「賢いことは言えないけど、『変わらないと!』って思った」
「もしかしたら、終わっちゃうかもしれないと思うからこそ、そこで終わらなかった人とこの先もずっと一緒にいたいと思ってるのかも」と彼女は笑う。「この感覚を共有できる人を探してるのかもしれないですね。そういう人が見つかったらずっと一緒にいたいし、『おばあちゃんになっても一緒にケーキ食べたいね!』とか、『年とっても、酒飲んで楽しく過ごせたらいいじゃん、私たち!』みたいなことに、結局めちゃくちゃ期待してますね。そういうことを願って、街を歩いてます」
過ぎ去ってしまうことに抗うように、「どうか今だけは」とカネコアヤノは願いを込める。その願いが強く刻み込まれているのは、4曲目に披露された「とがる」だ。
だれかが想いを燃やす
恋もキスも たのしい
わたしの花は枯れない
一生枯れさせない
今夜も月がきれい
それだけで しあわせ
あなたの花は枯れない
一生枯れさせない
かわる!かわる!
かわってく景色を受け入れろ
いつだって苦しいよ
だけど今日は たのしい
あなたの花は枯れない
一生枯れさせない
穏やかな日々は良い
だけどたまに 飽きる
愛が花束になる
一生枯れないやつ
かわる!かわる!
かわってく覚悟はあるはずだ
歌詞の表記としては2度だけ繰り返される「かわる!」というフレーズは、歌唱では4度繰り返される。自分自身に、あるいは観客におまじないをかけるように、とても大きな声で強く、「かわる!」とカネコアヤノは繰り返す。
「私は一度、表で大きく動くことからフェードアウトしてた時期があるんですよ。だけど、私はやっぱり大きいステージで歌いたいし、前向きに音楽やりたいなと思ったんです。『とがる』を作ったときって、そういうタイミングだったんですよね」
カネコアヤノが最初にミニアルバムを制作したのは2012年のことだ。それ以降――より正確に言えば、2011年以降――というのは、私たちは常に「あなたはどの立場を取るのか」と問われる日々が続いた。「とがる」は、その問いかけに直接的に答える歌ではないけれど、私はどこに立って歌うのかと、明瞭に宣言している歌であるように思う。
「確かに、『この問題についてどう考えてるんですか?』と問われるイメージはありました。そういうのに対して、私は何も考えてないわけではないけど、論ずる人じゃないから上手に言えないし、中途半端なことは言えないなと思ったんです。だけど、みんなが良くなればいいなってことは歌える。だから歌おうと思ったんです。それを歌うために、まず私はどうなったらいいかなと考えたときに、『私、かわろ!』と思えたんですよ。私が好きな音楽は、ぱかーんとした音楽だから、ほんとシンプルに『私、かわろ!』と思えたんです。賢いことは言えないけど、言えないことにコンプレックスを抱いてるんじゃなくて、『変わらないと!』って思ったし、今でも思ってますね」