美談ではない「ナイナイの歴史」。<再結成>と<100にならないおもしろさ>を作家・小西マサテルが語る


有吉がつけた矢部のあだ名は「カラオケバカ」

岡村隆史
打ち合わせ中、ノートにメモを取る岡村

『ナインティナインのオールナイトニッポン』が復活するにあたって、とりあえずコーナーを作らなあかんと、いろいろ考えてコーナー案をふたりに送ったんです。普段、彼らは返信が早いほうなんですけど、休みの日のはずなのにずっと返ってこない。4、5時間経ってようやく矢部くんから「あとでゆっくり読ませていただきます。実は……今、相方の家にいてます(笑)」って仰天するような連絡が来て。

ふたりだけで話し合うナインティナイン会議が開かれてたんですね。その内容はあえて聞いてないです。いつかふたりが話すときが来るんじゃないですかね。

ちなみにそのときに送ったコーナー案の中に「桑田ヤベスケ」もあったんですけど、矢部くんはわりと早い段階で「ヤベスケは見えますね〜(笑)」って。昔、有吉(弘行)くんが矢部くんにあだ名をつけたことがあるんですけど、それが「カラオケバカ」(笑)。ほんとにカラオケ大好きなんですよ。

サザンオールスターズってめちゃめちゃ曲が多いじゃないですか。「夏のサザン」みたいな括りで、ヤベスケならどれを歌えますかねって50曲くらいリストアップして渡したら、ほとんど全部に○がついてました。矢部くんは基本ミステリアスな男なんですけど、ひとつだけ断言できるのは「カラオケバカ」だっていうことです(笑)。

土砂降りからの「再結成」

矢部くんがレギュラーとして戻ってきたその当日に「自分に気ぃ遣うのやめてください」って最初に言ってましたね。レギュラーが始まってから、僕はふたり体制の番組のかたちを早く作らないといけないと、ちょっと前のめりになってたんでしょうね。4回目くらいのときに、矢部くんから「小西さん、もうちょっとゆっくりでええんちゃいますか?」みたいなことを言われたんです。

何度も言うように彼は皆まで言わない男で、これまでそういうことを言われたことがなかったからちょっと戸惑ったんです。

それで鍛冶(翔太)マネージャーに相談してみたんです。彼は岡村くんが「究極のイエスマン」ってあだ名をつけるくらい優しくて常にニコニコしてるんですけど、そのときは真顔で僕の目を見て「小西さん、それはシンプルに岡村さんの体調を気遣ってのことだと思います」とキッパリ言われて、ハッとしました。矢部浩之はスタッフの誰よりも全体を見てたんですよね。

週に1回のラジオをコンビの片方が辞めたっていうのは、「≒解散」くらいのことじゃないですか。だから、今回の意味合いとしては「再結成」だと思ってます。雨降って地固まると言ってくれる人がいて、ありがたい話なんですけど、僕から言わせるとちょっとニュアンスが違う。確かに土砂降りやったんですけど、地は固まってない。というか、固まらせたくない。

聴いてくれてるリスナーのみなさんは、肌で感じてると思うんですけど、今、ふたりのトークはどんどんおもしろくなってきてます。笑いのパターンも増えてきてるし、人生経験を経て昔よりも話の幅も広がってきてる。

「完成しない<99>やからおもろいんです」

これは大昔の話ですけど、ナインティナインが若手としてブレイクしたときのマネージャーの河内(俊昭)さんが「まわりの芸人を見てください。ナインティナインみたいなコンビ、どこにもいないんじゃないですか」と言ったことがあるんです。今こそ、本当にそうやと思ってます。30周年超えてアラフィフで、こんないろんなことあるコンビってほかにないでしょ。もう師匠クラスの年ですよ。

ふたりの仲のよさっていうのは時代によってすごく振幅があって。コントのほうに傾倒することもあれば、バラエティやMC、お互いのピンの仕事に傾倒したり、常に流動的。だから仲がいいと言っても「100」にはたぶんならないんですよ。逆に、仲が悪い時代も絶対に「0」ではなかった。仲のよさでいうと今は「99」まで来てるんじゃないですか?

でも「0」と「100」がないのがナインティナインで、完成しない「99」やからおもしろい。断言しておきたいんですけど、ナインティナインの底力に、世の中が刮目するときっていうのがやってくると思うんです。そして、それはもう、ごく近い将来やと思います。

小西マサテル(こにし・まさてる)
香川県高松市出身。明治大学英米文学科卒。漫才コンビ「チャチャ」として『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ)『冗談画報』(フジテレビ)などに出演。『ラ・ママ新人コント大会』のレギュラー出演をきっかけに渡辺正行に師事し、放送作家に転身。

現在、『ナインティナインのオールナイトニッポン』『徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー』『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン.TV@J:COM』『高嶋ひでたけ・森田耕次のキニナル・サタデー』『鶴光の噂のゴールデンリクエスト』『明石家さんま オールニッポン お願い!リクエスト』(いずれもニッポン放送)などの構成を担当。『ナンチャンお気楽ライブ』など、舞台の構成・演出も手がける。

自身がプロデュースするイベント『落語記念日』では、レギュラーの橘家圓十郎、まんぼうと共に古典落語を披露。著書に『キン肉マン2世 SP 伝説超人全滅!』(集英社)など。

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  • ナインティナインの30年

    【総力特集】ナインティナインの30年

    ナインティナインが結成されたのは1990年。
    それから30年。岡村は50歳、矢部は49歳になる。ふたりあわせて、99。

    数々の節目と困難を乗り越え、芸歴30年を迎えた「今」から新たなステージを目指す彼らは、どんな笑いを届けてくれるのか? どんなワクワクを見せてくれるのか?

    矢部・岡村へのインタビュー、彼らを熟知する関係者への取材を通し、激闘の30年間と、これから始まる「ナインティナインの第2章」を考える。

    【総力特集】ナインティナインの30年


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