エバース佐々木「M-1決勝に向けてより気を引きしめる一冊になった」初エッセイ『ここで1球チェンジアップ』発売記念会見レポート

文・撮影=浜瀬将樹


お笑いコンビ・エバース佐々木隆史による初のエッセイ本『ここで1球チェンジアップ』が、2026年7月14日(火)より全国書店やネット書店で発売された。

本書は子供のころから野球にすべてを捧げてきた佐々木が、「お笑い」という新しい目標を見つけ、人生にもがく姿が綴られた自伝的エッセイとなっている。『M-1グランプリ』初の決勝進出前となる2024年9月から心境を綴ってきたWEB連載の原稿も収録されており、当時の揺らぎや焦り、希望の手触りまでもが、鮮やかに伝わる。

エバース 佐々木隆史『ここで1球チェンジアップ』(撮影=垂水佳菜)
エバース 佐々木隆史『ここで1球チェンジアップ』(撮影=垂水佳菜)

発売に合わせ2026年7月23日(木)には、芳林堂書店 高田馬場店で合同取材会が行われた。本記事ではその様子を振り返る。

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「町田って僕に興味がないんで、たぶん読んでくれない」

書籍の発売から9日が過ぎた会見当日。

現在の胸中を問われた佐々木は「まだ『M-1』を優勝したわけでもないのに、『エッセイなんか書いて偉そうじゃないかな』と思ったんですけど、発売されたあといろいろな人から『読みました』と反響をいただくので、結果書いてよかったなと」と回顧。相方の町田和樹は“おそらく”読んでいないと言い、「町田って僕に興味がないんで、たぶん読んでくれない」と予想した。

現在、エバースは単独ライブの全国ツアー中。エッセイの執筆をしながら新ネタを考えることもあったそうで「いっぱいいっぱいになっているとき、町田が楽屋で寝ていてムカつきました。普通に解散しようかなと思いました」と話し、記者からの笑いを誘った。

執筆中にはこんなエピソードも。締切に追われるなか、SNSを通して元日向坂46・影山優佳のエッセイを読む機会があったという。

「めちゃめちゃ頭がいい人の文章というか、『頭いいな』という言い回しをしていて……。そのあと自分のやつを読んだら、まっすぐそのまま書いていたんで、ちょっと恥ずかしかったです。でもそれが『逆に読みやすい』と言われるので、結果オーライです」

そんな佐々木は、自伝的エッセイを執筆するなかで、自身の人生をどう捉えたのか。「まだ旅の途中ではありますが」と前置きした上で「だいぶ運がよかったなと思いますね。野球を辞めたあと自堕落な生活を送る可能性だってありましたし、たまたま町田とのコンビがうまくいきましたけど、全然メシを食えていない可能性だってあった。僕が生まれてからいろいろ世界線が分かれていたとしたら、だいぶ運のいいルートに来られた気がします」と語った。

自分の気を引きしめる一冊になった

今回、漫才とはジャンルの違うエッセイに挑戦した佐々木。新たな試みをしたことで、心境の変化もあったようで、「漫才だけ作っていたときは、相方をどうおもしろくするかを考えていたんですけど、本を書くとなったら自分のことを書くので、新鮮でしたね」と回顧。続けて「お題をもらって即興漫才をするライブを月1でやっているんですけど、最近僕だけ一方的にしゃべることがあります。昨日もそのライブで、後半は僕に任せて町田がサボっていました」と暴露した。

そんななか、『M-1』への想いを吐露するひと幕も。「こんな本を書いて、今年決勝に行けなかったら恥ずいんで、自分へのプレッシャーにはなった気がします。引きしめというか。これで予選で落ちたら『本を書いている場合じゃないだろ』となっちゃうので、より漫才をがんばらなきゃと思えますね」と襟を正した。

気になるのが本作のタイトル『ここで1球チェンジアップ』の意味だ。果たして、どんな想いが込められているのだろうか。記者から問われた佐々木は「漫才ばかりの芸人生活だったなか、このコラム(WEB連載)が漫才以外で初めていただいた仕事でした。漫才がストレートだとしたら、いったんここでチェンジアップ。読む人もひと息ついて読めるみたいな。『ここでちょっと球速を変えてみます』みたいな気持ちをタイトルにしたんですけど……。そんなに深い意味はないです」と笑みをこぼした。

僕のことを知らなくても、みんな共感はしてくれるはず

今回推薦コメントを寄せたのは、脚本家で俳優の宮藤官九郎だ。2023年、『M-1グランプリ』で初の敗者復活戦を戦ったエバースを見た宮藤が、その後開催された単独ライブに来場。同じ宮城県出身で、地元も近い関係性もあって、“ダメ元”で依頼したところ快諾してくれたという。佐々木は「すぐにコメントをくださいました」と目を輝かせた。

また、著書について語るなかで、「自分的には共感してくれる人が多いんじゃないかなと思います。やる気がなかった時期の話も書いていますし、宮藤さんもコメントで『共感しかない』と書いてくれているので」と述べる場面も。

この「共感」はキーワードのようで、「『ずっと甲子園を目指していたけど行けなかった』というのは、部活や学生生活でがんばっていたことに置き換えられる気がするんですよ。みんな『全国に行けなかった』『夢が叶わなかった』など、似た経験をしていると思うし、そこから次の夢に向かってがんばる話ではあるので」と自身の作品を紹介。「僕のことを知らなくても、みんな共感はしてくれるんじゃないかなと思います」と語っていた。

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浜瀬将樹

(はませ・まさき)1984年生まれのライター、インタビュアー。お笑い、ドラマ好き。移動中に深夜ラジオ聴くのが癒やし。