発見「珍レシピカード」コレクションでスーパーめぐりはもっと楽しくなる!

2020.8.30

パリッコのマイバスケット・イズ・スーパーマーケット 第7回

文・写真=パリッコ 編集=森山裕之


『酒場っ子』、『つつまし酒』などの著書を持つ、人気酒場ライター・パリッコさんが提案する「スーパーマーケット」の楽しみ方。

スーパーで前から存在には気づいていた「レシピカード」に、ある日突然目が留まった。何かを予感し、各店のもの集め始める。そして、子供の頃に夢中だった「ビックリマンシール」収集と同じ喜びを感じる。スーパーのレシピカードにコレクション性はあるのか?

レシピカードに見出したコレクション性

いつもどおりに地元のスーパー「ライフ」で買い物をして帰ろうとしたとき、ふと、あるものが僕の目に留まった。買った商品を袋に詰め込むためのサッカー台付近にたまに置いてある、オリジナルの「レシピカード」というやつだ。専用のラックにずらりと、かなりの数が並んでいる。

そういえばこのレシピカードなるもの、「あるな、あるな」とは思いつつ、今まであまり気にしたことがなかった。戯れにひととおりもらって帰ってみるか。なんて思って、収集作業に移る。1枚、2枚、3枚、たまに横2スペース分ダブりで置いてあったりするのでそこを避け、手に取ってゆく。ところがこの作業が、なかなか終わらない。予想外に種類が多いのだ。

僕は、すでにこの時点で悟った。レシピカードって、買い物に来たお母さんなんかがついでにさらりと流し見て、もし気になったものがあれば1、2枚持って帰る。本来そういう性質のものであって、取りこぼしがないように片っ端から右手で取って左手にストックしていくのは、完全なる異常行動だ。普段から利用しているスーパーで要注意人物認定されてはかなわないので、極力何気ない顔を心がけ、口笛など吹きつつなんとか作業を終えた。レシピカードは全部で29枚あった。1枚のピックアップに平均5秒はかかっていたはずなので、計算すると2分41秒66……。これ、レシピカード棚の前に滞在した買い物客のタイムとしては、世界新に近い長さなんじゃないだろうか?

自宅に戻り、エアコンの効いたリビングでアイスコーヒーを飲みながら眺めてみる。するとこれが、予想外におもしろい。

もらってきたレシピカードを眺め始める

まず、裏表にあるカードの情報を読み取っていく楽しみがある。

表面最下部にグレーの帯が共通してあって、そこには例えば、「2020/8/26~2020/9/1 水産」とある。前半は配布期間だろうか。それにしては意外に短いし、カードごとに数字にかなりのバラつきがあるので、1枚1枚の情報をカレンダーに「←鮭のネギ塩焼き→」などと記入し、分析してみるのもおもしろいかもしれない。

また、後半の「水産」はジャンルだろう。他はお察しのとおり「畜産」「農産」とつづくが、残るもうひとつの「日配」がわからない。

「日配」とは?

気になって調べてみると、これは主に流通業界で使われる言葉で、その店や会社ごとに厳密な区分けは違うようだが、いわゆる「デイリーフーズ」。店舗に毎日配送される食料品のうち、青果や鮮魚などの生鮮食品を含まないもののことを言うのだそう。そんな業界用語が、誰でも手に取れるカードの片隅に密かに書かれている。

僕は、子供時代に夢中で集めた「ビックリマンシール」の裏面に書かれた謎のテキストを読み込んで点と点を繋げ、世界観を紐解いていった喜びのようなものを今、このカードに感じている。そして思った。レシピカードって、コレクション性あるんじゃないの? と。

スーパーごとのレシピカードのタイプを分析

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パリッコ

1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、ほか。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』『酒場っ子』『ほろ酔い!物産館ツアーズ』、スズキナオ氏との共著に『“よむ”お酒』『酒の..

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