激闘『IPPON女子グランプリ』徹底解説「はたして女性は大喜利が苦手なのか?」なんて愚問でした「男女混合ダブルス」にワクワク

2022.6.27
ippon samune

文=井上マサキ イラスト=まつもとりえこ 編集=アライユキコ


6月25日に開催された『IPPON女子グランプリ』(フジテレビ)。「女性芸人編」と「女性タレント編」の2ブロックで行われた熱戦をNHK『着信御礼!ケータイ大喜利』レジェンドの称号を持つライター・井上マサキが振り返る(一部、大喜利回答の表記を読みやすく整えています)。


『IPPONグランプリ』に女性は7人しか出ていない

松本人志が“おもしろいと思うこと”をテレビで実験する特番『まっちゃんねる』(フジテレビ)。第3弾となった6月25日放送回では、『IPPONグランプリ』の出場者を女性に限定した『IPPON女子グランプリ』が行われた。

『IPPONグランプリ』はこれまで27回放送され、出場者はトータル78人(番組内では「のべ270人」と表現)。このうち女性は椿鬼奴、友近、大久保佳代子(オアシズ)、渡辺江里子(阿佐ヶ谷姉妹)、伊藤修子、箕輪はるか、近藤春菜(共にハリセンボン)の7人しかいない。

番組はこれまで女性の決勝出場者がいないことに触れ、「はたして女性は大喜利が苦手なのか?」というナレーションから始まった。「いや得意な人もいるよ?」「主語が大きすぎでは?」「というかもっと女性を出場させればいいのでは?」といったモヤモヤは、2時間かけて「だから言ったでしょう?」に変わる。女性は大喜利が苦手なんてことは全く無いと、現場で証明されるのだ。

『IPPON女子グランプリ』女性芸人編:貫禄のはるか、猛追するイワクラ

『IPPON女子グランプリ』は、「女性芸人編」と「女性タレント編」の2ブロックで行われた。セットも演出も伊藤アナも全て『IPPONグランプリ』そのままだが、審査は解説席にいる松本人志と、優勝経験者であるバカリズム、川島明(麒麟)、大悟(千鳥)の4人が担当する。

女性芸人ブロックの出場者は福田麻貴(3時のヒロイン)、イワクラ(蛙亭)、加納(Aマッソ)、箕輪はるか(ハリセンボン)の4人。第1問は「あなたがおっさんと体が入れ替わったとき相手に伝えておく注意事項とは?」。最初に頭ひとつ抜けたのは、この中で唯一本戦出場を果たしているはるかだった。

・しのごの言わずに楽しめよ!
・年に一度、きれいな花火を見せてあげてください
・ブラの代わりにベーコンを巻くだけでも問題ないです

読み方にも緩急を付け、3本連続のIPPONを奪う。一方、加納は「はしゃぐなよ?」「B(美容液)→K(化粧水)→N(乳液)の順ね!」「スベった夜はヌーの捕食動画で鎮めて」と方向性を変えながら積極的に攻めるがIPPONに届かない。解説席も「考え過ぎのような気がする」「力が入っている」と見守る。結果、「風俗行っちゃうね~」と力を抜いた下ネタで初IPPON。別室にいて姿が見えない審査員たちのツボを探っていたようにも見えた。

序盤で苦戦していたのがイワクラ。第1問ではIPPONが獲れず、第2問「写真で一言ルーレット」では長尺のストーリーがうまく噛み合わない。ひとりだけ0本のまま迎えた第3問、「そんなこと5・7・5で伝えるな!」でようやくピントが合い始める。

・キン肉マン明日から毎日読み直す
・鳥羽一郎ヒット曲は兄弟船
・左きき右ききよりも少ないな
・痛風の痛みはわからぬ女たち

答えが5・7・5の定型文になることで長尺を避けられたこと、そして淡々とした語り口と「そんなこと」の内容がマッチして、一気に4本のIPPONを獲得。第5問「下着売り場で言ったことの無いセリフを言ってください」でも、トップを走るはるかに食らいつく。

・乳首のとこだけ穴あいてるブラあります?(イワクラ)
・男ふるわすブラくれや(イワクラ)
・いい下着がひとつもないですねぇ……手ブラで帰らせてもらいます(はるか)
・結構いい感じなんで、布袋モデルも着てみていいですか?(はるか)

イワクラが8本まで猛追するも、はるかが10本で逃げ切り勝利! 松本人志が「女王の風格すら感じた」とコメントするほど貫禄の優勝だった。

『IPPON女子グランプリ』女性タレント編:画が浮かぶ王林、言葉を操る滝沢カレン

女性タレント編の出場者は、YouTube『滝沢カレンの秘密基地』でストイックに大喜利に取り組む滝沢カレン、『凪咲とザコシ』(テレビ朝日)など「仕事の半分以上が大喜利」だというNMB48渋谷凪咲、そして大喜利の実力は未知数な元NHKアナウンサー・神田愛花(夫はバナナマン日村有紀)と、青森県のご当地アイドル出身でバラエティ番組でも活躍中の王林という4名。

【40日目①】ハリセンボンさんと大喜利させてもらいました!【前半】

第1問「壁ドン以上のキュンキュンを教えて下さい」では、渋谷がすぐにボタンを押した。「めっちゃ早い」と解説席がどよめくなか、出した答えは「尻モギ」。右手で尻をもぐ動作も相まって爆笑をさらい、あっという間にIPPON!

