『HiGH&LOW THE 戦国』時空を超えても変わらない「ハイローらしさ」の正体とは?【観劇レポート】

2024.2.5

文=藤谷千明 撮影=阿部章仁 編集=高橋千里


『HiGH&LOW』シリーズ初出演となる片寄涼太をはじめとした、豪華キャストの共演で話題の戦国時代活劇『HiGH&LOW THE 戦国』。

自身も『HiGH&LOW』シリーズの大ファンであるというフリーライターの藤田千明が、2024年1月28日に公開ゲネプロを観劇。本作から感じた「『HiGH&LOW』らしさ」の正体を考える。

予想を超えて拡張する『HiGH&LOW』の世界

─拳は刀となり、天下は夢となる─ 戦国時代活劇『HiGH&LOW THE 戦国』が、東京・シアターミラノ座にて1月29日(月)から2月25日(日)まで上演中だ。

主演は『HiGH&LOW』シリーズ初出演となるGENERATIONSの片寄涼太。THE RAMPAGEのRIKUと藤原樹、浦川翔平、劇団EXILEからは小野塚勇人と櫻井佑樹が、『HiGH&LOW』シリーズに出演した阿部亮平、『HiGH&LOW THE WORST』シリーズに出演したうえきやサトシ(劇団4ドル50セント)、そして宝塚歌劇団から男役スターの水美舞斗と瀬央ゆりあらも出演する。

『HIGH&LOW』とは、それぞれのチームの頭文字を取って「SWORD地区」と呼ばれるエリアを舞台に、街やチームの誇りをかけて戦う者たちの友情や青春を描く。

2015年にテレビドラマシリーズがスタートして以降、映画、音楽、ライブ、コミック、ゲーム、テーマパークなどなど、さまざまなコラボ、メディア展開を繰り広げている総合エンタテインメント・プロジェクトである。

2019年には髙橋ヒロシによる不良マンガ『WORST』の世界とクロスオーバーした『HiGH &LOW THE WORST』、2022年にはその続編の『HiGH&LOW THE WORST X』が公開されている。

さらに同年、宝塚歌劇団にて『HiGH&LOW』の前日譚にあたるストーリー『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』が上演されたことも大きな話題を呼んだ。

ファンの予想を超えて拡張していく『HiGH&LOW』の世界が、ついには時空を超えてタイトルに「戦国」がつくまでに至った。

これまで「SWORD地区」には規格外な事件は多々あれど、現代劇の範疇に収まっていた。そんな『HiGH&LOW』が戦国に舞台を移すというのだから、本当に予想がつかない。

「生きろ、てめえら」──『HiGH&LOW』が始まった!

本作の舞台は戦乱の世。内乱によって砂漠と化した〈須和国(スワノクニ)〉、河口に栄えた水の都〈乃伎国(ノギノクニ)〉、血気盛んな戦闘族の集う火の国〈尊武国(ソンブノクニ)〉、加えて〈袁空国(エンクウノクニ)〉〈佐峨国(サガノクニ)〉といった5つの国があるという設定だが、本作では上記の3つの国を中心にした戦いが描かれる。

残りの国のことはいったん横に置いて、まずは今ある情報を受け止めるのが『HiGH&LOW』の楽しみ方だと筆者は考えている。だいたいのことは序盤にナレーション(立木文彦)が説明してくれますし。立木さん、いつもありがとうございます。

本作で片寄涼太演じる黄斬が口にする「生きろ、てめえら」。これは『HiGH&LOW』のコブラの「行くぞ、てめえら」を踏襲したセリフであり、『HiGH&LOW』が始まったという気分にさせられる。

そして上演開始約1分で「これは〈戦国〉の話」であると強引に納得できる仕掛けも用意されていた。とりあえず眼の前にある世界を受け止めていきたい。

〈須和国〉の長・黄斬は、過去の傷によって戦いを好まないが、幼なじみかつ腹心の部下である吏希丸(瀬央ゆりあ)はそこに複雑な想いを抱いている。

〈尊武国〉は、主君である影森(冨田昌則)を失ってしまい、もともと手のつけられない荒くれ者だった玄武(RIKU)が激高、一触即発状態である。

そんな揺れる2国を前にした〈乃伎国〉の長・湧水(水美舞斗)に対して、弦流(藤原樹)はある進言をするのだが……。

そして暗躍する蛇之内糜爛(阿部亮平)と、弧呂巣(久保田創)たち。名前の時点でもう「悪」でしかないストレートさ。これが『HiGH&LOW』だ。

「『HiGH&LOW』らしさ」とはなんなのか?

