山下智久『正直不動産』2話 預かり金を払ったのに家賃が値上げされる!?不動産業界の闇と祟り風に翻弄される山P
NHKドラマ『正直不動産』(火曜よる10時~全10回予定)。原作は『ビッグコミック』(小学館)連載中の同名コミック。ゲーム作家(『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』など)でライターの米光一成がレビューする(ネタバレを含みます)。
『クロサギ』で共演した小沢真珠も登場
山下智久主演、根本ノンジ脚本『正直不動産』4月19日(火曜日)午後10時から第3話放送だ。
第2話は、原作漫画3巻の「預かり金」のエピソードを軸に展開した。
不動産営業の嘘を見破るテクニック満載のお仕事ドラマ。第1話で、石碑を壊した祟りのせいで嘘がつけない体になってしまい正直営業しかできなくなった主人公の永瀬財地を山下智久が演じる。
第2話では、ライバル桐山(市原隼人)との対立が明確になって、ドラマがぐっと深みを増した。嘘と正直というシンプルな対立ではなくて、売り手と買い手の間にいる不動産特有の困難さも垣間見えてきた。
「じゃあどっちが好きなの?」と、タワマンでふたりの女(小沢真珠、石川瑠華)に詰め寄られる永瀬財地(山下智久)。祟りの風が吹いて「どうでもいいじゃないですかそんなくだらないこと。そもそもどっちも付き合う気ないし」と正直に答えて刺されてしまう夢から覚めると、貧乏部屋。
山下智久主演ドラマ『クロサギ』(2006年/TBS)で共演した山崎努が第1話に登場して、さらに第2話で『クロサギ』で結婚詐欺師を演じた小沢真珠が登場。こうなると『クロサギ』メンバーの小山慶一郎(NEWS)や哀川翔も登場するのではないかと期待してしまう。
大河部長の朝礼クイズ「ダイヤモンドはなぜ売れると思う?」
大河部長(長谷川忍)の朝礼クイズは、「ダイヤモンドはなぜ売れると思う?」。
答えは「あの妖しい光が女心をくすぐるんだ。石ころみたいな物件に怪しい光をまとわせ売りさばいてこそ営業だ」。
正直風に吹かれた永瀬は「誰も聞いてないっすよ」「なんっすか、今のクッソしょうもないテクニック」と本音を吐露してして、部長を怒らせてしまう。
しかも、永瀬は、営業成績で桐山に抜かれて2位に転落。
「また嘘がつければ俺は復活できる」と考えている永瀬だが、今回も正直風が吹きまくり嘘がつけないのであった。
マンションの売却の場面。媒介契約は3種ある。
・専属専任媒介契約
・専任媒介契約
・一般媒介契約
どれがお得ですかと聞かれた永瀬。
嘘がつけるなら「おすすめは専属専任契約」と答えるのだが、正直モードの永瀬は「一般媒介契約」をおすすめする。
それを聞いていた桐山(市原隼人)が、ニセの電話を使って永瀬から顧客を横取り。専属専任契約を結ばせるのだった。
一般媒介契約をおすすめした場面、実は永瀬に風は吹いていない。正直に言わなけりゃならないと半ば諦めて、自分から正直に話しているのだ。
カスタマーファーストにこだわる月下
新人の月下(福原遥)は、「正直」とは少し違うスタンスで、カスタマーファーストにこだわる。
居酒屋で永瀬に絡みながら「自分が胸を張って自分が住みたいって思えるような部屋をお客さんに紹介したいです」と熱く語るのだ。
第3話予告で、永瀬と月下が「月下、どうしてこの仕事選んだ?」「永瀬先輩には特別に教えちゃいます」と会話する場面がちらっと登場していたから、次回、月下がカスタマーファーストにこだわる秘密が解明されるだろう。
預かり金を払ったのに家賃が値上げ!?
マンション売買の契約を横取りされた永瀬だが、なぜか桐山が三浦夫婦の案件を譲るという。
プライドが許さず断ろうとするが、正直風に吹かれて「マジで助かるわ」と受けてしまう。
だが、これは罠。
「今になって家賃を1万円上げるってどういうことですか?」と三浦夫婦は激怒している。
桐山に電話で確認すると「これぐらいのトラブル楽勝でしょう、ライアー永瀬なら」といけしゃあしゃあと答える。
だが、今の永瀬は嘘がつけない。預かり金を返却するしかないと考えるが、部長がマグロ漁船行きの圧をかける。
「大変申し訳ないのですが、預かり金は(正直風吹く)もちろん全額きっちり返ってきます。まともな不動産屋だったらですけど」
大ピンチである。
オーナーは最初から値上げするつもりで、釣り価格で出していたのだろうと永瀬は推測し、それを正直に説明する。
さらに風が吹いて「なんとかいたしましょう。この永瀬財地にお任せください」と言ってしまう。
営業成績を上げたいライアー永瀬、ところが正直風に吹かれて正直に言ってしまう永瀬、翻弄されてどうしていいかわけわからなくなる状態を(大河部長のさまざまな「マグロ漁船圧」を合いの手代わりに)きりきりと切り替えながら、山下智久が見事に演じる名場面だった。
カスタマーファーストとは?
永瀬と月下は、家賃を値上げしたオーナーのところへ訪れる。
「悪どい値上げしたくせに」と思いながらオーナーの話を聞いていると、様子が違う。
家賃収入のために家を買ったのではなく、家族で住むために購入したばかりの家を売却することになったことを知る。
静岡にいる母親が倒れて、介護することになったのだ。
しかも、母の病気が悪化してさらに治療費がかかることになって、桐山に相談したら「なんとかする」と言ってくれたとオーナーは打ち明ける。
オーナーにとって、桐山はカスタマーファーストの「とてもいい人」だ。
貸す側のオーナーにも事情があり、借りる側にも事情がある。その間に立って仲介するのが不動産営業。
カスタマーファーストの良い営業と、会社の利益優先の悪徳営業のシンプルな対立に見えていた構図が、ここでグッと深みを増した。
永瀬は、この板挟みの状態を「正直」で乗り切る。
「はい。私は嘘がつけない人間なんです」
永瀬は、オーナーの実情を話す。正直に状況を説明して、オーナーは信頼できる人間で、良好な関係が築けると説得する。
値上げは撤回できなかったが、交渉して1万円ではなく5000円にした。
しかも、家賃ではなく管理費に。敷金礼金は値上げなし、だ。
つまり、会社の儲けは上がらない。正直さと誠意を示した。
第1話で、山崎努演じる石田さんがこう言った。「儲からないのに、なんで50年も菓子作っているのか聞いたな。大した理由じゃない。俺の菓子食うと、みんな、幸せそうな顔をする。だからつづけられた」
永瀬は、今のところまだ、嘘をついて営業トップに返り咲き、タワマン暮らしに戻りたいと思っている。だが、正直風のせいで(おかげで?)、結果的にこの石田さんのセリフのような仕事ぶりになっている。
桐山を単純な悪に貶めずに、ドラマは「なんのために働くのか?」と問う内容になってきた。「お金以外何があるの?」と答えていた永瀬が、どう変わっていくのか、楽しみである。
4月19日は午後3:10から第2話の再放送。そして午後10時から第3話だ。
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