『カネコアヤノ TOUR 2020 “燦々”』密着ルポ【前編】歌えなくなる、その日に向けて

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2020.4.1

「私は音楽しかできないから、この人生、これだけはがんばる」

「祝日」を歌わなくなった時期があったように、「グレープフルーツ」も1年以上歌わなかった時期があるという。今回のツアーでは、弾き語りでもバンドセットでも、最後に「燦々」を演奏しているけれど、この歌もきっとどこかで一度歌えなくなるタイミングが訪れるだろうと、カネコアヤノは語る。

いつかきっと歌えなくなる。その日は確実に訪れてしまう。そんな運命めいたものと、彼女はどう対峙しているのだろう。

「この年齢でずっとやっていけるわけじゃないし、見た目もきっと変わっていくと思うんです。だけど、極端に言うと、ずっとかわいくいたいなって思う。かわいいっていうのは、『かわいいおばあちゃんでいたい』みたいなことなんですけど、心を満たすものがずっとあったらいいのにっていう願いなのかな。いつか死んじゃうことは仕方ないけど、おばあちゃんになったとき、心を満たすものがなかったら嫌だって、すごく思ってる。たとえば喉が壊れて歌えなくなる日が来たら、たとえばギターを弾いて歌を作れなくなる日が来たら、どうしよう。でも、その日のために、やりたいことを思いっきりやるしかないのかもしれないよね。たとえば洋服屋さんに行ったとき、服が落ちてたとすると、それを拾って徳を積むようにしてるんです。そうすれば、死んだあとにまた人間になって、好きなことをできるんじゃないか、って。死んじゃっても幸せになれたらいいなって思う。だから、この人生、これだけはがんばる。私は音楽しかできないから、それを一生懸命やりたいって思ってます」

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名古屋クラブクアトロでのライブより

「祝日」を歌っているうちに、彼女の歌声はどんどん強さを増していく。アンコールも含めれば、そこからの5曲。「ぼくら花束みたいに寄り添って」「恋しい日々」「愛のままを」「燦々」、そして「アーケード」は、喉がここで壊れても構わないというほど、破裂するようにカネコアヤノは歌っていた。舞台に立つ姿が発光して見えた。彼女がこの日身にまとっていたのは、YUKI FUJISAWAの藤澤ゆきが手掛けた衣装で、そこには箔が押されており、ライトを浴びてキラキラと輝いている。

「最近はステージで着るための服を作ってもらえる機会があるんですけど、そうやって作ってもらったものを着ると、やっぱり全然違うんです。ゆきさんは服に命を宿してるから、そういう服を着ると、守られてる気持ちになる。ゆきさんだけじゃなくて、FUTATSUKUKURIに作ってもらったり、teasiに作ってもらったり、Ka na taに借りたりした服を着たときも、武装した気持ちになれる。作り手もきっと、カネコアヤノがステージに立ってる姿を想像して作ってくれてるから、その思いが重なる感じがします。だから、すごく強い気持ちになれますね」

衣装に守られながら、カネコアヤノはすべてを振り絞るように歌う。声を少しかすれさせながら、全身全霊で歌い終えると、「ありがとう」とだけ告げてステージを降りた。

【後編】ひかりのほうへ」につづく


カネコアヤノ
シンガーソングライター。2019年にアルバム『燦々』と、弾き語りによる再録アルバム『燦々 ひとりでに』を発表。2020年4月1日に両A面シングル『爛漫/星占いと朝』をCD・7インチ・配信の3形態でリリース。


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カネコアヤノ『爛漫/星占いと朝』
2020年4月1日にCD・7インチ・配信でリリース


「セゾン」作詞/作曲:カネコアヤノ
「ごめんね」作詞/作曲:カネコアヤノ
「祝日」作詞/作曲:カネコアヤノ
(『燦々』収録)
「さよーならあなた」作詞/作曲:カネコアヤノ
(『さよーならあなた』収録)
「とがる」作詞/作曲:カネコアヤノ
(『ひかれあい』収録)
「星占いと朝」作詞/作曲:カネコアヤノ
(『爛漫/星占いと朝』収録)


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橋本倫史

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