なぜ僕は女性に好かれたいのに、しゃべれないのか。学生時代からの難問がついに解決!?<三遊間さくらいのしゃべり足りない心域>

三遊間さくらい

その言葉数の多さから“多弁師”と呼ばれるお笑い芸人・三遊間さくらいが、ラジオやライブで話すほどではないけど、誰かに聞いてほしい心の内や日常の中での発見を書き留める連載「しゃべり足りない心域」(こころいき)。

30歳になった今でも、さくらいは女性とコミュニケーションを取ることに苦手意識がある。しかし、最近ようやくその意識を変える糸口を見つけたという。

女性とコミュニケーションが取れない理由を分析

初めまして、三遊間のさくらいといいます。芸歴8年目大阪吉本に所属しています。普段は難波にあるよしもと漫才劇場を中心に漫才をさせてもらっているお笑い芸人です。コンビともに学生時代は野球部に入っており、僕が主にショートを守っていたので三遊間というコンビ名で活動しています。

三遊間
三遊間(左は相方の稲継諒、右がさくらい)

僕の何が編集の方に引っかかったのかわかりませんが、コラムの連載の話をいただいたので、文章に自信はありませんが期間限定ということで引き受けさせていただきました。とにかく「なんでもいいから思ったことを書いてくれ」と言われたので、さっそく本題に入りたいと思います。

いきなりですが、僕は現在進行形で女性とコミュニケーションを取るのが苦手です。中学も高校も共学でしたが、女子生徒との会話は本当に数えるほどしかありませんでした。

正直、コラム史上一番情けない書き出しかもしれません。お母さんごめんなさいって感じです。

ではなぜあんまりしゃべれなかったのか、それは僕が女性を良くも悪くも強烈に意識しているからです。

学生時代、まわりを見渡すと女子生徒のほうからしゃべりかけてもらってる“一軍”と呼ばれる男子生徒がいました。そこで僕はひとつのことに気づきました。女子からしゃべりかけるパターンがあるということは、それがない僕はしゃべりかけられたらしゃべってもいいという存在か、またはしゃべりたくないという存在だということです。

いや、もしモテたいと思ってるんやったら話しかけろよって思うかもしれませんが、当時の僕は相手にされなかったときが怖すぎて、自分からしゃべりかけることを放棄していました。

この感覚はもちろん今でもあります。美容室やちょっとした店でも、女性がいるとかなり緊張します。

僕は基本的に女性に好かれたいという思いがあります。好かれたいの一点突破ならまだよかったのかもしれません。同時にこの人嫌やなと思われたくないという側面もあります。このふたつの感情は似て非なるものだと僕は思っています。

後者の感覚はマイナスに思われないための作業で、最高得点が「0点」なので非常にしんどいです。そして僕は後者のほうが強いです。しかも自分の嫌なところって、外見も内面も自分が一番知ってます。僕は自分という人間をまったく評価していません。簡単な言葉にすると「自信がない」ってやつです。強みはないけど弱点はたくさんある、その弱点を女性に撃ち抜かれたときに、僕は立てなくなると思ってました。

一方、男に対してはクラスの中心になっているいわゆる“一軍”と呼ばれる生徒を心の底から嫌っていて、そういう人間には見向きもせず、ケンカも強くない、勉強も運動もそこそこなのに、裏で「あいつはあかん、あいつはおもしろくない」と、そいつらを否定する熱量はえぐいぐらいありました。お前らとしゃべる必要もないんじゃと言わんばかりに、好きなようにしていて今思うと浮いていました。

しかし僕は全然平気で、そいつらのご機嫌をうかがうぐらいやったら嫌われてるほうがマシだ、いや死んだほうがマシだと、そのままのスタンスを貫いてきました。それを許容してくれる同志数人だけが友達でした。数は少なかったですがそれにまったく不満はありませんでした。

