囲碁将棋「雰囲気とブランディングだけで生きてきた」“カッコいい”漫才師を築くまでの20年

2024.2.10
囲碁将棋

文=浜瀬将樹 撮影=金森靖大 編集=梅山織愛


今年で結成20周年を迎える囲碁将棋。キャリアを重ねても連日舞台に立ち、漫才と向き合い続ける姿は多くの後輩芸人の憧れであり、「東京吉本漫才師の大将」としても慕われている。

しかし、本人たちに後輩を引き連れている意識はなく、「みんなが“カッコいい風”にしてくれた」という。ふたりはどのようにして、みんなが憧れる“漫才師”になったのか。そこには、ふたりの意識を変えた先輩・後輩の存在があった。

さらに、2月18日(日)に開催するふたりがデビュー当時から憧れていた「日比谷公園大音楽堂」での公演についての思いも聞く。

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文田大介(ふみた・だいすけ/1980年6月20日生まれ、神奈川県出身)と根建太一(ねだて・たいち/1981年3月23日生まれ、神奈川県出身)によるコンビ。NSC東京校9期出身で2024年に結成20周年を迎える。2023年に初開催された『THE SECOND~漫才トーナメント~』では、グランプリファイナルに進出した

後輩が作ってくれた“カッコいい先輩”としての囲碁将棋

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文田大介(以下、文田) 東京吉本で、僕らより先輩で漫才をやっている方って少ないんですよ。

根建太一(以下、根建) たとえば、トータルテンボスさんでも、僕らがギリギリ絡んでいる世代。後輩の年代からしたら(世代的に)遠すぎるんですよね。

文田 リーダーというか、ただの年長者(笑)。

文田 たぶん、「囲碁将棋すごいよな」と言ってたほうが“っぽい”んじゃないですか?

根建 なるほどな。

文田 音楽でもあるじゃないですか。この人をけなす人はいないけど、あまり有名じゃない人。ちょっとマイナーというか……そういうラインだと思います。

根建 僕らって実績がないんで、「コイツらだったら取って代われるんじゃないか」という位置にいるんですよ。『M-1グランプリ』優勝の実績があると、天才の域だし、神がかっていなきゃ目指せないけど、僕らだったら刺し殺せるというか。ギリギリ刃が届くところにいるのかなって。

文田 やっぱり一緒にいるのがデカいのかな~。

文田 僕らが若手のときもポイズンさんやパンクブーブーさんが頭になって、何かをやってほしい、とずっと思っていたんですよ。だけど、叶わなかった部分もあるので、「後輩がそうやって言ってくれるんだったら、旗くらい持つよ」とは思いますね。自分たちも先輩に先陣切ってやってほしかったので。

根建 僕らふたりとも責任感はまったくないです(笑)。責任感のなさでやってきて、後輩がついてきてくれるんだったら、それもいいのかなって。別に僕らが引き連れたことなんて一回もないんで。

根建 そうですね。ネタとか発言とか、そういうのを見てくれているんだとしたら、変わらず、同じことをやっていくだけかもしれないですね。ただ、スベッてるところはめっちゃ見てると思います(笑)。

文田 スベり方というかね。

根建 『M-1』も“落ち方”だと思っていて。僕ら、別に変な落ち方はしていないような気がするんですよ。アイツらが勝手に「やりたいネタやって落ちた」みたいに言ってくれるから「あ、そんな感じになってんだったら、それでいこう」って感じです。

文田 だから何がカッコいいかなんて、自分たちではわかってないんですよ。

根建 みんなが“カッコいい風”にしてくれて、僕らがそれに便乗しているだけです。 

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文田大介
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根建太一

POISON GIRL BANDイズム

文田 直接的に「この人たちいいな」と思ったのは、やっぱりポイズンさんですね。おふたりは、何度も『M-1』決勝に上がっているのに、劇場での若手だけのトーナメントライブに出てくれるんですよ。でも、若手を目当てに観に来たお客さんの前だから勝てない。本当だったら出なくていいのに、自分たちが負けて、後輩に箔をつけさせてあげているくらいに僕は感じていて……。そうやって、単純に勝てない状況でも一緒に出てくれいてた思い出があったんで、僕らも「若手のバトルライブに出てくれ」と言われたら出るようにしています。ルミネtheよしもとで若手とのバトルライブを定期的にやっているのは、そういうところの流れを汲んでいますね。

