バラエティの30年史から、2020年代の「テレビの笑い」を考える【前編】

2020.2.28

さらにジャニーズのアイドルグループSMAPによる『SMAP×SMAP』(フジテレビ)が開始。この番組で彼らは当時下火になっていたコントを積極的に行った。ある時期、テレビで定期的にコントを演じていたのは芸人よりもアイドルだったのだ。これらがすべて96年に始まった。

その後、アイドルバラエティはV6の『学校へ行こう!』(97年~)、ドキュメントバラエティの流れを汲むTOKIOの『ガチンコ!』(99年~)などへと拡大されていった。そんななかでバナナマンやバカリズム、ラーメンズなど結果的に『ボキャ天』から距離を取った芸人たちはライブなどで存在感を見せながらも雌伏のときを過ごしていた。彼らは“ダウンタウン・チルドレン”があふれる若手芸人の中にあって、独自の方法論やシステムで笑いを生み出そうとしていたのだ。


2000年代:お笑いの競技化、ショートネタと一発屋、フジからテレ朝へ

「芸人を辞めるきっかけを与えたい」

そんな偽悪的な目標を掲げ、島田紳助が中心となり2001年に立ち上げたのが『M-1グランプリ』(ABC/テレビ朝日)だった。

M-1グランプリ 2001
『M-1グランプリ2001 完全版 〜そして伝説は始まった〜』

出場資格は結成10年以内(現在は15年)で優勝賞金は1000万円という破格なもの。これにお笑い界は色めき立った。けれど、一方で懐疑的な声もあった。どうせテレビ番組なんだから筋書きがあるんでしょ、だとか、吉本興業主催だから吉本の芸人を勝たせるんでしょ、などと。しかし、1回目の決勝進出のメンバーを見て、少なくとも芸人たちは、この大会の見る目が変わった。当時まったく無名だった麒麟がいたのだ。そして本格派の漫才師・中川家が優勝。第2回ではやはり無名だった笑い飯が登場し、松竹芸能のますだおかだが優勝。回を重ねるごとにその権威も注目度も高まっていき、ルールに合わせ、いかに大会に勝つかを突き詰めた「競技漫才」が生まれていった。ピン芸では『R-1ぐらんぷり』(02年~、関西テレビ/フジテレビ)、コントでは『キングオブコント』(08年~、TBS)などと派生し、お笑いの「競技化」が進んでいく。

これには“下地”もあった。それは99年から始まった『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)だ。視聴者の審査により得点上位者だけがオンエアを勝ち取るという厳しいルールでラーメンズやタカアンドトシら多くの人気芸人を生んだ。さらに『エンタの神様』(03年~、日本テレビ)や『笑いの金メダル』(04年~、テレビ朝日)、『ウンナン極限ネタバトル!ザ・イロモネア 笑わせたら100万円』(05年~、TBS)、『爆笑レッドカーペット』(07年~、フジテレビ)などが各局のゴールデン・プライム帯で始まり、若手芸人のネタブームといえる状況ができあがった。

特に『レッドカーペット』は約1分間でベルトコンベアーのように次々とネタを披露するシステムで「ショートネタ」というひとつのトレンドを生んだ。一方、『エンタの神様』は、番組独自でキャラクターを作る手法を用い、その後、「一発屋」とも言われる多くのキャラ芸人を生み出した。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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