20221217:音、波動、そして光【シュウ・フェンファン(INI)エッセイ連載「0000/00/00」第7回】

文=許 豊凡


グローバルボーイズグループ・INIのメンバーであるシュウ・フェンファンが、いつかは忘れてしまうかもしれない「ある一日」の心の動きを大切に書き留めるエッセイ連載。

連載第7回は、初めての全国ツアーで味わった感動を思い出す。

※本稿は『Quick Japan』 vol.184に掲載した連載エッセイの転載です。

20231129:空白だった時間

シュウ・フェンファン 1998年6月12日生まれ、中国出身。慶應義塾大学在学中に『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』に出演し、グローバルボーイズグループ・INIのメンバーとしてデビュー。2025年4月からはレギュラー(不定期)として情報番組『Day Day.』(日本テレビ)に出演

聞こえる。無数の光の奥から、拍手の音、喜びの波動。

2022年の年末、12月17日。告知から約半年の準備期間を経て、僕たちINIにとって初めてのアリーナツアー『2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR [BREAK THE CODE]』が、愛知公演を皮切りに始まった。

ありがたいことに、今年6月で結成5年目を迎えたINIは、すでに3回のアリーナツアー、1回のホールツアー、そして2回のドーム公演を経験してきた。さらに今年の秋冬には、初めてのドームツアーも控えている。どのツアーも僕にとって、メンバーのみんな、そしてファンのみなさんにとって大事な思い出になっている。当然、初めてのツアーである『BREAK THE CODE』のことも、3年半ほど時間が経った今でも、まるで昨日のように鮮明に思い出す。

デビューして1年。それまでにファンミーティングやいくつかのイベント、フェスを経験してきた僕たちにとっても、ツアーというものはまったくの未知数で、初日の愛知はとてもドキドキした気持ちで迎えたことを今でも覚えている。

さすがに5年間でたくさんのステージを経験してきて、ある程度落ち着けるようにはなったが、今振り返ると、1年目の僕は本番になるとかなり緊張しいなほうだったと思う。

そしていつも緊張感のピークを迎えるのは、本番で登場する直前の瞬間だった。イヤモニとマイクはすでに装着した状態で、公演のオープニングVCRの音楽も、リハーサルで何十回も聞いてきたはずなのに、なぜかその瞬間になるとやけにゆっくり聞こえた。深呼吸、位置につき、セット。あとは、目の前のLEDスクリーンが上がるのを待つだけだった。

そのとき、僕には聞こえた。LEDスクリーンの隙間からペンライトの光が差し、さらにその奥から拍手の音が。

普段ライブをしているとき、僕は習慣でイヤモニを常に両耳に着用している。会場にもよるが、イヤモニを外すと反響で自分の声どころか、外の音と耳の中の音がごちゃごちゃになって、何も聞こえなくなることが多い。その仕組み上、イヤモニは一人ひとりの耳の形とぴったりハマるようにオーダーメイドされていて、いざつけると外部の音を驚くほどすべてきれいに遮断してくれる。そのおかげで、僕たちがステージ上で音楽に集中しながら歌ったり踊ったりすることができる。そう、そのすべての音には、当然拍手や歓声も含まれている。

さらに、当時はまだコロナで歓声が規制されていて、結局ツアーは最後まで拍手のみが許可されていた。僕たちはありがたいことに、デビュー当時から有観客での公演を行ってきたが、それでも自分たちがそれまで思い描いていたライブとは違い、拍手だけが響く会場には心が持たないのではないかと思っていた。

そう。始まる前までは。

ステージに立つと、僕たちは会場中から視線を向けられる。でも、だからといってこの会場の主体が僕たちになるのかといわれると、僕はそうは思わない。ライブ会場の主体は、いつだってライブをする側と観る側、その両方だと思う。会場にいる全員が、そのライブの主人公だ。

ライブに限らず、普段の活動の中でも、僕たちは常に「与える」と「もらう」を繰り返している。過去の僕たちは、誰かに照らされながらこの道を選び、今の僕たちはその光をまた誰かに共有する。そして同時に、また新しい誰かに照らされる。今の自分の生きる意味は、もちろん将来の自分のためでもあるが、それ以上に、チーム、そして常に道を照らしてくれるファンのみなさんのためにある。でもその過程で、きっと自分も、誰かが生きるいくつかの瞬間において、力になったり、道標(みちしるべ)になったりしているのだと思う。

そしてそれを改めて確信したのは、まさに初めてのツアーだった。

LEDスクリーンが上がり、客席一面に広がるペンライトの光、僕たちのシルエットが見えた瞬間に大きな拍手がイヤモニを突き抜いて響いていた。その一つひとつがまっすぐに感情の波動として伝わってきた。その媒介が声でなくても、僕たちの心はたしかにつながっていた。お互いがお互いの存在を、しっかり感じ取れていた。

アルバムの準備、年末のステージ、その全部と並行して進んでいたツアーの練習は、つらいこともたくさんあった。京セラドーム大阪の『MAMA AWARDS』の本番前日に大阪でスタジオを借りて、みんなでツアーの練習なんかもしていた。毎日とにかく目の前のことを必死にこなしながら、何かに追われるように過ごしていた。

もちろんやれることはやってきた。それでも、本番が近づくたびにどこか拭いきれない不安があった。本当に大丈夫だろうか。ちゃんとツアーとして成立するのだろうか。そんなことばかり考えていたときもあった。

しかし、1曲目の「Rocketeer」が始まり、そんな不安も一瞬で吹き飛んでいた。

気がつけば、愛知、大阪、東京、そして福岡を回って追加公演以外の全公演が終わった。僕たちにとって初めて訪れる街も多く、その土地で初めて会うファンの方にもようやく会えて、毎日が新鮮で幸せだった。ライブをして、おいしいものを食べて、みんなで笑って。

『BREAK THE CODE』は翌年1月8日の日本武道館公演をもって終了した。僕があれだけ涙を流しながら聴いていた「Runaway」も、そのころには微笑みながら歌えるようになっていた。今ではファンとの合唱曲の定番となっている「Runaway」だが、当時はまだ声出しができなかった代わりに、事前にファンのみなさんからメンバーの人数でもある11文字の応援メッセージが募集され、武道館のサプライズ演出として歌唱中にうしろのスクリーンへ映し出されていたことを今でもよく覚えている。

声が出せなくても、お互いを信じ合っていれば、媒介はなんであろうと心の音がきっと聞こえる。ステージの向こう側に光がある限り、僕はその光に向かって歌い、そして踊り続けていたい。

第8回(WEB版オリジナル原稿)は8月7日(金)17時に配信予定です。

この記事の画像(全1枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

許 豊凡

(しゅう・ふぇんふぁん)1998年6月12日生まれ、中国出身。慶應義塾大学在学中に『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』に出演し、グローバルボーイズグループ・INIのメンバーとしてデビュー。2025年4月からはレギュラー(不定期)として情報番組「Day Day.」(日本テレビ)に出演