文田 そのイベントも、最初は「神保町よしもと漫才劇場のメンバーが、ルミネに立つ機会がないんで、囲碁将棋を頭にイベントをやってくれ」と言われたので、「だったらバトルライブにしてください。どうせやるならバチバチに肩並べてやります」って感じでやったんですよ。そこはポイズンさんイズムがちょっとあるのかなと思います。それくらい、当時「ポイズンさんが一緒に出てくれていた」というイメージが強いんですよ。ポイズンさんがちょっと人気あるヤツに負けてるのを見ると「いやいや。そんなわけないじゃん!」って思っていたし、「もう出ないでくれよ」とすら思っていたぐらいでしたから。

根建 僕はポイズンさんに影響を受けまくっているどころじゃないです。漫才の影響はもちろん、芸人としての生きる道みたいなものは、阿部(智則)さんの影響を受けていますね。僕、単純にめんどくさがり屋で、酒も飲めないので、先輩付き合いもしないほうだったんですけど、阿部さんだけは自分でついていきました。阿部さんもつるまない人なんですけど、阿部さんのつるまないのは孤高のつるまなさ。で、僕みたいなヤツに優しいんですよ。

誰も準備してなかった?初開催の『THE SECOND』

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根建 出させてもらうからには、やっぱりいい成績を残したいです。でも、去年、負けたとき、清々しかったんですよ。負けたときの悔しさを想像すると、出たくなくなるときってあるじゃないですか。そういうのがないんで、気持ちの余裕は、『M-1』のときよりもあるかもしれないです。タイマンというのがいいんですかね。

文田 シニアの大会って感じがしましたけどね。現役が終わった人の「40歳以上の部」みたいな。ああいうのって、どの大会でも、終わったあと、みんなで握手していい感じじゃないですか。あと、自分的には、去年「大会が盛り上がればいいな」ぐらいの気持ちだったんですけど、今年は、自分に向けた目標を立ててもいいのかなと思っています。ただ、去年より、ちょっと厳しいのかなと思っていて……まわりがちゃんと準備してくるというか。去年は誰も準備してなくて。

根建 誰も準備してねーってことはねーけど。

文田 いろんな兄さんたちが、昔からやっているネタを『(開運!)なんでも鑑定団』(テレビ東京)のように持ってきた大会だったなと。

根建 (笑)。

文田 前回は「懐かしさ」を感じる大会だったんですけど、今年は『M-1』っぽくなるんじゃないかなと思っています。『M-1』卒業組も増えますし。

文田 ダイタク、ニューヨーク、オズワルドが、「賞レースが終わると、囲碁将棋はネタを作らなくなる」と思ったのか、『以後勝利』というネタライブを立ち上げたい、と何回か声をかけてくれたんですよ。でも、「現役の人たちだけでやったほうがいい」ってずっと断っていて。ただ、僕自身、2015、2016年ごろマヂカルラブリーと(『M-1』に向けて)一緒にやっていたときに、ポイズンさんも入れて「全国ツアーしたいな」とずっと言っていたのに、頓挫しちゃった思い出があって……。「今、こうやって言ってくれてんのって、僕が思っていたポイズンさんに対する思いと似てんのかな」と感じて、イベントに出ることにしました。

根建 そうですね。場所を提供してもらった感じです。

文田 ふたを開けてみたら、アイツらはありネタをするんですけど、僕らだけ新ネタ2本作ってくる変なイベントだったっていう(笑)。でも、そんな感じで火を消させなかったというか、燃料を入れてくれていた感じですね。

根建 ダイタクが会場にいたんで、恥ずかしながら「うっしゃ!」とか「ちきしょう!」とか言っちゃってました。ダイタクがいて、さらに気合いが入っちゃったかもしんないです。

ラッキーで進んできた20年間

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文田 5、6年目で『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)みたいな番組に出ているイメージだったんで、思ってたのと違いますね。でも、今思えば別にそうじゃなくてよかったなとも思います。今で全然いいというか。

