ハライチのノリボケ漫才から進化したおもしろさについて

2020.3.11

進化しつづけるハライチの漫才

ところが、ハライチの漫才は変化を見せる。『M-1グランプリ2015』でハライチは再び決勝進出を果たす。その年のハライチのキャッチコピーが「澤部、今日も騒ぐってよ」だったことから、誰もがノリボケ漫才をすると思っていた。

しかしそこで見せた「誘拐犯からの電話」は、シチュエーションを設けた「コント漫才」型のネタだった。今までと違う展開に最初こそ面食らったが、岩井さんの繰り出す振り幅の広いカオスなボケと、それに振り回されながらも120%にして返す澤部さんのリアクション力がバチッとハマり、最終的にはふたりの漫才をさらに好きになっていた。

さらに翌年『M-1グランプリ 2016』で見せた「RPG」は、準々決勝での爆発力が凄まじかった。岩井さんが考えたRPGを澤部さんが体験するというネタで、序盤は「誘拐」のようにスタンダードなコント漫才をしていたのだが中盤、岩井さんが「はじまりの街……幸福の街……」と街の紹介を始めたかと思いきや……

「退院の街……会員の街……数人のダチ……最新の寿司……」

こ、これは……ノリボケ漫才……? そう、普通の漫才にノリボケ漫才を融合させていた。岩井さんの世界観を踏襲しつつ、そこに求められていたノリボケ漫才のエッセンスを後半の「たたみ掛け」として持ってくる。ハライチが見せた変化からの深化に震えが止まらなかった。

そして去年、『爆笑ヒットパレード2019』で披露した「寄生生物」でハライチは究極の笑いを手にした。このネタは他の番組でも何回か披露されたネタで、後半の澤部さんが自分が寄生されているかどうかを確認するが岩井さんが全シカトを1分以上つづけるというくだりが最高におもしろいのだが、この日のハライチは本当にネジがぶっ飛んでいた。

「俺の身体で間違いないんだな?」

「……」

「俺か……俺だもんな……」

「……」

そしてここから「3分以上」も沈黙がつづく。澤部さんがどれだけ話しかけても岩井さんはまったく反応しない。その常軌を逸した沈黙に次第に周りの芸人から「これすげぇな……」と声が上がる。いまだかつて「3分間しゃべらない」ということだけでここまで爆発的に笑いを取った漫才師がいただろうか。もはやどこまでがネタでどこまでがアドリブなのかすらわからない。ふたりの漫才は無我の境地に達しているとさえ感じた。

最も言いたいのは、ハライチの漫才は岩井さんと澤部さんどちらのキャラクターも世間に浸透した「今」が一番おもしろいということ。

ブレイク当初から数多くのバラエティ番組でトップクラスの活躍をしてきた澤部さんはもちろん、近年はテレビ東京『ゴッドタン』の「腐り芸人セラピー」や「マジ歌選手権」、エッセイ『僕の人生には事件が起きない』などでその才能が世に知られつつある岩井さん。ネタだけでもおもしろかったふたりが人柄や内面まで武器にできるようになったハライチはまさに無敵だ。

今一番ノリノリな、いやこれからもノリノリなハライチがこれからどんな漫才を見せてくれるのか楽しみでならないし、願わくばもう一度近所のパチンコ屋に来て欲しい。

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かんそう

1989年生まれ。ブログ「kansou」でお笑い、音楽、ドラマなど様々な「感想」を書いている。

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