今夜最終回『正直不動産』永瀬財地(山下智久)タワマンと決別?原作からのアレンジを考察

2022.6.7
正直不動産9

文=米光一成 イラスト=たけだあや 編集=アライユキコ


NHKドラマ『正直不動産』(火曜よる10時~全10回予定)。原作は『ビッグコミック』(小学館)連載中の同名コミック。ゲーム作家(『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』『あいうえバトル』など)でライターの米光一成がレビューする(ネタバレを含みます)。


月下(福原遥)と花澤(倉科カナ)の一騎打ち

山下智久主演のお仕事ドラマ『正直不動産』6月7日(火曜日)NHK総合午後10時から、いよいよ最終10話「正直不動産、誕生」である。
しかも、異例の3度目の再放送(第7話から最終話までを6月12日から連日)、さらに最終話翌6/14(火)に『正直不動産 感謝祭』、出演者や製作者が舞台裏やドラマの魅力について語る番組の放送も決定。やるなーNHK!

最終話ひとつ前、9話は「決戦!眺めのいい部屋」、原作漫画10巻の「眺望悪化マンション」のエピソード。

「リビングからドーンと富士山が見えるマンションを探してくれ」
とせっかちな旦那さん。
息子夫婦が同居しないかと提案してくれて、4LDKを探していると、奥さんがフォローして解説する。
この条件で、しかも富士山が見える物件はなかなか難しい。
正直風が吹いて、またも安請け合いしそうな永瀬財地(山下智久)を先取りして月下咲良(福原遥)が「私が必ず見つけます!」と宣言する。
「絶対にご夫婦のために素敵な物件を探す」と決意する月下。
「絶対に結果を出して会社を変えてみせる」と決意したミネルヴァ不動産の花澤涼子(倉科カナ)との一騎打ちになる。

『正直不動産』<10巻>大谷アキラ/夏原武 原案/水野光博 脚本/小学館
『正直不動産』<10巻>大谷アキラ/夏原武 原案/水野光博 脚本/小学館

あんたら男に譲るわけにはいきまへんのや!

せっかちな旦那さんが決めたと連絡してきた物件は、花澤が見つけたものだった。
月下は、条件を変えたのか?と驚く。
「ここから富士山が見えるのはあと3年ほどですが」
実は、タワーマンションが3年後に完成して、富士山が見えなくなる物件だったのだ。
だから、月下は候補から外したのだ。

「花澤さん、話が違うじゃないか」
ということで解約しようとするが、花澤は「買い主様都合なので手付金は返金しかねます」と言い出す。
訴えるぞと息巻く旦那さん。
花澤さんは言う。
「日照権と違って眺望権が認められることはほぼありませんが」
それに対して月下が
「数は少ないですが、眺望権が認められたケースはあったはずです」
とバチバチの対決へ突入。

「これは私と花澤さんの戦いなんです。なんとしてもあんたら男に譲るわけにはいきまへんのや!」
と、月下は『極妻』の岩下志麻と化して挑む。

富士山が見える物件を見つけ、島村一家に選んでもらうことになるのだが……。

なんと島村一家は、ミネルヴァ不動産の物件を選ぶのだ。
「また花澤に何か吹き込まれたのか」と息巻く月下に対して、永瀬が冷静に分析する。
3年後には富士山が見えなくなるが、保育園、評判のいい小児科医院など子育てをするための施設が数多くそろっている。
「私たちの思い出よりも、次の世代のことを考えるべきなんじゃないかって家内と話しまして」
月下、完全なる敗北である。


「正直な永瀬さんが好き」

息子夫婦と同居する物件なのに、息子夫婦に会いもせず、要望も聞いていないなんて! 
カスタマーファーストと言いながら、「富士山が見える物件」だけに集中して、ほかのことが見えなくなっていた。

凡庸な上司なら大叱責するところだが、永瀬は、正直風に吹かれて「確かに覚悟が違い過ぎる」と厳しい言葉を投げつけたあとに、「でも比べる必要はない」とつづける。
「俺は月下がバカみたいにカスタマーファーストって言いつづけること、素晴らしいと思う。だからそのままでいいよ」
という優しい言葉で、月下、涙、涙。
もはや、正直風で困ることもなく、しっかり正直スタイルが板についてきた。
なにしろ、タワマンに戻ることを目標にしていたのに、超貧乏な「ひだまり荘」の部屋で「最近ここも悪くないなって」とヘアピン留めた姿で語り、「正直な永瀬さんが好き」と榎本美波(泉里香)に結婚前提に付き合ってくれと告白されちゃうのだ。

9話。実は原作とは、後半の展開が大きく違う。
原作では、「富士山が見える物件」という願望自体が旦那さんの勘違いだったのだ。
奥さんが、ふたりでよく行った銭湯の壁に描かれた富士山をまたふたりで見たいわねと言っただけなのに、せっかちな旦那さんは勘違いして富士山の見える物件を探してしまう。
このせっかちで、夫婦は離婚の危機に陥る。月下は、夫婦に別居を勧め(その代わり週1で会って話し合ってくださいとお願いする)、一気に2件の賃貸契約を結ぶというすごい作戦を実現するのだ。
原作のトリッキーな展開を、花澤vs月下を軸にアレンジして、ミネルヴァ不動産vs登坂不動産の大きな流れに組み込んだ。

ドラマ9話、ラスト。
登坂不動産の朝礼に乗り込んできたミネルヴァ不動産の鵤社長が「登坂不動産はもう限界ですよねぇ」と宣戦布告。登坂社長も「むしろアコギな商売してるそちらのほうが先に限界が来るんじゃありませんか」と受けて立つ。

山崎努再登場!

ついに今夜、最終話。
ミネルヴァ不動産と登坂不動産の最終決戦。
ミネルヴァ不動産を変えようとがんばる花澤、カスタマーファーストの月下、そして正直スタイルを貫くのか永瀬(「嘘がつける?」というセリフが次回予告に!)、榎本さんとの恋バナはどうなるのか、とそれぞれの行く末にも決着がつくだろう。
予告では、1話で登場した山崎努さんが再登場するみたいである。期待!


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米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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