永遠じゃない“今”を歌う──LANA×Elle Teresa「こんな日は」に宿る、若さの切実さ

2026.5.18
LANA、Elle Teresa

文=奈都樹 編集=藤井里音


若さは有限である。だからこそ、限られた「今」を全力で生きたい。そこには将来に対するワクワクと不安が混在していて、キラキラしているけれども時に厭世的になる。

『POP YOURS 2026』のオリジナルソングとして書き下ろされたLANAとElle Teresaによる楽曲「こんな日は」は、そんなモラトリアム真っ只中の若者が持つ空気感を漂わせる。

フィメールラッパーとして独自のスタイルを築き、多くの若者を魅了しているふたりがタッグを組んだ本楽曲は、若さと大人の狭間で生まれる心の揺らぎを内包している。その揺らぎを肯定とも否定とも違う角度で捉えて表現したリリック、MVの魅力に迫る。

この景色が永遠でないという自覚

<2026 出来過ぎたストーリー/マッチ売りからセンターステージへ>

スターダムを駆け上がるサクセスストーリー的な歌詞が、LANAとElle Teresaの曲となれば、女の子が“正しい幸福”を初めて手にした瞬間の、戸惑いや不安混じりの喜びに聴こえてくる。

これは今年の『POP YOURS』のために書き下ろされた曲で、本公演でLANAはヘッドライナー、Elle Teresaはセカンドヘッドライナーを務めた。だから<センターステージへ>で、その後に<非行少女達 飾るエンディング>と続くのだけど、しかし最後に<こんな日は>と繰り返すところには、この景色は永遠ではないと自覚しているような、ほんの少し悲観的な空気が漂う。

さまざまな想像を巡らせて自分事として重ねたくなってしまう魅力が、ふたりにはある。LANAの窮屈な社会を一蹴するこぶしを効かせたハスキーな声と、Elle Teresaの閉塞感のある気だるいラップ。自分の「欲しい」を丸ごと身にまとったメイクとファッション。歌、スタイル、言語感覚、そのすべてにキラキラとした時間の中にいる若さ特有の、さらにいえば地元と都会を往復する女の子の複雑さがある。

「今」輝くための貪欲さや、愛への渇望、そこに同居する男性や社会に消費されまいとする明るい反骨。煌びやかな都会への憧憬と、地元への愛着や寂寥(せきりょう)感。だからこの曲のMVが、閑静な住宅地と夜景が一望できるビルで撮影されていたことも納得だった。

若さへのまぶしさと切実さに胸が詰まるふたりのリリック

彼女たちからあふれ出すそうしたものは、ラップミュージックに精通していようがいまいが、非行の過去があろうがなかろうが、きっと多くにとって身に覚えがあって、私にもある。彼女たちの音楽を聴くたび、東京の街で過ごす夜の刺激と、朝ひとり地元に帰ってきたときの現実に引き戻される感覚を、毎晩繰り返しては刹那的な幸せの中を全力で生きてたころを思い出す。

だからLANAが自分をプリンセスだと堂々と歌うたびまぶしい気持ちになるし、Elle Teresaの「エルいちばんかわいい」というボイスタグが鳴ればその切実な願いに胸が詰まる。ふたりの音楽性には若さという混沌があり、そこに真正面からぶつかっていくのがLANAで、冷静な眼差しをむけているのがElle Teresaだと、私は思う。

そしてそれは今、過激な主張が蔓延する社会に少々気が滅入っているなかで、強気で威勢のいいラインの連続よりもずっとリアルに響く。そんなふたりにヒップホップの域を超えてさまざまなシーンからオファーがかかるのも、『POP YOURS』でふたりがそろってステージに現れた瞬間に悲鳴のような歓声が上がったのもわかる気がした。

出来過ぎたストーリーの一瞬を噛みしめる

<正しいことしたいでも何回も間違う><大人の階段上る一緒にしてね案内>というElle Teresaの歌詞には、道徳的な正しさだけを信じていた段階よりもう少し現実的で、しかし自分の矛盾を肯定できるほどの割り切りは手に入れていない、若さと大人の狭間にいる心の揺らぎがある。そういう不安定ななかで、何があっても未来をまっすぐに信じられるほど、必ずしもポジティブでも強靭でもいられない。だからきっとLANAも<こんな日は>と噛みしめるように繰り返すし、この曲には一貫して出来過ぎたストーリーを束の間愛でるようなセンチメンタルな響きがある。

30代になって複雑で美しい時間を通過した私には、ふたりの姿はあまりに輝いていて、その輝きを失いかけているからこそ何度もこの曲を聴いてしまう。一方で、同じ時間の真っ只中にいる女の子たちは、きっと彼女たちの曲を聴いて、目を輝かせたり、胸を痛めたりしているのだろう。そう思うと、今はあのころより多少は生きやすくなっているとしても、少しうらやましくもなってしまうのだけど。

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奈都樹

(なつき)1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターとして活動しながら、クオーターライフクライシスの渦中にいる若者の心情を様々な角度から切り取ったインタビューサイト『小さな生活の声』を運営中。会社員時代の経験や同世代としての視点から、若者たちのリアルな声を取材している。