「首ぐい」(王林)、「片ミミづかみ」(滝沢)と、序盤は「壁ドン」の漢字1文字+カタカナ2文字を踏襲する流れの中、「ポルシェ&フェラーリ&ブガッティ」「麻布にあるあのマンションのここ」と自分がキュンキュンすることを正面から答えちゃう神田。王林も「肉そっせん男」「ぼうこう莫大男」(番組テロップ表記)と自分の好みを語ってIPPONを連発し、正統派の渋谷&滝沢を翻弄する。

第3問「コンパで横の席になったケンタウルスを褒めてあげて下さい」では、またもや渋谷が一発目で「意外と馬刺しバクバクいくんですね」でIPPON。つづいて王林が、本当にケンタウルスが横にいる画が浮かぶ回答で解説席をうならせる。

・下の方にも乳首があるのですね
・終電逃しても大丈夫ですね!
・(数える動作をして)何頭身ですか!

イマジネーションを炸裂させる王林に対し、ワードセンスが光ったのが滝沢カレンだった。第5問「かわいくないことをかわいく言ってください」では、渋谷が高速で最初のIPPONを取り(「尿」と出したあとに「にゃー」と鳴くテクニック!)、神田が流れを無視したマントヒヒを連発して場を乱すも、滝沢カレンはしっかりお題に則りつづけた。

・ゴッツゴツのエゾジカ
・サメ肌のイボ(ハート)
・足うら、ゴミだらけだね?
・イカゲソ鬼炒め

解説席の大悟も「おもしろい言葉作るな~!」と感嘆する答えを連発し、このお題だけで4本のIPPONを奪って逆転。女性タレント編は滝沢カレンが優勝……!

……と、ここで終わるかと思いきや、松本人志から「これで終わります……? 頂上決戦見たくないですか?」と提案が。本家『IPPONグランプリ』同様、せり上がった解答席で箕輪はるかと滝沢カレンの対決がはじまった。

IPPON女子グランプリ決勝戦:ダチョウ乱入で実家崩壊→異物乱入で母親絶叫

ハリセンボンの公式YouTubeによると、芸人vsタレントでの決勝戦は現場の流れで急きょ決まったそう。試合前、「さっき帰っておけばよかった」と緊張をあらわにするはるかと、「はるかさんとこうやって楽しくできることも嬉しいですし、ただただ見習いたい」と笑顔の滝沢カレン。決勝戦は2本先取したほうが総合優勝となる。

第1問は「このかるたの読み札を教えてください」。モニターには、坊主姿の高校球児がマイクを向けられている「れ」の絵札。ほぼ同時にペンのキャップを取るふたり。先攻したはるかが「れんげに小さいラーメンを作って こぼさないままホームインしました」で笑いを取るが、IPPONまで届かない。つづく滝沢カレンは「連続ドラマを1話見逃したからって……坊主です」と縦にフリップを出し、IPPONを先取! 

第2問は「テンションが下がるものしりとり」。「テンションが下がるもの」をしりとりで交互に答えるラリー形式のお題。

先攻ははるか。レモンこめかみ搾り→理科の欠席→キムチでスマホ漬け→消しゴム丸呑み→ミュージシャンの喉仏アタック!→熊に殴打→ダチョウ乱入で実家崩壊→異物乱入で母親絶叫→うなじやぶれ……と、一生終わらない戦いになりそうだったが、滝沢カレンの回答が「レミさんと一年」と「ん」で終わり、しりとりがつづかず失格に。

これで1対1のイーブン、優勝を決める第3問は「結婚条件の3高『高収入・高身長・高学歴』に次ぐ4つ目の高とは?」。シンプルかつバブル期の価値観のお題。

・高野山がバックについてる(はるか)
・高足速(こうあしばや)
・高め合える(はるか)

ワードで攻める滝沢カレンと、球種を変えて攻めるはるか。最後ははるかの「高速渋滞情報リアルタイムキャッチ!」の叫びでIPPON! 箕輪はるかが総合優勝を決め、隣で滝沢カレンは「かっこいい!」と満面の笑みで拍手していたのだった。

IPPON女子グランプリ「はたして女性は大喜利が苦手なのか?」という“フリ”

冒頭の「はたして女性は大喜利が苦手なのか?」は、「そんなことはない」という結論に向けた“フリ”だった、とも言えるだろう。

ただ、わざわざ女子大会を意識したお題を出しておいて、女子に寄せた答えをちゃんと評価できているか気になる場面もあったし(「B→K→N」「ルブタン」など)、大喜利に「女性ならでは」を期待するのもなんだか今の時代とズレているように思う。

戦いが終わって、コメントを求められたふたりは「大喜利が好きでよかったなって思いました」(はるか)、「大喜利すごい楽しかったので、これからも大好きでいたいなと思いました」(滝沢)と、大喜利愛を語っていた。

大喜利という遊びは、誰にでも開かれた営みであってほしい。本戦の『IPPONグランプリ』で互角に渡り合う箕輪はるかの姿を見たいし、もっともっと多様な出場者の多様な大喜利が見たい。そんな思いが高まった『IPPON女子グランプリ』だった。最後に麒麟川島が提案した「男女混合ダブルス」なんて、ワクワクするじゃないですか……!


この記事の画像(全12枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

井上マサキ

Written by

井上マサキ

(いのうえ・まさき)1975年宮城県生まれ。ライター、路線図マニア。大学卒業後、システムエンジニアとして15年勤務し、2015年よりライターに転身。共著に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(..

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。