まとめると学生時代の僕は女性とはしゃべれない、男とは仲よくするやつとそれ以外をはっきりと分け、時には口撃も辞さないという簡単にいうとコミュ障です。女性には10人いたら10人に好かれたいと思い、男に関しては10人いたら2人としゃべれればそれでいい、なんやったらほかの8人は嫌と思っていました。

そもそも人間にハマってないのだから

そんな僕が芸人になりました。芸人のみなさんは男女問わず、非常にしゃべりやすいです。おそらくこれは芸人が「おもしろいということを目指す」という、ひとつの絶対的な価値観のもと集まった人たちだから、何をよしとするかが個人個人でバラバラな学校やアルバイト先の人より、圧倒的に話しやすかったからだと思います。同じ価値観の人って話しやすいですよね。

そうやって芸人になって、話をする人の数が昔より圧倒的に増えました。

僕が言いたいことはここからです。

僕はひとつのことに気がつきます。僕はたくさんの芸人さんとコミュニケーションを取るなかで、仲よくなりたい!とか、この人とは合うぞ!って思った人に対するコミュニケーションの取り方が全部似ていることに気がつきました。これは仲よくなる前に距離を詰めるところからです。

てことは、そういう人に対するコミュニケーションの取り方が僕の中での「肩ひじ張らない楽なコミュニケーション=自分の得意なコミュニケーション」なんじゃないかと気がつきました。もちろん仲よくなりたい気持ちが大きいことも、うまくいく秘訣ではあると思います。

よく人と仲よくなるコツとして素を出せみたいなことを言われますが、「素を出す」って言われても、自分のどれが素なのか自分でもよくわからないときがあります。人間いろんな特性を持っています。意外と自分が暗いのか明るいのかだってわかりません。僕は人はどっちの性質も持ち合わせてるものだと思ってます。

それに気づいてから、人と仲よくなる1個目のコツは、自分の得意なコミュニケーションの取り方が相手にハマるかどうかなんじゃないか、と考えるようになりました。もちろんコミュニケーションが得意な人は、話し相手ごとに合ったパターンを持ってると思います。あくまでも僕ぐらいヘタな場合です。

てことは、俺はこの自分の得意なコミュニケーションのパターンを女の子にぶつけたらいいんじゃないか、と思うようになりました。そうです。これは別にコミュニケーション能力の向上を目指したコラムではありません。僕がいかにしてモテるようになるかに重きを置いてるので、さっきの一文でひっくり返った方もおられるかもしれません。

でもさくらい、そのコミュニケーションがハマらんかったらどうする? お前女の子に嫌やと思われるんにめっちゃビビってんちゃうの?という言葉が聞こえてきます。

そこで、このことから逃れる定義を考えました。そこでたどり着いたのが、少し前に出てきた「女性には10人いたら10人に好かれたいと思い、男に関しては10人いたら2人としゃべれればそれでいい、なんやったらほかの8人は嫌と思っていました」、これです。

これカッコつけて「男2人」でいいって書いてますが、そもそも10人いても男2人としか仲よくできなかったんです。僕を相手にしてくれる人はそんぐらいの割合でした。女子には全員に好かれようとして、誰にもしゃべりかけてもらえなかった。まあけっこう誰も近寄ってくんなみたいな雰囲気は出してもうてたんですけど。まあでも俺がイケメンやったら誰かはしゃべりかけてきてましたわ。

そうです。僕はそもそも人間にハマってないんです。それに気づいたんです。俺が嫌いで仕方なかった何もおもしろいことを言わないただのお調子者も、カッコつけるだけが生きがいみたいなアホも、女の子といい感じでしゃべれてるやつって男の友達も多かったんですよ。人間にハマってるんですよ。

じゃあ考えることはひとつやん。そもそも器用にコミュニケーションが取れないんだから、自分の中で得意なコミュニケーションのパターンで女の子に接する。で、無理やったらその人は無理だっただけ、でええやん。だって基本人間にハマってないねんから。

