北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)【第2回】ロック雑誌の中に「声」を探していた

2020.5.16

カウボーイとインディアン

――片岡義男さんは当時『ロックの時代』 *17 (晶文社)というロック・アンソロジー集を翻訳してましたね。珍しかったんですか、ああいう本が。

北山 珍しかったですよ。ロックの評論を載せるような雑誌って、ほんとになかったし。『クロウダディ!』とか、いろいろ選んでたね。『ヴィレッジ・ヴォイス』 *18 とか。片岡さんは『ヴィレッジ・ヴォイス』が好きだったみたい。俺はやっぱり、自分がアメリカ行ったときに、片岡義男さんが見たアメリカと、北山耕平が見たアメリカというのが、対極にあるという認識を持ったね。自分は、「ロンサム・カウボーイ」 *19 じゃなかった。結局、やっぱり、「アメリカ・インディアン」のほうに行っちゃったという感じで。インディアンとカウボーイと分ければね。

――片岡義男さんと北山耕平さんの差異ということを考えてみたんです。どこが違ってるかみたいな。ひとつには、ドラッグに対する姿勢だったのではないかと思うんですが。

北山 違うと思いますよ、俺は。俺と片岡さんの大きな差っていうのは、白人とインディアンの違いくらい大きな違いだと思います。俺は片岡さんとあの時代、アメリカを一緒に旅行したいという意識を持っていたんだけど、結局、それは果たせなかった。今思えば俺は、こういう言い方は非常によくないかもしれないけど、片岡さんと一緒に旅をしなかったことは、何か運命的なものが、やっぱりあったんだろうと思う。俺が片岡さんと一緒に旅をしていたら、「ロンサム・カウボーイ」の視点で、アメリカを見ただろうと思う。そういう視点で俺がアメリカを見なかったことに関して、俺はすごく自分にとってありがたかったと思うし、そのことで、やっと、自分が何であるのかということを考えるきっかけになったから。それは、ドラッグに対する姿勢が違うとか、そういうんじゃないと思う。

――片岡義男さんは、はっきりとドラッグを否定されてますね。以前『かもめのジョナサン』(リチャード・バック、1970年)について書評を書いていて、自分はアスピリンの香りがするものはいやだ、もっと大地を踏みしめて生きるほうを選ぶのだ、という意味のことを書いてましたが。

北山 ドラッグに対する認識というものは、植草さん、片岡さん、俺という流れから言えば、やっぱり俺が一番ラディカルですよね。ただ、そのことに関して俺は、ぜんぜん後悔してないし、そこから得るものだって大きかっただろうと思う。その分危険もいっぱいあったし。ただ、知りたいという欲求を殺すことはできない。結局片岡さんにしろ植草さんにしろ、アルコール文化の最後に出てきた人たちっていうふうに、俺は認識せざるを得なかった。その意味では、握手してきれいに別れましょう、というかたちでしかなかったしね。永遠に、お互い理解できない部分ってあるわけだから。その一点に関してね。
結局自分が70年代にアメリカ行ってみて認識してきたことは、あのとき『宝島』なんかで言ったことは、基本的な部分では間違っていなかったと思う。ただ、あの当時、みんながドラッグを体験しなきゃいけないというふうに思ってた部分があるんだけど、それはやっぱり、Everybody must get stoned!(みんなマリワナを吸わなくてはいけない!)という言葉がディランにあるけど、そういう影響だと思うよ。今は、そうは思わない。その人によって、いろいろあるだろうなと思う。だから、片岡さんが、ドラッグに対して半分否定的な部分を持ってたことに関しても、今だったら俺は笑って済ませられるけど、あの当時は、俺は、自分としては純粋なつもりだったからね。筋は通さなきゃいけないと思った部分もあるし。だから、その部分は、難しいよね。

*17 『ロックの時代』…ジョナサン・アイゼンが編集した1960年代ロックのアンソロジー集。『ローリングストーン』誌の名声を築いた初期のインタビューの数々が収録されている。

*18 『ヴィレッジ・ヴォイス』…ニューヨークで現在も刊行されている(1993年当時*2017年、プリント版の発行を停止。2018年、オンライン版での発行を終了し、現在は廃刊)。タブロイド判の週刊文化新聞。

*19 「ロンサム・カウボーイ」…『ワンダーランド』創刊号から連載された片岡義男の小説。シティ・ボーイにとって必要とされる「都市の見方」を書いている(『ロンサム・カウボーイ』1975年、晶文社*1979年、角川文庫。2015年、晶文社、改版)。

*【第3回】自分たちの新聞を作ろう(全5回)は、2020年5月17日配信予定

■北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)
【第1回】ソフトな奴隷制を打ち破る編集
【第3回】自分たちの新聞を作ろう
【第4回】自分の頭で考えて、自分の目で見て、自分の手で書く
【第5回】ニュー・ジャーナリズムには人生が凝縮されている


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  • 北山耕平・翻案『定本 虹の戦士』

    発行:太田出版 定価:本体1600円+税
    アメリカ・インディアンが信じつづけてきた、帰還と再生の物語。読み継がれて20年超のロングセラー、1999年刊旧版の増補決定版。オリジナル版に、北山耕平による新解説と新ブックガイド(15頁)を追加。“地球が病んで 動物たちが 姿を消しはじめるとき まさにそのときみんなを救うために 虹の戦士たちがあらわれる”――本文より
    http://www.ohtabooks.com/publish/2017/01/18000005.html

    北山耕平(きたやま・こうへい)
    1949年生まれ。立教大学卒業後、かつて片岡義男氏と遊び友達であったことから宝島社に入社。『宝島』第4代目編集長を経てフリーライター/エディターに。『ポパイ』『ホットドッグ・プレス』『写楽』『BE-PAL』『ART WORKS』『ゴッドマガジン』等の雑誌創刊に立ち会う。ベストセラーになった『日本国憲法』の企画編集に参加した。著書に『抱きしめたい』(1976年、大和書房)、『自然のレッスン』(1986年、角川書店*2001年、新装版、太田出版。2014年、ちくま文庫)、『ネイティブ・マインド』(1988年、地湧社*2013年、サンマーク文庫)、『ニューエイジ大曼荼羅』(1990年、徳間書店)、『ネイティブ・アメリカンとネイティブ・ジャパニーズ』(2007年、太田出版)、『雲のごとくリアルに』(2008年、ブルース・インターアクションズ)、『地球のレッスン』(2010年、太田出版*2016年、ちくま文庫)、訳書に『虹の戦士』(1991年、河出書房新社*1999年、改定版、太田出版。2017年、定本・最終決定版、太田出版)、『ローリング・サンダー』(ダグ・ボイド、1991年、平河出版社)、『時の輪』(カルロス・カスタネダ、2002年、太田出版)、『自然の教科書』(スタン・パディラ、2003年、マーブルトロン)、『月に映すあなたの一日』(2011年、マーブルトロン)等がある。

  • 雑誌『スペクテイター』最新号(vol.46)特集「秋山道男 編集の発明家」

    発行:エディトリアル・デパートメント 発売:幻冬舎 定価:本体1000円+税 
    spectatorweb.com

    『クイック・ジャパン』創刊編集長であり、本記事の執筆者である赤田祐一が編集を務める雑誌『スペクテイター』最新号、特集「秋山道男 編集の発明家」発売中。
    「若い時代というのは、自分を圧倒するものが目の前に出現すると、無条件で心酔したり、神格化してしまうようなところがある」
    赤田が、北山耕平と共に心酔した編集者のひとりであるスーパーエディター・秋山道男の総力特集。
    「あらゆるクリエイティブはエディトリアルだもんね」


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