山下智久×根本ノンジ『正直不動産』演技、演出、脚本の総合的な勝利を確信した1話ラスト

2022.4.12
正直不動産1

文=米光一成 イラスト=たけだあや 編集=アライユキコ


2022年4月5日(火)よる10時からスタートしたNHKドラマ『正直不動産』(全10回予定)。原作は『ビッグコミック』(小学館)連載中の同名コミック(最新巻14巻発売中)で、不動産業界を赤裸々に描いてヒットしている。ゲーム作家(『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』など)でライターの米光一成がレビューする(ネタバレを含みます)。2話レビューはこちら。


山下智久の肉体美で始まる

上半身裸の山下智久、タワマンの上層階の自宅で、美女と一緒にいる。「きれーい!」と夜景に感動している美女に、「でも、今日、もっとキレイなものを見つけた」と歯の浮くセリフで口説いている。
めちゃくちゃ鍛えている筋肉だけど、マッチョな体つきじゃなくて痩せてさえいる肉体美。山下智久が演じる永瀬財地(ながせ・さいち)は、登坂不動産で営業成績1位のエース。

千に三つしか成約しないことから「千三つ」という不動産業界ワードがあるらしいが、永瀬財地は、「千の言葉の中に真実は三つだけ。正直者がバカを見る。嘘をついてナンボ。それが俺の営業スタイルだ」と語るライアー永瀬の二つ名がある嘘つき男。その山下智久演じる永瀬が、祠(ほこら)を壊した祟りのせいか、嘘がつけなくなって、正直な営業スタイルで悪戦苦闘するコミカルタッチのお仕事ドラマだ。

山崎努とは10年ぶりの共演

主演の山下智久は、24年前、NHKのドラマに出演している。少年犯罪を扱った『少年たち』で、父親殺しの容疑者の少年を演じた。当時、13歳だ。

第1話でゲスト出演する山崎努とは10年ぶりの共演。ふたりは、山下智久初めての主演ドラマ『クロサギ』、さらに2012年『最高の人生の終り方~エンディングプランナー~』(共にTBS)で共演した。
嘘つきで契約のためなら悪魔になる永瀬が、自分の意志に反して本音でしか語れなくなってしまう。上司には「あんたの自慢話を聞くのはうんざりだ」「クソ上司が!」と言い、口説いていた美女には「君みたいなクソビッチ」と言ってビンタされる。

顧客にも正直にあれこれ言ってしまい契約が不成立に。成約ボーナスは取り消し、ペナルティも課せられるし、このままではクビになりそうな状況。タワマンも追い出され、超貧乏なひだまり荘に引っ越し(極端な貧乏屋敷なのに、タワマン生活の名残で高級ワインと高級ワイングラス、シルクのパジャマなのがリアリティ!)。ビシッとした営業マン姿がカッコいいのはもちろんだが、メガネでラフな格好でもカッコいい山下智久。


風が吹くと本音を言ってしまう

カッコいいだけじゃないんである。風が吹くと本音を言ってしまう、自分の意志で自分が制御できないドタバタは、自分の中に自分じゃない何かがいるような独特な演技をしなければならず、あまりコミカルにやり過ぎるとバカバカしくなるし、不自然になってはドラマが成立しない。本音を言う爽快さも必要だし、でも、言うことを聞かない口元や制御不能な自分を演じる必要もある。マスクで口を押さえようとするがそれができないといったナイス演出などもあって、この、難しい演技を、山下智久が見事に自然に演じた。
突拍子もないコミカルな設定であるのに、コメディというよりも人間ドラマであり、王道のお仕事ドラマだと感じさせてくれるのは、演技、演出、脚本の総合的な勝利だろう。

『正直不動産』<1巻>大谷アキラ/夏原武 原案/水野光博 脚本/小学館
原作漫画『正直不動産』<1巻>大谷アキラ/夏原武 原案/水野光博 脚本/小学館

脚本は『フルーツ宅配便』『監察医 朝顔』『ハコヅメ』の根本ノンジ

原作漫画を土台に、いらんことしないで、でも肝心な部分は脚色して、連続ドラマの第1話としてしっかり作り上げた。脚本は、根本ノンジ。『フルーツ宅配便』(テレビ東京)『監察医 朝顔』(フジテレビ)『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ)と、漫画原作のお仕事ドラマで「傑作!」と思ったら、必ず、根本ノンジが脚本なのだ。またしても!

特にラスト、山崎努が演じる石田さんが自分で作った和菓子を持ってきた場面にはグッときた(原作漫画にはないドラマならではの名場面だ)。

「儲からないのに、なんで50年も菓子作っているのか聞いたな。大した理由じゃない。俺の菓子食うと、みんな、幸せそうな顔をする。だからつづけられた」

まっすぐな言葉が、山崎努の持つ説得力でぐっと厚みを増して伝わった。
「なるほど、それは」のタイミングで、永瀬に正直の風が吹いて「一円にもなりませんね」と言って、ふたりが笑う。

「一番楽しいのは、人を楽しませることだ」という山崎努の発した言葉は、エンタテインメントの本質であるし、『正直不動産』を作り上げたスタッフ、出演陣の正直な気持ちだろう。

2022年4月12日よる10時から第2話「1位にこだわる理由」、楽しみだ。


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米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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