衝撃に次ぐ衝撃!「BIG STEAK」
また別の日。今日はインスタントラーメンコーナーにあった「重慶酸辣粉」なるものを作ってつまみにしてみようと思う。
パッケージに日本語標記などあるはずもないが、「600ml」という文字が見て取れたので、その量の湯に中身すべてをぶちまけ、ゆでてみればいいんじゃないかな? きっと。
中身は春雨のような麺、液体と粉の2種の調味料といった感じだった。そこに、生まれてこのかた一度も裏切られたことのない野菜であるところの長ネギをたっぷり加えてゆでてみる。
なんだかパッケージの写真とはずいぶん違う気がするが、まぁいいやと食べてみる。お、これは……めっっちゃくちゃおいしい! まず、スープがうまい。いわゆる四川風の酸辣(スーラー)味というんだろうか。なんだけど、わりとマイルドで食べやすく、しびれるような麻辣の「麻」の辛さもあるにはあるけど、ほんのり適度。それよりも、滋味深い出汁のうま味が前面に出てくるような味つけで、日本人でもわりとすんなり受け入れられるんじゃないだろうか。
それから麺。これが、究極にほわっほわのとろっとろのぷにっぷに。なんだけどしっかりとコシがあるのが不思議。「いくらゆでても麺の形を保つ、極細マロニー」とでも形容するのが適切なような。今後も買いつづけたい、優しい美味しさだ。
ちなみに味変要素として、途中から一緒に買った「豆豉(トウチ)入り激辛ラー油」というのを足してみた。見た目が食べるラー油的なので、前日の夜、冷奴にたっぷりと乗せて食べてみたところ、涙がボロボロこぼれるような本気の辛さで死にそうになったんだけど、この酸辣粉との相性は抜群。
穏やかだった麻辣の「辣」のほうの辛味が豪快に加わり、ビールが進み過ぎた。(※後日談:その後また「重慶酸辣粉」を作って食べたときに重大なことに気がついた。なんと、液体と粉の2種の調味料のほかに、「黒酢調味料」の小袋も入っていて、前回はこれを見落とし、入れ忘れて作ってしまったらしい。黒酢も加えて作った酸辣粉は、中華屋などでなじみ深い、いわゆるオーソドックスな酸辣味になった。個人的には、“黒酢抜き”で作るほうが好きかもしれない)
さてまた別の日。最後に残った謎の小袋を味わってみることにしよう。
パッケージの「BIG STEAK」に「素」という文字。そしてぶ厚いステーキの写真。これは完全に、ステーキ肉にまぶして焼く調味料で間違いないだろう。そう思い、すじ切りして叩いた牛赤身肉を用意し、封を開ける。
すると、まったく予想外の展開が!
なんと袋からは、全然「素」って感じじゃない謎の固形物体がぽろり。ん? もしかしてこれ、この商品自体がステーキだということ?
ものすご〜くおそるおそる、はしっこをかじってみる。
しかしなんなんだこれは、ビーフジャーキーとも違う、けっこう厚みがあってジューシーな肉。しかも味つけは中華風味で、かなり辛い。
またしてもわけがわからないな。こんな食べ物、これまで出会ったことがないぞ……。ただ、けっこう好きな味。ご飯も進みそうで、確か100円そこそこだったんだけど、夕ご飯のメインおかずがこれ1枚でも別に文句はないくらいの満足度だ。
ただ、これ、牛なの? そうは思えないんだよな〜。そもそもいったいなんの肉なの?と裏側の原材料を見てみる。すると、さらなる驚きの展開が僕を待っていた。
読めない漢字はあるが、それでもなんとなくはわかる。なんとこの商品、肉が使われていない? つまり、大豆を使って肉を模したヴィーガン的な商品ということ? 食べ終わるまで完全に、なんらかの肉だと思って食べてたよ!
牛の生肉を眺めながら大豆でできたステーキを食べつつ酒を飲む。そんな非日常感を味わえたのも、中華スーパーあればこそ。気軽に海外旅行へ行けるのはいつのことやらなこの時代に、気分だけでも旅行気分。「酸辣粉」のストックがなくなったころにまた買い物に行こう。
■パリッコのマイバスケット・イズ・スーパーマーケットは、毎月第3金曜日ごろ配信予定
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パリッコ『天国酒場』
本体1600円(税別)/184頁/四六判
ISBN 978-4-760151-48-6
発売日:2020年9月24日/発行:柏書房
「普段、何気なく過ごしていると見落としてしまう。だけど一歩入り口を入れば、そこには天国のような空間が広がっていて、夢心地に酔うことができる」――すなわち、川のほとりのパラダイス、江戸から続く老舗茶屋、山上の回転喫茶、動物園前の売店食堂、地下街の迷宮店、線路際に佇むおでん屋台などなど、「日常の隣にある非日常空間」を持つ酒のレガシー的名店、それが「天国酒場」だ。
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