日本の現在が窺える、合奏形態のメンバー
合奏形態におけるドラムは、『午後の反射光』での屈指の名曲「遠視のコントラルト」にも参加した石若駿。クラシック&ジャズをルーツに、東京藝術大学音楽学部器楽科打楽器専攻卒業という経歴を持つ彼は、King Gnuの前身バンドSrv.Vinciの元メンバー(King Gnuの常田大希とは藝大の同級生)。
現在はCRCK/LCKS、millennium paradeにも所属。くるりのライブサポートや米津玄師「感電」のレコーディングに参加するなど、あらゆるシーンでそのビートが求められている人物だ。
ベースに参加するのは、King Gnuのメンバーである新井和輝。世界的な知名度を誇るジャズベーシストの日野賢二や河上修に師事していた彼は、君島が暮らしていた青梅市にほど近い福生市の出身。君島とは高校時代、福生にある老舗セッションバーで出会って以来の仲だという。
2020年11月には、シンガーソングライター・高井息吹の新作EP『kaléidoscope』を君島と共同プロデュースし(ライブバンド「高井息吹と眠る星座」にも参加)、互いの音楽的素養を理解している盟友と呼んで過言ではないだろう。
ギタリストとして参加している西田修大は、吉田ヨウヘイgroupのギタリスト(2019年2月に脱退)として活躍していたのをはじめ、ものんくる、安藤裕子、DAOKOなどをサポート。近年では、中村佳穂BANDの一員として、彼女の傑作アルバム『AINOU』(2018年)の制作にも関与している。
また、石若駿のボーカル・プロジェクト「Shun Ishiwaka SONGBOOK PROJECT」にも参加しており、合奏形態のメンバー同士も、それぞれの活動に影響を与え合っている関係性にある。
ジャンルを超えたネットワークが“オルタナティブ”を更新する
このように、テン年代後半~2020年代以降のシーンを語る上で外すことができない気鋭の音楽家たちが、こぞって参加しているのが君島大空の合奏形態なのである。メンバーそれぞれが参加する別のユニットやプロジェクトは、オルタナティブ・ロックと形容できる今回の音源とは音楽性においてまったく異なるものも多く、それがリスナーの好奇心や興味をそそられる部分になっている。
古くはティン・パン・アレー、ナイアガラ・レーベル、YMO周辺、90年代で言えばBOREDOMS、テン年代以降であればceroのように、メンバー/レーベル/関係者のピープル・ツリーを想起するだけでもエキサイティングなネットワークが広がっているのだ。ストリーミング・サービス隆盛の時代にあって、どうしても“クレジット”は軽視される傾向にあるが、だからといって見逃されるにはもったいないほどの音楽的ガイドマップが、君島大空を中心に描かれているのである。
君島大空の場合は、あくまで君島のソロ・ユニットであり、ライブでの演奏など楽曲の理想を具現化するひとつの手段として合奏形態が存在している。バンドという共同体にメンバーを縛ることなく、風通しのよいゆるやかな連動性の中で完成度を高めていくスタンスは、まさに現代的な在り方と言えるかもしれない。私は幾度か合奏形態のライブを観ているが、そのアンサンブルはまさに鉄壁で、そうしたゆるやかな連動性が弱点にはなっていなかったことも記しておく。
『縫層』は、まことにオルタナティブなギター・ロックアルバムである。ここでいうオルタナティブは、90年代のシューゲイザーやグランジ、ローファイ、さらにその派生であるドリーム・ポップといった要素と共振していると考える。ただ、その上で、本来のオルタナティブ――既存のものを更新する新しきもの――としての先鋭的な要素を持ち、日本の音楽シーン全体に影響を与えるような可能性を秘めた作品と言えるのだ。
君島大空が構築するサウンドと、ジャンルを横断して集結したメンバーたちによるアンサンブルから見える世界は、果てしなく広く、とてつもなく大きなものなのである。
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君島大空 遠隔夜会『層に電送』開催決定!
君島大空が2nd EP『縫層』をリリース、その発売を記念して恵比寿リキッドルームより生配信ライブを行います。
出演は西田修大(Guitar)、新井和輝(Bass)、石若駿(Drums)の君島大空合奏形態のメンバーたちと共に、『縫層』に収録された楽曲を中心にお届けします。
新型コロナウイルス拡大の影響もあり、合奏形態でのワンマンライブは2020年2月以来、待望のライブとなります。
2020年を締め括る注目のライブをぜひお見逃しなく!
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日時:2020年12月21日(月)
配信サービス:PIA LIVE STREAM
配信開始:20:00
アーカイブ配信:2020年12月28日(月)23:59まで
配信チケット:2500円(税込)
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詳細はこちらからご確認ください。関連リンク
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