発見「珍レシピカード」コレクションでスーパーめぐりはもっと楽しくなる!

2020.8.30


発見! コレクションすべきは「珍レシピカード」だった

さて、たった1日にして68枚ものコレクションを手にしてしまった僕は、こう思った。「これ、きりねぇな」と。ただ行く先々のスーパーでレシピカードを見つけては片っ端から収集する。そういうコレクション方法もいいけど、僕には向いていなそうだ。何か「切り口」が必要だろう。なんて言ったけど、実はもう見えている。

例えばこの写真を見て欲しい

「豚肉となすのみそ炒め」はよくあるメニューだ。じゃあ「豚さつま」は? シンプルな肉じゃがのジャガイモをサツマイモに変えたものだと説明すればわかりやすいけれど、「豚さつま」なんて料理名があるの? 少なくとも僕は聞いたことがない。 このように、オーソドックスなレシピたちの中に紛れ込む、ちょっと変わったメニュー。決しておちょくっているとか、小バカにしてるとかではなく、純粋に「珍しいメニュー」であるという意味で、最大限のリスペクトとともに「珍レシピカード」と定義するのはどうだろう? 

そして、買い物のついでにコーナーをチェックし、ビビッとくる珍レシピカードだけを集めてゆく。あぁ、俄然ワクワクしてきた。いずれ同好の士と珍レシピカード見せ合い飲み会を開催する夜が、今から楽しみでしかたない!

というわけで、現在の僕の珍レシピカードコレクションがこちらです

現状、レシピと珍レシピの間に厳密な線引きはない。自分が珍しいと思ったらそれでいい。つづけていけばいずれ、さらに新しい世界が見えてくることもあるだろう。

それでは最後に、この珍レシピのなかから3品ほど実際に作ってみて、それを今夜の晩酌のつまみにしようと思う。せっかくの縁だから1品は「豚さつま」にしよう。それから、純粋にそそられる「ねぎたこ」。なんか妙に作ってみたくなるかわいさがある「くるくるちくわ巻き」。これでいくか!

できました

もしも珍レシピカードと出会わなければ、一生作ることもなかった料理たち。それが今、目の前で一堂に会している。しかもそれを作ったのは自分。これまでに体験したことのないタイプの愉快な気分だ。レシピカードがマンネリになりがちな晩酌を、ひいては人生をより豊かなものにしてくれることは、どうやら間違いないようだ。

「豚さつま」

作り方は基本的に肉じゃがと同じ。ジャガイモはほろりと崩れ、味わいもどちらかというと素直だが、サツマイモは食感と密度がねっちりと凝縮されていて、ひと切れひと切れに驚くほどの食べごたえがある。もちろん濃いめの甘じょっぱい味つけとの相性は抜群だし、そこに豚の脂のうま味が加わって、かなり好きだ。ご飯のおかずというより、少しずつつまみながら酒のつまみにしたい感じで、肉じゃがよりもむしろ自分に向いているかもしれない。

「ねぎたこ」

タコ刺し(レシピではボイルした薄切りのタコだった)をたっぷりのネギと一緒に食べるというもの。それだけのことだけど、なんで今までやってこなかったんだろう! という美味しさ。好きだけど、単体だと後半で食感の単調さに飽きてきがちなタコ刺し。それが、包むネギの量を調整することで食感にバリエーションが出て、最後まで楽しみながら食べられた。

「くるくるちくわ巻き」

縦に切り込みを入れて開いたちくわの内側に、等間隔で斜めに浅く切りこみを入れていく。切りこみを入れた方を下にして広げ、スライスチーズを乗せ、くるくると巻く。開かないように爪楊枝で留めたら半分に切り、叩いた梅干しとマヨネーズを混ぜたソースを乗せてオーブンで焼く。ざっとそんな感じ。どうしても楊枝が見つからなかったんだけど、小さめのスキレットにぎゅっと詰めこんだら特に問題はなかった。

たっぷりのとろけるチーズと香ばしく焼かれたちくわ、それだけだったら美味しさの想像がつく。ところが、上に乗せた梅マヨネーズがおもしろく、他の食材と統一感がありつつも、ちょっとしたアクセントになっていて、ものすっごく美味しい!

というように、思いがけずとても楽しい晩酌ができたのも珍レシピカードのおかげ。まだまだ、暑い収集の夏はつづきそうだ。


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  • 『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』

    パリッコ/スズキナオ(編著)
    『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』
    2020年8月5日発売 発行:スタンド・ブックス
    定価:1500円(税別) A5判変型並製132頁 ISBN978-4-909048-09-7 C0095
    カバーイラスト:石山さやか ロゴ:スケラッコ デザイン:戸塚泰雄(nu)
    話題の「チェアリング」生みの親コンビ、若手飲酒シーンを牽引する人気ライターのパリッコ(『酒場っ子』)とスズキナオ(『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』)が編集、執筆を務める飲酒と生活の本『のみタイム』をはじめます。
    1杯目は100頁以上にわたり「家飲みを楽しむ100のアイデア」について考えました。それでも続く毎日を楽しくする、使えるアイデアが満載です!
    豪華執筆陣は、ラズウェル細木(『酒のほそ道』)、夢眠ねむ(「夢眠書店」)、清野とおる(『東京都北区赤羽』)、今野亜美(「スナック亜美」)、平民金子(『ごろごろ、神戸』)、香山哲(『ベルリンうわの空』)、イーピャオ(『とんかつDJアゲ太郎』)、METEOR(ラッパー)他!
    こんな状況でも、楽しい酒の飲み方はあるはず。とにかく酒が好きということは、よりはっきりしました。
    近刊に『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、『関西酒場のろのろ日記』(ele-king books)がある。

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パリッコ

1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、ほか。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』『酒場っ子』『ほろ酔い!物産館ツアーズ』、スズキナオ氏との共著に『“よむ”お酒』『酒の..

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