイックに努力するのを矢部が「ナニしてはるんですか?」とツッコめば、その姿が笑いにつながった。そこにふたりの特異性がある。


人生の節目は常に、カメラやマイクの前にあった

ラジオ『ナインティナインのオールナイトニッポン』では、「お茶の間の人気者」な存在とは裏腹の、複雑な内面が毎週語られた。『ぐるぐるナインティナイン』では、『めちゃイケ』で見せるストイックさとはまた違う、より「ポップでおもしろい」ナインティナインの側面が描き出された。

「奇跡を起こす男」として期待を一身に背負い、常に矢面に立ってきた岡村。その岡村と絶妙な距離を取りながら、さりげなく背中を押す「奇跡のポジション」で支えつづけた矢部。

ただ、テレビのお笑いが大好きな少年だった。そんな彼らがそのまま、テレビのど真ん中で戦っている。それはテレビっ子の夢を体現しているかのようだ。

ナインティナインはテレビの申し子なのだ。

喜びや苦しみ、反抗、結婚、出産、病気からの復活、人気番組の終了、ラジオでの発言……その人生の節目は常にカメラやマイクの前にあった。人生まるごと、ドキュメントとしてエンタテイメントに仕立て上げた。

だからこそ、ナインティナインは何度となく危機が訪れても、そのたびに強くなって帰ってくることができるのだ。


『QJWeb』では、結成30年を迎えたナインティナインを総力特集。矢部・岡村へのインタビュー、彼らを熟知する関係者への取材を通し、激闘の30年間と、これから始まる「ナインティナインの第2章」を考える。

『ぐるナイ』でナイナイ15年ぶりのコントを披露!

9月10日(木)19時からの『ぐるナイ』(日テレ)は、ナイナイ結成30年の「お祝いゴチ」を開催。ゲストに博多華丸・大吉、サプライズで新垣結衣も登場する。

さらに、ナインティナインが15年ぶりにコントを披露。超VIPゲストとしてタモリもお祝いに駆けつける。

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    ナインティナインが結成されたのは1990年。
    それから30年。岡村は50歳、矢部は49歳になる。ふたりあわせて、99。

    数々の節目と困難を乗り越え、芸歴30年を迎えた「今」から新たなステージを目指す彼らは、どんな笑いを届けてくれるのか? どんなワクワクを見せてくれるのか?

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てれびのスキマ

Written by

てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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