『正直不動産』5話 クールな永瀬(山下智久)の熱いセリフと、表情豊かな月下(福原遥)の「優しい嘘」

2022.5.10
正直不動産5

文=米光一成 イラスト=たけだあや 編集=アライユキコ


NHKドラマ『正直不動産』(火曜よる10時~全10回予定)。原作は『ビッグコミック』(小学館)連載中の同名コミック。ゲーム作家(『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』など)でライターの米光一成がレビューする(ネタバレを含みます)。


喜怒哀楽をはっきり強く出す演技の福原遥

山下智久主演『正直不動産』5月10日(火曜日)NHK総合午後10時から第6話が放送だ。

祟りのせいで嘘がつけなくなってしまった主人公の永瀬財地(山下智久)。風が吹くと、正直に本音をしゃべってしまう。契約を取るために、嘘をつきまくっていた永瀬は、この祟りのせいで「残念ながら嘘がつけない人間」であることを武器に悪戦苦闘するのだった。

その部下として奮闘する新人営業の月下咲良。カスタマーファーストを貫いてがんばるが、営業成績は伸び悩む。
第5話は、そんな月下咲良が父親と8年ぶりに再会をするエピソードだった。原作漫画では4巻に収録されている「欠陥住宅」の回がベース。

月下咲良を演じるのは、福原遥。2005年のTBSドラマ『恋の時間』に子役でデビューし、2009年のNHK料理アニメ『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』のまいんちゃん役で人気に。2022年後期のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』ヒロインに決定している。喜怒哀楽をはっきり強く出す演技で、彼女が登場することでドラマが活き活きとしてくる。

『正直不動産』<14巻>大谷アキラ/夏原武 原案/水野光博 脚本/小学館
『正直不動産』<4巻>大谷アキラ/夏原武 原案/水野光博 脚本/小学館

登坂不動産とミネルヴァ不動産の対決

月下咲良が8年ぶりに父親(加藤雅也)と再会する。 タチの悪い不動産屋に騙されてローンを組まされたせいで家族がバラバラになり、失踪していた父親だ。父親は、3LDKの分譲マンションを探していると言い、月下咲良が探すと申し出る。が、父親は何かを言い出せない様子。

月下は父親のためにはりきって家を探すが、月下の父は、ミネルヴァ不動産の誘いでタワーマンションの内見へ。

築5年でリノベーションしていることに不信感を抱き、欠陥住宅じゃないかと永瀬は推測する(悪徳不動産のミネルヴァの物件だし!)。案の定、父親は、「先に内見に来た人の電話が」というおなじみのサクラ営業の口車に乗って(またかよ!)、売買契約にサインし始める。
サインし終える直前に、永瀬と月下が内見現場に突撃して止める。

「永瀬さん、また言いがかり?」

ミネルヴァ不動産の花澤(倉科カナ)&西岡(伊藤あさひ)と、登坂不動産の永瀬&月下、真正面から対決である!


ピンチに追い込まれる永瀬

他社がやってる内見の場面に突撃したのだから、慎重に言葉を選ぶべき場面だ。が、正直風が吹いて、(下手なことを言えば訴えられる可能性がある)と考えながら、永瀬は耐えられずに正直な言葉というより暴言を吐いてしまう。

「お答えしましょう! ここが欠陥住宅だからです」
「何を証拠に言ってるんですか?」
「証拠ですか。ありません」

永瀬は、完全にピンチに追い込まれる。
「もしこのマンションに欠陥がなければ営業妨害どころか名誉毀損になりますよ」
実は、西岡はこの部屋が欠陥住宅であることを知っているが、花澤は知らされてなかったことがラストで判明する。花澤にとってみれば、永瀬は、内見に乱入して、自分の勤め先を悪徳不動産扱いし、欠陥住宅だと言い出した男なのだ。

ちょっと無理があるよーー町村さーーーん

インスペクション(住宅診断)対決となる。

登坂不動産側で選んだインスペクター(住宅診断士)の町村さん(中村靖日)に診断してもらうことになるのだが、町村さんにもミネルヴァ不動産の魔の手が。西岡によって「うちの調査は優先的に回すから頼みますよ」と密約を結んでいたのだ。

各種チェックに合格。町村さんは、最後、寝室のきしむ床をサーモグラフィーカメラでチェックする。町村さんは何も言わず書類を書き始める。

ここからドラマ的にも綱渡りでドキドキするのだが、ミネルヴァ不動産は勝利を確信し契約を結ぼうとする。
「永瀬さん、裁判の準備をしておいてください」と花澤も勝利の笑みを浮かべる。
正直風が吹き、永瀬は町村さんに訴えかける。「町村さん、本当にいいですか? このままだと、あなたのインスペクター人生今日で終わりですよ」と。

「あなたがやるべきことは家の欠陥を見つけるだけでなく、その家で暮らす人々の生活を守ることですよね」

誘惑に負けず「これが私の仕事ですから」と言って不正を暴露する最後のチャンスの場面。だが、この場面で、町村さんは部屋から出ていってしまう。 完全に詰んだかに思われるが、月下がバールを持ってきて床下を剥がすという暴挙に出て、永瀬も手伝って床下を剥がして、欠陥が判明するのだった。

インスペクターの町村さんは「あ、やっちゃいました?」って言って大きなカバンを持ってきていたので、何か追加調査をするつもりだったのかもしれないけど、契約を強引に推し進めようとした場面を見て何も言わず部屋を出ているので、今さら「これが私の仕事ですから」ってカッコつけるのはちょっと無理があるよーー町村さーーーん。

誤解されやすいヤツかなと思っていた桐山が?

そして、ラストに驚愕の事実が。登坂不動産のパソコンにログインしていた人物が桐山だと判るのだ。しかも、ミネルヴァ不動産の車に、ミネルヴァ不動産の鵤(いかるが)社長と桐山が一緒に乗り込むのだ。
第3話で、オープンした駄菓子屋のチラシ配りを手伝いに来てくれたり、第5話でも、月下に「親とは話せるときに話しておけ」とアドバイスしたり、ライバルで誤解されやすいヤツかなって印象の桐山。彼がスパイなのか?

ログインデータを渡す人の場面が怪しかったり(腕しか映さず「何かあったら私中島まで」とわざわざ名前を言わせている)、登坂不動産の近所で車に乗っていたりしている(スパイだったらそんな迂闊なことはしないのでは?)ことを考えると、勘違いでどんでん返しもあるかもしれないと推理するのだが、果たしてどうだろうか。

ミネルヴァ不動産が大手ではなく登坂不動産を目の敵にして仕掛けてくるのも何か狙いがありそうだし、ミネルヴァ不動産のリーダー格である花澤も、今回の一件で疑念を持ち始めたので、このまま単純な悪役として対立するだけではなさそうだ。

月下咲良は、表情が顔に出る

第5話、喜怒哀楽をはっきりと顔に出す月下が、いつも以上に泣いたり笑ったり怒ったりした回だった。考えてみると、永瀬も、桐山も、ほとんど喜怒哀楽を顔に出さない。桐山はいつも何を考えているのか表情に出さない。月下にオススメ物件を知らせるときもさりげなく資料を置くだけで何も言わないし、チラシ配りを手伝うときも表情を変えない。永瀬もクールで、町村さんに熱いセリフを吐くときも表情を大きくは変えないのだ。

月下咲良は、表情が顔に出る。月下のお父さんも、だ。隠し事があるときは目をそらし、言いあぐねているときは叱咤するように自分で自分をビンタする場面もあった。優しい嘘は、豊かな感情表現によって半ばバレることで正直さにつながっているのかもしれない。


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米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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