バラエティの30年史から、2020年代の「テレビの笑い」を考える【前編】

2020.2.28
30年間のテレビバラエティ史 前編

文=てれびのスキマ 編集=田島太陽


お笑いの「次の10年」を考える、QJWebの「【総力特集】お笑い2020」。

ミルクボーイとぺこぱという「M-1グランプリ2019」で脚光を浴びたふた組のインタビューでは、主に「漫才(ネタ)」に焦点を当て、今受け入れられている「笑い」を掘り下げた。

だが、世間一般が日常的に触れる「笑い」とは、漫才などのネタではなく、テレビバラエティである。

そこで、1990年代から2010年代のテレビバラエティ史をてれびのスキマが総括。30年間の歴史を振り返ると見えてくる、2020年代のテレビ的「笑い」の向かう先とは?

30年間のテレビバラエティ史 90-00年代

1990年代:コント、ドキュメントバラエティ、アイドルの芸人化

90年代初頭、テレビは“コントの時代”だった。

89年、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ)が終了し、“主役”に、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンら「お笑い第三世代」(とんねるずは含まない場合もあるが、ここでは一般的な括りを採用する)と呼ばれる、当時まだ20代中心の芸人たちがテレビの笑いの中心に躍り出た。彼らはそれぞれ『とんねるずのみなさんのおかげです』(88年~)、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(90年~)、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(91年~)といずれもフジテレビでコントを中心とした冠番組を立ち上げた。さらにフジテレビでは『志村けんのだいじょうぶだぁ』(87年~)もレギュラー放送。ゴールデンタイムに多くの大型コント番組が放送されていたのだ。

中でもダウンタウンの勢いは凄まじかった。ゴールデンで放送されているとは思えないようなシュールな世界観のコントを放送しながら、しかも裏番組にNHK大河ドラマや『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)がある中で『ごっつええ感じ』は20%を超える視聴率を獲得していた。いわゆる“センスの笑い”の時代に突入したのだ。

ごっつええ感じ DVD
『THE VERY BEST ON AIR of ダウンタウンのごっつええ感じ 1994』

92年には、『24時間テレビ』(日本テレビ)のメインパーソナリティに抜擢され、前年まで1桁台だった視聴率を17.2%まで一気に上昇させ、その後につづく番組フォーマットを作り上げた。さらに松本人志が著した『遺書』、『松本』(ともに朝日新聞社)が200万部を超える大ベストセラーに。ここに書かれていた彼の笑いに対する哲学は、若手芸人はもちろん、視聴者の多くが多大な影響を受け、のちに「松本信者」「ダウンタウン病」などと揶揄されるような人が蔓延した。クラスの人気者タイプの人よりも、ちょっと暗くてクラスの隅にいる人のほうがおもしろいんだという彼の主張は、ルサンチマンを抱える数多くの若者の“救い”ともなった。

「ショートネタ」発芽と「若手芸人」の発見

一方、日本テレビを中心としてもうひとつの潮流が生まれていく。それが土屋敏男らによるドキュメントバラエティ路線だ。『電波少年』シリーズ(92年~)、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(96年~)などで“リアル”なものをそのまま見せていった。コントのような作品性から、より“リアル”なものへの転換である。95年に起きた阪神淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件で日本人の意識が変わっていったことと無縁ではないだろう。現実がフィクションを凌駕してしまったのだ。

その翌年の96年は、テレビバラエティにとって大きな転換期だった。『進め!電波少年』では、猿岩石の「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」が空前の大ブームに。フジテレビではドキュメントバラエティとフジテレビ流コント文化が融合したナインティナインらによる『めちゃ×2イケてるッ!』がスタート。努力する様を見せることで笑いにつなげ、出演者の人生をそのままドキュメントコントに昇華するという稀有なスタイルを確立した。

電波少年 DVD
『電波少年 感動のゴール集』

また、『ボキャブラ天国』(フジテレビ)では若手芸人による「ザ・ヒットパレード」が開始。本ネタとは違う短いダジャレネタで争った。00年代にブームとなる「ショートネタ」の発芽ともいえるだろう。その大きな功績は「若手芸人」の“発見”だ。それまでももちろん若手芸人は存在した。けれど、世間的には、こんなにも多くの芸人がいるだなんて意識されたことがなかった。そんななかで『ボキャ天』は「キャブラー」と呼ばれる若手芸人にスポットをあて、「若手芸人」という概念を生み出し、さらに多くの若手芸人を生んでいくこととなった。彼らはブームとなり、爆発的な人気を得て、その中から爆笑問題やネプチューンらが独り立ちしていく。

お笑いの競技化、ショートネタと一発屋、フジからテレ朝へ


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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