L.M.モンゴメリ不朽の名作『赤毛のアン』に、大胆な現代的アレンジを加えたNetflixドラマ『アンという名の少女』シーズン3第5話「恐れを知らぬがゆえの強さ」は、カウンティフェア(農作物品評会を中心にした夏祭り)が近づくなか、アンたちの「性への目覚め」を中心に展開していく。『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』の作者でライターの米光一成による全話レビュー。
アンとギルバートのダンス
ステイシー先生がみんなを森に連れていって、自然について解説している。が、生徒たちは「生殖」や「ムネ」や「発情期」という言葉に過剰反応して気もそぞろ。
カウンティフェアにむけて、ダンスの練習をするのだが、ここでも、手をつなぐのつながないのでわーきゃーと騒がしい(日本だけじゃないのだな、こういうの)。
しかも、ルビー・ギリスが母親から「男子に近寄ると妊娠する。触ったら確実に妊娠よ」と言われていて、「わたしたち全員、妊娠したに違いない」とみんなに言って大混乱。「父親もわからない」「ひどいわ、先生!」と大騒ぎになり、ステイシー先生は、しどろもどろになりながら妊娠について解説するハメに。
シーズン1で、アンは引き取られた家で性的な行為も目にするような環境下だったことが描かれたが、妊娠する「段階」とは理解してなかったようだ。
ダンスの練習でアンとギルバートが踊って、ちょっとお互いを意識している様子(スローモーションでふたりの表情をたっぷり見せる演出!)。アンに好意を抱くチャーリー・スローンが「家まで送る」と申し出る。タイミングが悪い!
しかも、「感情的で考えすぎると不妊になる」とチャーリー・スローンが何の根拠もない暴論を言ってしまい、アンはパニックに。
女子代表で、医者をめざすギルバートに「知性と感情が強い女性は不妊になるのか」と質問する。もちろんギルバートはノーと答えるのだけど。
ダイアナとジェリーの秘密の恋
ダイアナの恋も描かれる。第4話でひょんなことから家に行ったジェリーとの恋だ。ジェリーは、ダイアナの帰り道に現れ、一緒に歩きたいと言う。ダイアナは、「母が不適切だと怒る」と断ろうとするが、帰ろうとするジェリーに、結局「このまま一緒に歩きたい」と言って、ふたり並んで歩くのだ。
その後も、一緒に帰ろうとするアンを断って、ジェリーが待っているのを期待するダイアナ。だが、人目は気になるようだ。そんなダイアナに、読み書きを勉強したジェリーは『フランケンシュタイン』の一節を朗読する。
「わたしたちはこの世界で孤立する怪物。それゆえにお互いの絆は強まる」
ジェリーのイニシャル入りのハンカチをこっそり贈ったりして、ダイアナとジェリーの秘密の恋は、どう展開していくのか。
「わたし女の子でよかった」
アンは女子を集めて、『スコットランドの風習』という本で読んだ「ベルテイン祝祭」をしようと提案。べルテイン祝祭というのは、古代ケルト発祥の神秘的なお祭りのことだ。「輝きの湖」の近くに集まって、焚き火を囲んで、「私達女性は気高く強い存在としてこの神聖な夜に誓いをたてます」「誰を愛し信じるか自分で決めます」「自分の優れた知性に自信を持ちます」「わたしたちを見下す男は断固拒絶します」「わたしたちは無敵、想像力は無限です」と、少女たちが誓いを立てて踊る。
ルビーが急にしゃがみこんで、みんなが「どうしたの?」と心配してのぞきこむ。するとルビーは叫ぶ。
「わたし女の子でよかった」
みんなも口々にそう叫んで、踊りつづけるのだ。
モンゴメリの原作『赤毛のアン』は、男の子を引き取ろうとしたら手違いで女の子だったことが発端となる物語だ。だから、その手違いに気づいたアンは「私がいらないのね! 私が男の子じゃないから、いらないのね!」と叫ぶ。
「赤毛のアン」のラスト近くで、自分が男の子だったら、とアンがマシューに言う場面がある。
「もし私が、マシューが手配したとおり、男の子だったら」アンは悲しそうに言った。「今ごろはたくさん手伝ってあげて、いくらでも楽にしてあげられたのに。そのためだけでも、私が男の子だったらよかったのにって思うわ」
『赤毛のアン』L.M.モンゴメリ 著/松本侑子 訳/文藝春秋
「そうさな、でもわしは、一ダースの男の子よりも、アンのほうがいいよ」マシューはアンの手をとり、掌で優しくなでた。「いいかい、一ダースの男の子よりもだよ。そうだよ、エイヴリー奨学金をとったのは、男の子じゃなかったろう。女の子だよ……わしの娘だ……わしの自慢の娘だよ」
第6話「願望の行き着くところ」では、夏祭りカウンティフェアで、アンとギルバートとウィニフレッドの三角関係がこじれちゃう展開に!
『アンという名の少女』全話レビュー・あらすじまとめ/記事一覧
『アンという名の少女』概要
原題:Anne with an “E”
制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット
キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)
Netflixシーズン1から3まで配信中
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