さて、今なんの留保もなく「これが『HiGH&LOW』だ」なんて書いてしまったけれど、『HiGH&LOW』らしさとはなんだろう?

当然ながら人によって異なるはずだが、たとえば500人という設定を超えて1000人エキストラを集めて空撮する人海戦術バトル(『HiGH&LOW THE MOVIE』)、取り壊し前の建物の壁をブチ抜いて撮影する団地DIYバトル(『HiGH&LOW THE WORST』)など、予想を超えた手法による想像を超えたアクションシーンだろうか。

あるいは「行くぞ、てめえら」「街がめちゃくちゃだろうが!」「ムゲンは仲間を見捨てねえ!」「無名街爆破セレモニー」など、名(“迷”も含む)ゼリフやネーミングセンスだろうか。そりゃあ悪役に「糜爛(ヴィラン)」と名づけてしまうネーミングセンスはここにしかない。

ほかにもたくさんあると思う。「全員主役」というスローガンのもと、LDH外の俳優も忖度なしにカッコよく見せることに定評があるだとか。

そういった意味では、本作はダンスや歌唱での見せ場が多く、宝塚歌劇団の水美舞斗、瀬央ゆりあらの立ち居振る舞いは本当にカッコよかった。また、宝塚歌劇団の有村淳が手がける衣装もそれぞれのキャストの魅力をさらに活かしてくれた。

さらにもうひとつ、「変わっていく友人に対する想い」が『HiGH&LOW』に欠かせない要素だと筆者は考える。

『HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜』第1シーズンにおけるノボル、『HiGH&LOW THE MOVIE』の琥珀、あるいは『HiGH&LOW THE WORST』の新太だったり……。

かつての友人、仲間が「変わってしまった」と感じるときに、人はどのような行動に出るのか。やはり『HiGH&LOW THE 戦国』でも、そういった関係性が複数描かれている。

これまでの『HiGH&LOW』の場合、バグった友は拳で殴って説得するのがセオリーだったものの、今回は「拳は刀」となる時代である。それぞれがどのような決断を下すのか……。「生きろ、てめえら」はどういう意味を持つのか……。

各界隈のファンがニッコリするシーンも

また、思わずフフッと笑ってしまうコミカルなシーンもある。従来の『HiGH&LOW』シリーズのキャストである小野塚勇人&うえきやサトシによる、ハイローファンもニッコリのシーンも見受けられた。

さらに、瀬央ゆりあによる宝塚歌劇団ファンもニッコリのシーンも。

そして『HiGH&LOW』といえば、「てっぺん」に対する態度も見どころ。本作では(戦国なので)「天下」と言われているが、「天下」にせよ「てっぺん」にせよ、極端な上昇志向に対してのスタンスは「やはり『HiGH&LOW』だな」と感じた次第である。

今後の『HiGH&LOW』シリーズの未来も予感させてくれるような展開も含まれている『HiGH&LOW THE 戦国』、ぜひその目で見届けてほしい。

舞台『HiGH&LOW THE 戦国』特報映像

戦国時代活劇『HiGH&LOW THE 戦国』
会場:東急歌舞伎町タワー シアターミラノ座
公演期間:1月29日(月)〜2月25日(日)
片寄涼太、水美舞斗、RIKUほか豪華キャストによるオリジナルストーリーで上演!

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「動物と共存する意味を自分に問いかけながら、問題提起していけたら」
与那嶺瑠唯「保護動物の問題をより深く理解したり、僕が率先して行動することで、ファンの方々にも現状を知っていただけたらいいなと」
藤原樹「今第一にやるべきことは、理不尽に捨てられる動物を減らしたり、救える命を救っていくこと」 

インタビューより

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