北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)【最終回】ニュー・ジャーナリズムには人生が凝縮されている

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2020.5.19

文=赤田祐一


『クイック・ジャパン』創刊編集長・赤田祐一が創刊準備号で行った、編集者・北山耕平の歴史的インタビューの最終回。
ニュー・ジャーナリズムとは何か。これまでのジャーナリズムと何が違うのか。日本においてニュー・ジャーナリズムは可能か。『クイック・ジャパン』は、ニュー・ジャーナリズムの精神を1990年代の日本で展開する試みだった。それは、創刊から25年が経った今も変わらない。
赤田は創刊準備号の特集を、「ニュー・エイジに贈るジャーナリズム讀本」と銘打った。

※本記事は、1993年8月1日に発行された『クイック・ジャパン』創刊準備号(Vol.1 No.0)掲載のインタビューを分割、転載したものです。

【第1回】ソフトな奴隷制を打ち破る編集
【第2回】ロック雑誌の中に「声」を探していた
【第3回】自分たちの新聞を作ろう
【第4回】自分の頭で考えて、自分の目で見て、自分の手で書く

トム・ウルフと杉村楚冠人

――以前、『ポパイ』誌上で、北山さんは“ニュー・ジャーナリズム特集” *43 を組んでましたね。「ニュー・ジャーナリズムとは音楽の世界でいえば強烈なロックなのだ!」という題で。あれを執筆されたのは、トム・ウルフ編の、“ニュー・ジャーナリズム”についての、ぶ厚いアンソロジーが出たのが、きっかけなんですか。

北山 そうですね。トム・ウルフの『ザ・ニュー・ジャーナリズム』 *44。でも、一番最初にやったのは、『宝島』で「新しい意識が鉛筆を握るとき」(1976年7月号)という、『宝島』の文章読本を作ったときです。あれが最初ですよ。

――トム・ウルフの『ザ・ニュー・ジャーナリズム』の手法を、杉村楚人冠(すぎむら・そじんかん)の『最近新聞紙学』 *45 の手法と、合体させて紹介した記事ですね。

北山 そうそう。『宝島』が最初ですよ。その次に『ポパイ』で、“ニュー・ジャーナリズム”っていうものを、きちっと紹介するやつを、一度やってみようかなと思って、あれをやったの。

『Quick Japan』(飛鳥新社)創刊準備号(1993年8月1日発行)。グラフィックス=羽良多平吉

――アメリカで見つけて読まれたんですか。

北山 そうそう。まだこういうちっちゃい版じゃなくて、大学の教科書みたいなやつだったけど。アンソロジーでしょ。

――この中に「ギア」ってロック・レポートがありますよね。あれを訳して、この雑誌にいずれ載っけようかと思ってるんです。ヒップな話ですね。

北山 これを書いたリチャード・ゴールドスタインも、『ローリングストーン』の有名なジャーナリストですよ。もう亡くなっちゃったんですけど。1979年か1980年ぐらいかな。追悼号が出てると思いますよ、『ローリングストーン』から。

――『ヴィレッジ・ヴォイス』の常連寄稿者ですね。読んでらしたんですか、コラムを。

北山 うん。この人がロック・ジャーナリズムの最初みたいなもんだよね。この人がロック・ジャーナリズムを初めて、ヤーン・ウエナー *46 が引き継いで、ベン・フォン=トーレスとかそういうライターが出てきた。俺は“ニュー・ジャーナリズム”の中でも、特にロック・ジャーナリズムに興味を持ってたから、その中では、リチャード・ゴールドスタインは、一番印象に残ってる人のひとりだよね。ああいうのを書けたらいいなと思ったことは覚えてる。『ザ・ニュー・ジャーナリズム』の中で、自分の興味持ったものっていくつかあって、たとえばジョージ・プリンプトン *47 とか。

――プロ・フットボール・チームに体験合宿する『ペーパー・ライオン』を書いた人ですね。

北山 そう。あとは、『裸で眠るのですか?』を書いたレックス・リード *48。レックス・リードって、今野雄二さんが好きで、日本にいっぱい紹介してたけど。

――『ゴング・ショー』に出てましたね。

北山 『ゴング・ショー』でもやってたね。やっぱり自分にとって、一番“ニュー・ジャーナリズム”で影響を与えたのは『ローリングストーン』だね。その時代が、自分にとって、すごく印象強かった。だから、これが紹介できたらいいなという思いが強かったんだよね。

*43 “ニュー・ジャーナリズム特集”…北山耕平が『ポパイ』78年22号に発表した特集記事。タリーズ、ウルフ、トンプソンなどが、じつに的確に紹介された。ニュー・ジャーナリスト志望の人は必読。

*44『ザ・ニュー・ジャーナリズム』…70年代の初め、トム・ウルフが自ら編集したアンソロジー集。ニュー・ジャーナリズムの若い書き手たちの生きのいい文章が集められている。収録された書き手は、レックス・リードからトルーマン・カポーティまで21人いる。日本ではまだ、翻訳されていない。

*45『最近新聞紙学』…『朝日新聞』および『アサヒグラフ』の発展に足跡を残した敏腕ジャーナリスト・杉村楚人冠が書いたジャーナリスト入門書。大正4年(1915年)刊。刊行された時代は古いが、ニュー・ジャーナリズムの教科書として読むことのできる秀れた本。今(当時)では復刻版(1970年、中央大学出版部)が出ている。

*46 ヤーン・ウエナー…『ローリングストーン』の編集発行人。バークレー大学をドロップアウトしたのち、1967年、弱冠21歳で『ローリングストーン』を創刊した。

*47 ジョージ・プリンプトン…文芸誌『パリス・レヴュー』の編集長。インタビューの名手であり、スポーツ・ノンフィクションに定評がある。

*48 レックス・リード…1960年代に「あなたは裸で寝ているのですか?」とスターに質問し、本誌を語らせてしまうことで有名になったインタビュアー/俳優。他に『ここでは皆狂っている』がある。

ジャーナリズム、「ニュー」と「オールド」


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