文田 そうですね。「お笑い芸人」という肩書から、十何年経って「漫才師」という肩書にずれていったのかなと思います。だから、テレビでスベってもそんなに気にならないんですよ。サッカー選手がバラエティ番組に出ているのと同じというか。

根建 それはちょっと違うけど。

文田 「漫才師」として、バラエティに呼ばれてしゃべっているような感じ。ずっと舞台に出て漫才をやっているのに「漫才どうでもよくて、テレビに出たい」とは思いもしなかったというか。だから、テレビに出たときよりも、ルミネで初めて『7じ9じ』(過去にあった芸人のネタ&SPコメディ公演)とか寄席に出させてもらったときのほうがうれしさはありました。

根建 僕も5年目ぐらいまでにスーパースターになりたいと思って吉本に入っているんですけど、今でじゅうぶんというか。極論をいうと、僕ら(高校の)同級生ふたりが、(舞台上で)会話をしているだけじゃないですか。それでお客さんが入ってくれるなんて、もうめっちゃラッキーっすわ。だから、宗教にするしかないと思っています。このふたりの話を聞きに来てる人たちを増やすみたいな。

文田 そもそも、僕ら「腕を磨く」とか「芸を磨く」みたいな言い方が当てはまらないんですよ。

文田 正直、吉本全体でいっても、圧倒的スキル不足の漫才師なんです。雰囲気とブランディングだけで生きてきましたから。

根建 マジでそうです。

文田 楽器でも、同じコードを弾いたとき、ヘタだと別の曲に聞こえると思うんですけど、それぐらいのことだと思うんですけどね。

根建 「コイツら“あえて”ヘタ弾きしてんじゃねーか?」みたいな(笑)。

文田 それが(ほかとは)違うように見える要因なのかなって思います。

根建 全部ラッキーです。

憧れていた野音の舞台へ

根建 1、2年目のとき、東京ダイナマイトさんが野音でやっていたライブを観て「めっちゃカッコいいな」と思って。20年間、「いつか野音でやりたいな」とふたりで話していたんですよ。やれるわけないと思っていたら、いい機会が巡ってきて……。

文田 ほかの社員さんが会場を2日間押さえていたらしく、僕らのマネージャーが「野音でやりたい」と言っていたのを聞いていて、「1日どうですか?」と誘ってくれたんですよ。

根建 でも、僕らのマネージャーは敏腕なので、今でもどこかのイベントを圧力でつぶしたと思っています(笑)。

根建 東京ダイナマイトさん自体もロックでカッコいいじゃないですか。それも相まってずっと憧れていましたね。

文田 当時、半分お手伝いで行ったんですけど、関係者受付でベッキーを見たときに「ベッキー、目デカっ!」と思ったのがめちゃくちゃ印象的でした。

根建 (笑)。たしかにそんな感覚でした。「有名人いる!」みたいな。

文田 そうですね。いろんな絶景でやりたいと思っていて、野音もその中の候補だったんで。

文田 これから絶景ベースの全国ツアーをしたいと思っているので、(今後のことは)それを回ってみてから考えようかなと思っています。「来年こうするために、今はこれをやっている」ということでもなく、ただ「20年やったから」というボーナスステージみたいな感じにしたいですね。

根建 野音に立てるのが光栄です。それこそ野音に立ったら、「もう一回やりたい!」と思う可能性もありますし、逆に「いや、ちょっと大きすぎたわ。やるもんじゃねえわ」と思う可能性もあるじゃないですか。

文田 それはある。

根建 あるよね。とりあえず今はワクワクしかないです。

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『囲碁将棋20th anniversary ZEKKEI MANZAI TOUR 日比谷野音』

ZEKKEI MANZAI TOUR 日比谷野音

開催日時:2024年2月18日(日)開場14:30/開演15:30
会場:日比谷公園大音楽堂(東京都千代田区日比谷公園1-5)
チケット料金:前売3,500円/当日4,000円
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浜瀬将樹

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浜瀬将樹

(はませ・まさき)1984年生まれのライター、インタビュアー。お笑い、ドラマ好き。移動中に深夜ラジオ聴くのが癒やし。

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