これは大発明です。めっちゃ意識してた女の子を男と混ぜこぜにできたんです。やったぞ、俺。あんなむずいと思ってた難問の解決の糸口を見つけたぞ。

じゃあ、どうやそれを使って成果を上げたんかさくらい。美女と付き合ったり、いい思いできたんかさくらい、と聞きたくなりますよね? 成果はまったく上がってません。

頭ではわかってるけど体はついてこない。こないだもABC(朝日放送テレビ)のメイク室でめちゃくちゃかわいいアナウンサーさんに話しかけられたときに、一番僕とかけ離れた「カッコつける」というコミュニケーションを取る方向に舵を切ってしまいました。これを読んで実行してうまくいった方教えてください。

こんなことを書きましたが、僕は美人アナウンサーやグラビアアイドル、テレビ局の受付嬢、かかりつけの病院の看護師さんにお笑い一本で言い寄られることをまだまだ期待しています。

ともかく受け身受け身でモテたい。DMバンバン届いてほしい。そう思ってるというか願ってます。

まあ人はそう簡単には変わらないですし、僕もこれを実行できるかと言われたら難しいところです。

成長とは過去の自分を否定していくこと

ただ、ここまで書いて全部ひっくり返すようなことを言いますが、これはあくまで応急処置な気がします。絶対いろんな人と円滑にコミュニケーションを取れたほうがいいからです。これは今の自分のままでもコミュニケーションが取れる一個の考え方だと思います。

でも何事もいったんは開き直らないと始まらないです。始まらないと成長できません。

とりあえずバットを振ってみないとなぜ打てないかわかりません。とりあえず開き直って、振ってみる。そしたら絶対何かが始まります。サードゴロを打って嫌われたら、次は違うスイングを試す。ほんまに打ちたい場面がきっと人生には来る気がします。そこまでに、自分の人生のWBCの決勝の打席までに、山ほど凡打を打っておくのです。最近、僕は1度目のスイングをすることができました。しかし、スイングしてみると僕という人間はこのままではいかんなということがわかりました。

これやったらはよ振ったらよかった、と思いました。

僕は成長とは過去の自分を否定していくことだと思っています。あのときの俺、ほんまに死んでくれや!という感情には恥ずかしさもありますが、今の俺はあのときの俺とは違う!というある種の爽快感があります。

まぁ、これも違うかもしれないんですが。おそらく過去のキモイ自分も許容できるのが最高な気がします。でも今のところ、僕には無理です。

本題に戻りますが、ここぞの場面でのみなさんのワンスイング目の後押しになるんじゃないか、ということでここに記しておきます。

別に僕はみなさんの味方ではありません。こんな生きづらい俺たちで円陣を組もうぜとは言いません。僕はスーパー小心者なので誰の味方にもなりません。たまに「〇〇さんを信じてたのに」とか言う人がいます。信じないでくだささい。基本、僕は僕を否定していますし、僕は僕を肯定するのに精いっぱいです。

だから僕に共感して応援してくれている人は、お前もそういうタイプの人間か。オレも私もそうやねん。まぁせいぜいがんばっていこうやって思ってください。いわばライバルです。同志です。人間として横一線です。俺、為国さん(吉本興業芸歴10年目。「ぎょうぶ」のボケ担当、兼僕の親友)、みなさんです。

僕はモテにいきます。みなさん勝負です。どうせ僕の文章を読んでる人なんかモテてないでしょ。俺を出し抜いてください。俺もみなさんを出し抜きに行きます。そして僕が出し抜いた人たちは安心してください。僕ぐらいの人間なんてまだまだ出てきます。後続がいます。そいつを出し抜いてください。

第1回はこのへんにしておきましょう。それではさようなら。

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さくらい(三遊間)

1996年5月25日生まれ、滋賀県出身。お笑いコンビ・三遊間のツッコミ担当。レギュラー番組に『三遊間のほそ犬スピリッツ』(MBSラジオPodcast)。