美談ではない「ナイナイの歴史」。<再結成>と<100にならないおもしろさ>を作家・小西マサテルが語る


ナインティナインの苦楽を、誰よりも近くで見てきた人物がいる。

『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で作家を務める、小西マサテル。1994年の番組1部昇格から参加して26年、ほぼ毎週のように顔を合わせ、ふたりの変化と進歩を間近で見つめてきた。

結成30周年を迎えたナインティナインと、2020年5月から再スタートを切った番組の歴史と魅力を、小西が語る。

インタビュー前編


ネタ帳が、ようやく1冊まとまったときだった

ナインティナインと小西マサテル/写真=本人提供

『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』になって約5年半、彼はひとりで番組をつづけてきた。不器用なだけで、彼ほど女性に対して紳士的で優しい人はいません。それだけによけい、自分が言ってしまったことに落ち込んで憔悴し切っていました。

ひとりでやるようになってから、(ビート)たけしさんや(笑福亭)鶴瓶さんに倣ってネタ帳をつけ始めていたんです。ものすごく分厚いノートなんですけど、それがようやく1冊終わったところでした。彼が「ノートを最後まで書くのって大変ですね」と言ったときの、はにかんだような、うれしそうな顔は忘れられません。

おそらく彼にとっては宝物だと思います。でも、新しく使い始めた2冊目のノートには、ああでもないこうでもないと謝罪の言葉をビッシリと書いていた。あんなに切ないことはなかった。もちろんあの問題は、僕たちスタッフにも責任がありますから。

あの日の放送を「過ちをコンビ間の美談に落とし込んでる」という意見があったじゃないですか。それもひとつの考え方なんで、どう感じてもらおうと自由ですけど、僕はそうじゃないと断言したい。あの放送で世論がどう動くかなんて、あの時点では誰もわからなかったからです。

矢部くんは本音をさらけ出すことでナインティナインを守ろうとしたと言ってますけど、ひょっとしたらあれで逆に空中分解したかもしれない。だからあれはけっして美談じゃないですよ。ナインティナインの“歴史”なんです。ナインティナインを守るために、もしダメだったらそれまでだと腹を括った結果が、あの言葉なんです。

岡村くんの泣き声を、初めて聞いた

矢部くんが登場した放送を受けて、岡村くんと徹底的に話し合いました。僕が最初に聞いたのは、「ラジオをつづけたいですか?」ということ。これだけ世間の反発を受けて、それでもつづけて楽しいのかな?という疑問があったから。そしたら岡村くんはびっくりしてました。「なんでそんなこと聞くんですか? やりたいですよ。ずっとやっていきたいです」って。であれば、一緒にやる相手は矢部くんしかいないというのは共通認識でした。

本来であれば出演オファーをするのはスタッフの仕事です。けれど、今回ばかりは岡村くんから直接頼むのが筋やと思うと言ったんです。「わかりました。僕からかけてみます」と。電話が終わったらどうだったか連絡してくれって言って、すぐにかかってくると思ったら1時間くらいかかりました。

その電話で、しばらく無言なんです。それで「相方、やってくれるって言いました」って。泣いてました。彼の泣き声を聞いたのも初めてですし、今後もないと思います。これも美談じゃないですよ。ナインティナインの歴史なんです。

また矢部くんも泣かせるようなことを言うんですよ。『オールナイトニッポン』の歴史で、コンビのうちひとりが辞めて、そのあとふたりで復活するのはかつてないことなんですって伝えたことがあったんです。そしたら矢部くんが「小西さん、僕ね……『かつてない』って言葉、大好きなんですよ」って。こんなカッコいいセリフあります?(笑)

「完成しない<99>やからおもろいんです」

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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